第009話_急転の門出、魔法使い_前編
かきながら寝てた。取り留めなく
修正してます。一応大筋変わらず。
人型を女口調に治し、猫は僕っ子。
部屋には沈黙があったがそれより勝る、イヤに耳に残る言葉をルナルは聞いた気がした。
沈黙はただその言葉による停滞に近かった。
「籠の鳥?」
「偽りの安寧と、虚像の世界さ……」
黒猫、ヘルヴィンはベットのシーツから飛び降りて、ベットで上半身を起こしたルナルの正面に立つ。
室内に黒い霧が立ち込め、黒猫の影が猫の体を飲み込んだ。
その束の間に、影から黒いものが這い出てきた。
最初は左手、次は右手、そうして頭と胴体。
最後には足が出てそれは完全に少女の姿を形作る。
黒い塊から少女の姿へと変貌した。
赤色の長い髪と、その瞳は黄金という奇妙極まりない少女の姿。
ベットに座るルナルより、身長はかなり上だった為に自然と見上げる形になる。
「ふぅ、やっとまともに話せるわ」
「なんだよそれ……。」
「魔法使いと名乗ったでしょう?」
そんなにまで常識が通用しないのか、物申したいがいえる神を俺は知らない。
だから魔法が如何に、魔術とは隔絶した技だとは目の前の法則無視で納得入った。
魔術は間接でしか発動できない。
それはヒト族ゆえの優位性か劣性なのか判らない。
だから不可思議でならない。
魔法は、魔力を必要としながらそこに術としての基盤が見当たらない。
本来なら、魔動式を魔力を使い発動するものだが、それは皮膚や書物、剣や杖なんでもいい、とにかく式を刻んだ媒体物が必要なのだ。
言語にするなら呪文でもいい、音を媒介にする手法もあると書庫の知識ではそれが全てだった。
とにかく、魔力に意味を与える術がそこにはない。
そんなモノを持っているとは思えないほど、簡素なドレス姿のみの少女。
手にも武器らしきものはなく、キセルも猫と一緒になくなっている。
媒体なしの魔力行使、それが魔法というなら
魔素を変換することも、変換に対する負荷も、魔動式すら見えずに発動する不自然さはいったいなんだというのだろう。
「ききたいのはそっちじゃないでしょう」
思考が傾き、自然とどうしてしか形作らなかったが、彼女自身は話を進めたいらしい。
「あ、ああ」
「なら、横道にそれないことね」
口調が女のそれに変わり、ドレスを着た少女はなぜか魔女のように見えた。
そんな気持ちも露知らず、少女エルヴィンが続ける。
「君の現状があまりにもお粗末極まりないから…」
「つい、突っつきたくなってしまうのよね。」
「でも、もう惑わすようなことはしないわ。完結に行く」
「魔術によって『結界』が張られてるのよ、この箱庭にわね。」
「認識阻害の魔法とでもいうのかな…」
ふと納得のいく理由があった。
それもつい最近に気づいた物だ。
何故、俺は屋敷から出なかったか、それは自然と出なくてもいいと思っていた。
何故、そのことに疑問すら持たなかったのか、それはどうでもいいと思っていた。
何故、俺自身その行動ができるようになったのか
そう、積もり積もれば山となるという情報の隠匿と三日前の行動の転機が、一気に不可解さで俺を捕らえた。
でれないように思わされ、でれない様に隔離され情報を隠匿し、この箱庭で飼われていた。
そうして、いつの間にか俺自身がそれに気づけるようになった?
何故今頃、何のために?
ルナルはこの場所の位置さえ知らず、どこかも知らない。
地理や国の位置は書庫で得た知識があるが、それだけだ。
実際に見て知っているわけでもなく、今どこに居るのかさえわからない。
そして疑問の終着点、なんに反応してこのくびきをのがれたのか
解らないことだらけのルナルは、当然聞くしかないわけだが、
「判ったようね、君の生活は偽りばかり」
「なら、ここはどこだ。」
エルヴィンは笑みを浮かべて、手を目の前にかざす。
そこから黒い霧が棒状に伸びて、一本の杖を形作り手に取った。
「見せてあげる」
それは知らない者がみれば優しい微笑みに見えたが、俺からすれば魔女の囁きの様だった。
杖が何もない空間をたたく。
すると、そこに亀裂が生じてパキリとガラスが割れるような音がした。
「箱庭の住人にはね、指定された事柄を認識できないように書き換える改ざんが行われるの」
「でも、稀にいるの。その呪縛を自身の欲求で打ち破るものがね」
「私は住人じゃないから、改ざんは適応されない。そして中からはこの通りちょっとつつけばもろく崩れて、風景に綻びができる。」
「この結界は、かつての死都ヨルトを覆った魔法……。」
続けることはできなかった。
戸を開いた母の姿があったから