第009話_急転の門出、魔法使い_中編
いくつか改定、
軍部を独占されている が正解。
「それ以上は私が話そう……。」
そう言って母は室内の机に持ってきたもの置いた。
今までの経過を否定するわけでもない。
今までの立ち聴きを言い訳するわけでもない。
それが当たり前の義務であるかのようにこともなげに言った。
「おや、いつ入ってくるかと待ってみれば、意外と掴まされた情報より信用できる方のようね。」
魔法使いは笑いながらベットの隅に腰掛けた。
長い杖は先ほどで作業を終えたのか既に消えている。
空間に浮かぶヒビもいつの間にか直っている。
そこが知れない存在を魔法使いというなら俺は化け物と直訳するだろう。
「うるさいぞ魔女、我が憩いの空間に勝手に侵入してただで済むと思うな」
機嫌は既に悪いのに不愉快なほどにメーターを振り切っている。
魔法使いの女を睨みつけながら、声だけで出て行けと催促するがそれに尻を撒くほどこの魔法使いの用事は安くはないらしい。
「情報は正確ね、親馬鹿は路をいくらしいし。…それより始めてはいかが?貴方の方から話したほうが手っ取り早いし納得もいくでしょう?」
エルヴィンは両手をあげて「さぁ」と催促する。
母は一度だけ強く睨みを利かせると、否応なく語りだした。
「始まりは、お前の父の死が原因だ。」
「えっ…。 私?」
エルヴィンは自分を指差してにっこりと笑っている。
面識はないが、おちょくる餌を得た魔女には通じないらしい。
「だれが、オマエカ……。」
その無言の沈黙にエルヴィンは黙り込んだ。
茶化すことをやめ清聴すると約束し、両手を挙げ降参する姿をみせた。
「お前の父が、第三王位継承者だという話は前にしたな?」
仕切り直しで聞かされたのはついこの間きいたことだった。
惚気る母はまだ新しい記憶として残っている。
それと同時に国の歴史を、書庫に記された程度の知識で思い返しながら聞いた。
軍事国家アスガルドそれが母の話した国の名前だ。
某30年近く前までは王政を強いていた強国だった。
ある制度があり、その制度の采配が軍実家へとされた元だと歴史書にあった。
軍事に力をそそいで行く反面、民を蔑ろにした政策が横行するようになったことも書かれていた。
昨今の王族たちは今では隅に追いやられた影に等しく、政治の力を裂かれるばかり。
元となる制度を盾に軍部を独占され、今では護り一辺倒の弱国に成り下がったと母は言う。
本の作者、ウィルキンス・ボナーとあったが、その肩書きは元軍事顧問とあった。
それを信じるなら、王位とは今ではさほど意味を成さない単語ではないかと母の言葉に耳を傾ける。
「王政復興を目指す奴がいる。」
それはありえて当たり前だ。
現在が弱小した国だというなら、再編は失敗して今は固執する頭しか存在しない愚国。
そして民衆が暴動、謀反なり起こせば国自体が瓦解する。
それを正そうとする勢力くらい居るだろうと思った。
「今の軍が表立って国を取り仕切るがうまく言ってなくてな。かといって、それを咎める王族は、その力がないときている。
王が死んだ30年前からの痛手だが、それを直そうと王位3位の我が夫が立ちはだかった。」
顔も知らない、存在した証としての自分。
それが父親に対する認識。
それほど国を患いていたのかも想像しかできない。
「ああっ…違うぞ? あいつが責務とか国を思ってなんてのはありえない。
どちらかと言うと国のトップの野郎が自分の女にちょっかい出してきたからという在り来りな理由だ」
息子の顔から感じ入った表情を推察して訂正する。
顔が若干赤いが、また思い出して照れているらしい。
ハイハイと視線を流して、話をすすめる。
「理由はどうあれ国に反旗を翻した逆賊だ。それがどういう末路かは戦って死んだとだけ言おう。」
「だがな、戦った仲間からすればお前1人だけ役目を使命をなさないなんて許さないって輩もいたのさ」
流石に察しが着く。
俺にそうしろというのだろう。
だが、これまでの隠遁生活は何のためだと俺は改めて思った。
何故、隠し護らねばならなかったのかと
「隠した理由は、刺客があることと、資質の見定めの為だ」
朗々と語る母は気まずそうに俯いていた。
自身の惰弱と無知に甘んじたものならそこから起こす王位に何の意味もない。
だが、己が無知を知り、それを好しとしない者ならば奪還にも意味がある。
民をひきつけ、国を統べる王の資質は何事においても代えがたい。
そう母は言った。
もし、俺が惰弱に甘んじ、生活優先の馬鹿を演じていたならこのまま凡人として暮らせるようにしていたという。
この場所は、ある魔法使いに教えてもらった結界の中で、外からは見ることも触ることもできない閉じた空間だという。
エルヴィンは一瞬、忌々しいと呟いたが、すぐに表情を消して薄笑いを浮かべた。
自然と非常に気まずいと思った、如何して言えようか。
趣味とメカいじりしたさで行動したなどと、こんな重い展開にどう着いていけばいいのか、と俺自身億劫でしかない。
何せ、やりたいことは既にあるのだからいまさら予定を入れられても「No」と言えない現状に俺は苦悩した。
「王戦に出場してくれ」
突然知らない単語が出た。
母は、子供を谷に突き落とし這い上がる子供だけを己が子とするを遂行しようというのか。
その意味は知ることないのに妙な緊張感を感じる。
その瞳は淑女のそれだが、意味合いは計り知れない。
必然的に口を付いて出た。
「何それ?」
質問に答えたのは母ではなく、横に座るエルヴィンだった。
「10年に一回開かれる。王交代の儀、王政時代の名残だけど今現在も潰されずにあることの原因、
それに乗じた軍事側の優位性から撤廃されない王族殺しの法よ」
母の話をさえぎり、エルヴィンが軽口のように言った。
前回の敗者が父だったと、母は苦渋に満ちた顔で言い、その口で期限を言った。
「あと、6年しか時間はない」
沈黙がすごく痛い。
八年間棒に振って今になって勧誘ですかと、ものすごく言ってやりたいがそれも戦わせないための沈黙だったのだろう。
親バカの母に感謝するしかないが、要らぬ気遣いをしたものだと思ったのも事実。
母を責める資格など持ち合わせていなかったが、理不尽を嘆く暇が有るかどうかさえ分からなかった。
誤字脱字が目立つかもしれませんが、なるべく直します。
言ってくれたら目下慣らして行きます。