悪夢のGW
先日、友人宅が放火された件を活動報告に書きましたが、このたび無事に犯人が逮捕されたのでこの一件の事を書いてみようと思います。
本人の了承はいただいています。
インタビューから推測して文章を補完しています。
一部ぼかしていますが、実話を基にしています。
ややコメディっぽいのは本人の希望です。
友人、仮にIとしておきます。
場所は関東の某県。
Iの実家です。
事件は四月後半のある日の晩に起こりました。
その日の晩は、Iの結婚して家を出た姉が赤ちゃんを連れて遊びに来ていて、リビングで夕食をとりながら、みんなでテレビを見ていたそうです。
ふいにIの鼻に石油ストーブの臭いが漂ってきた。
今年は寒かったと言えど四月の後半ですから、すでにストーブは物置に入っている。
Iの父親はたいへん火気には気をつけている方で、余った灯油もガソリンスタンドで処理費用を払って引き取ってもらっていたそうです。
そう、存在しないはずの灯油の臭いがしたのです。
それもストーブの臭いより何倍も臭い。
Iは不思議に思いリビングの窓を開けました。
外には何もない。
でもにおいはどんどん強くなってきて、Iの母親や姉もおかしいと騒ぎはじめました。
そのタイミングで突然、家の電話が鳴り響きました。
この電話の着信音で女性陣は完全にパニックを起こしました。
わけがわからなかったのだそうです。
ところが冷静な人がいました。
Iの父親です。
彼は何事もなかったように受話器を取りました。
「は。XXです。あーXXさん。どもども……」
電話は隣家の人でした。
Iは石油のにおいの事だろうと思ったそうです。
十秒程度のやり取りを固唾を呑んで見守る家族。
するとIの父親が受話器を耳からはずして平然と言いました。
「母さん。うちの玄関燃えてるらしいぞ」
「ぎゃああああああああああー!」
母親が壊れました。(Iの表現そのまま)
「qあwせdrftgyふじこlp」
「ママ!ママ!落ち着いて(Iの姉)」
「落ちつqあwせdrftgyふじこlp」
一人が完全に壊れると逆に他はパニックから脱却したそうです。
Iはこれはまずいと思い玄関のドアに向かいました。
「今考えれば……裏からさっさと外に出りゃよかったんだよね……」
後にIは私にそう語りました。
その時、Iが何をしたのか?
それは内側は燃えていない玄関ドアを意味もなく開けるという暴挙だったのです。
ただそれは失敗に終わりました。
外側が燃えているドア。そのノブの部分。それを握った瞬間Iは悲鳴を挙げました。
ドアノブが炎で熱せられていたのです。
それをもろに掴んだIの右手は大きな水ぶくれができるほどの火傷を負いました。
しかも不運なことにこのときドアが少し動いてしまったようで、ドアの下の隙間から灯油が燃えながら玄関に侵入してきたのです。
煙をあげながら燃える液体。それはあっという間に玄関に広がりました。
Iの家は玄関に大量の物を置いていました。
ダンボールとかフロアマットとか木彫りの熊とか将棋の駒の置物とか良くわからない木のオブジェです。
それに次々に燃え移って行きました。
「お母さん!消火器!消火器!」
Iの姉の叫び声。
このとき、Iの父親は家の電話で一人冷静に119番通報。
そしてIの母は消防署の方から来た人から買った超絶高級消火器を持って颯爽と玄関に現れました。
後にそのときの光景をIが語りました。
「ええ。うん十万もした消火器だったんだけど……何も出なかったんだ。本当に何も。安全装置?ちゃんと書いてある通りに操作してたよ。そしてレバーを握ったらプスッ!って音がした……それで終わりだったんだ……あはははははは!」
Iの母親はまたもや壊れました。
「qあwせdrftgyふじこlp! Iちゃんこれ動かない! qあwせdrftgyふじこlp!」
Iはあまりにことに手の火傷を忘れました。
そして一言。
「お母さん!早く逃げよ!」
こうしてようやく建設的な意見が出ました。
そのまま家族全員で裏口から回って家の外に避難。
消防の到着までに隣家の主から消火器を借りて消火しようとしたそうですが……
もう遅かったそうです。
火は玄関を焼き、リビングの一部に燃え移ってしまったそうです。
間違えて短編にしてしまったので続きはこちら↓
http://ncode.syosetu.com/n1358br/
※「消防署の方から来ました」は昔からある詐欺です。
詳しくは(地方自治体の公式サイト内の注意情報で当小説とは関係ありません)↓
http://www.city.oita.oita.jp/www/contents/1150511026092/index.html
http://www.city.itoigawa.lg.jp/dd.aspx?menuid=3416