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第003話_書庫の山と、方針決定。

大体で書いてます。後で時間あれば、継ぎ足しつつ改変

 ――気づけば5年過ぎていた。


 

 全く持って、俺には一切責任はないと自己弁護しておく。

 見知らぬ女の裸ガ目の前にさらされようが、あろうことか抱っこされて授乳させられようが知ったことかといえればどれほど楽か知れない。

 俺個人の責任能力に欠けるものではないと断じていえる。

 しかし、意識がはっきりしだしたのは五年ほどの歳月が流れてからになる。

 それからは傍観と諦観でやり過ごしてきた。

 排泄物の処理や授乳などは解ってはいても精神年齢的に大の大人がやることではない。

 それらも白い目で、衆人環視が当たり前の中での出来事だった。

 だが、慣れとは恐ろしいものだと思う。

 この三年の間に、見聞きする情報と事態を把握し生活していく上でこれは「母」なのだと、自覚を持つことも容易になった。

 納得せざる終えなかったともいえる。

 経過と入り乱れ会話する大人たちの情報から推測し、ここが異世界と呼ばれるものだと言うことが解ったことが大きいだろう。

 現状、公爵貴族の息子と言うたち位置に俺はあるらしいと言うものの、以前の自分とは、まかり間違っても縁のない俗語で聞き身に水だが、どうやら俺は転生したらしい。

 名前自体も別に、『ルナル』と言うのがこの世界でのオレの名前だった。

 現在は8歳を迎えたばかりの、健康児と聞こえはいいがそれ以外突出した所と言えば、女児と間違えられるほど性別判断が解り難い容姿ぐらいだろう。

 黒髪は母譲りで、転生前でも馴染みのあるものだが、目が赤いのが際立つ。

 実際に満足いく異世界生活ができているかと言われれば、今は8歳前後で成長真っ只中なのだが、外に出た記憶はないし、この母親は子供を溺愛しすぎるきらいがあったことが難点といえば難点だ。


 美しい黒髪の女性で両目は赤く、ルビーのようでスタイルもいいが、何時も黒いドレスを着ている姿は奇妙さが際立った。

 その姿は素直に好きだった。

 それは置いても、精神年齢でいえば、年上としての自分は一緒に風呂など、どこかに逃げたくなる苦難と恥ずかしさの板ばさみだった。

 どうにか逃亡し、屋敷の自分の部屋でため息をつく。

 室内は伽藍堂(がらんどう)だった。

 何も物がないくらいに、整頓し片付いている。

 前の世界では、考えられないほどだが、この世界で意識が混濁していた期間が長かったせいもあるだろう。

 解らないことは多々あれど、この世界は元の世界より、いささか技術面においては停滞していた。

 ルナル自身、水道や電気などの一般生活が懐かしくなる思いだった。

 汲み井戸や蝋燭の明かりがこの屋敷を彩る唯一の明かりだ。

 この屋敷から出たことのないルナルにとっては世界基準を測れるものではない。

 

「一般の貴族常識だけではこの世界は測れない。」


 

 なら、どうするかは、知ることのできる場所に行くしかない。

 以前から目をつけていた屋敷のある場所へといくことを決めて自室を出る。

 そこは書庫と目録に書かれていた。

 この屋敷自体も古めかしい事もあって、少し掠れているがわからないほどではない。

 文字自体は、母が読む絵本を筆頭に少しずつ理解を深めていった。

 今では、自分のほうが詳しいくらいだと自負している。

 

 そうして、古びた扉に手をかける。

 中は壮観だった。

 仮にも公爵家、遺産は金に留まらずあるらしい。

 目の前に身の丈が、3倍以上ある本棚と埋め尽くされ空きがない物々しい本の壁。

 前世のウツミのときにはPCで過去の戦争を検索したときは一発だったが、今はこの膨大とも呼べる本の中から記憶し、過去を、現在を、見なければならない。

 この世界で何かをなすにしても下地とした知識が根幹(こんかん)を成すであろうことが予測できた。

 一苦労しそうだと、嬉しそうにするのは、速読や記憶能力がずば抜けて高いこともあっての自信からだ。

 本棚の壁を見上げながら、この世界ではルナルは初めて自身の欲求による行動を開始した。

 本の壁にはさまれた通路は狭いが足置きと横を歩ける分だけの広さはある。

 ある場所で立ち止まりルナルは、ある本を手にとって読み深めていくうちに没頭していった。



 項目、「魔法技術と魔動騎士の関係」



 たまに来る貴族の来客や護衛の騎士たちの間でたまに出てくる単語があったが、意味まで深く捕らえずあるはずがないものとして、低文明レベルの座和事と切って捨てていた。

 だが、この本には基本的な魔法技術の専門的なことが思考から実践、応用に至る過程。

 運用する大きな人型の騎士のことが書かれているのだ。

 さらに読み深めるならば、騎士は魔法兵団にのみに寄与されるらしいことが、他の本によって判明した。

 貴族も多少は魔動騎士を所有するものもいるらしいが、余程の位と爵位がないと無理なこともわかった。

 基本的に作ることはできるらしいが、技師や魔道技術者が少なく、残存するものは過去に作られたものか、今現在量産できるものに限られるらしいという。

 前者が貴族持ちのもの、後者が兵団の備品にあたる。ルナルは口元に笑みを浮かべる。

 いや笑いが止まらず、にやけもとまらなくなった自分をさらに笑う。



「在った」と思った。執着する欲望のはけ口にして目的に相当する何かが、


 

「魔動騎士か」



 自然と呟いていたが、それでもニヤケがとまらない。 

 文明レベルが低いわけではないと改めて理解したこととこの奇妙な歴史を紐解こうとルナルは本棚から本が乱雑に錯乱していくという怪奇現象を繰り返しながら、夕方まで続けた。

 元から文章が読むのが得意だったが、ここに来て速読スキルを研ぎ澄ましていく様は、誰かが見ていれば驚愕しただろう。

 ざっと何百ある本を関係あるものとそうでないものとで読み分けながら、ルナルは書庫の本を読み続けるのに夢中になっていた。

 


 

「ルナル様」


 

 ビクッと今は小さい体飛び上がらんばかりに上下した。

 振り向いてみれば、いつも世話をする女執事が心配そうにこちらを覗き込んでいた。

 長い黒髪の男性とは言い難い、際立ったプロポーションは胸以外は完璧な女性の曲線である。

 長身が目立つ女性だが物静かで美麗な顔はルナルの目から見てもいつも無表情だった。


 

「ルディアか?何のようだ。俺は今忙しい」


 

 厄介払いするかのように手で去るように即すがルディアは引かなかった。

 

「奥様が、行方不明だと警備のものらで捜索隊を組織されようとしています。」

 

 む、と眉根を寄せて、本をゆっくり閉じた。

 皺にならないように丁寧に本を置いてゆっくりと振り返る。


 

「母上か、風呂を逃げたから余計に溌剌(はつらつ)していらっしゃる」


 

「そのように見受けられます。」


 

 母の奇行はいつも通りだが、今回は極め付けだろう。

 母には二面性がある、おとなしい主婦としての顔と軍人としての母だ。

 どういう態度でも、接し方は変わらないが俺にとっては前者の方が扱いづらい。

 仕方ないとして立ち上がり、ふと窓の外に目を向けた。


  

「そうか、もう日が沈んでいるな。」


 

 差し込む光がなく、闇に彩られた書庫は本が山になって積み上げられ、陰になっている。

 明かりがなくなれば、気づくものだがいつの間にか蝋燭に火が入れられている。


 

「お前がつけてくれたのか?」


 

「いいえ、あれは魔術です。」


 

 ほう、と考え深げに本を置いて、書庫の端にかけられた蝋燭を見る。


 

「これが魔術なのか?」


 

「ええ、魔術です。」


 

 簡潔にいってくれるのはありがたいが、それだけでは伝わらないぞと言ってやろうかと思ったが、もしかしたらこの世界ではありふれたものなのかも知れないと、先ほど呼んだ魔術書でかかれていた事を思い出した。


 

「物体に仕掛ける魔術か?」


 

「そうです。仕掛けると言うより術式を仕込むと言うほうが適切な気がします。」


 

「ふーん、発火か」


 

 魔術は機械的な側面もあるのかとルナルはまじまじと蝋燭と蝋燭台を見てみる。

 幾何学的(きかがくてき)な円と中に模様が描かれている。

 これが本に出てきた定着術式と見て間違いない。

 物体に術式を定着させ、あるサイクルを作り出す魔法。

 まぁ、こんな機能をつけるあたりは魔法と言うよりお手軽な家具みたいだと思う。


 

「これは、ありふれた物なのか?」


 

「いいえ、この屋敷にはルフランの技術が多少使われています。」


 

 魔道都市ルフランは、技術力が秀でた国だと書かれていた覚えがある。

 この設計もそこの技術が使われているなら、この世界は科学に変わる魔術が使われている世界と言うことなのだろう。


 

「なら、魔動騎士はこの図面どおりで二足歩行型の戦闘機。」


 

 確信を持ってうなずく、広げた本に書かれた西洋の甲冑を機械的なものにした異形の人形。

 憶測ではなく確信としてその実在を認識する。

 理由は簡単だ、この技術流用があるということは、少なくとも魔術は存在するということだ。

 機械兵器は見当たらないが、魔動技術という動力を経て動く魔動騎士は魔術が使われた物という見方ができる。


 ルナルにとってもっとも魅力的な「趣味」の対象となりえるだろう。


 

「ルナル様。そろそろ痺れを切らしていっらしゃるかと」


 

 聞き流したい言葉を耳に通しながら、いくつかの方針を決めた。

 この世界でやるべきことを見つけたと言うことでもあった。

 趣味が一環して行動原理にあるというのはオタクの常だったが、

 ルナルは目的の方針を掲げてみたが時間が押していることも有り書庫を出て母の元へと向かう。


 

「いくぞ、ルディア」


 

「は、」


 

 と姿勢を正したルディアを随伴し、母をどうなだめようかと思考しながら別のことを考えていた。

 存外、異世界も悪くないな静かにつぶやいた。

 元の世界にない物が多少あろうとも、ウツミであったときと野行動原理は変わらない。

 むしろ、以前は病気で動かなかった体をフルに生かしたいと思っているほどだ。

 だからこそ、貴族である母に望みを言おう、それが適うかは母の検討しだいだがと、安易な道程を思い浮かべた。

2ヶ月空きありで忘れさらえるころに

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