第019話_王都へ立つ、アンバーナイツ_前編
荒ぶ風が荒々しい岩石地帯を抜ける一団があった。
魔動騎士が10体ほど中央を走る豪奢な馬車を護るように陣形を取って追走していた。
かの一団は、トーテムから離れた駐屯地『ベルダウン要塞』から出発した一団だった。
といっても、今から王都に帰還するアルハザード王の護衛でもある。
馬車は行きは三人、帰りは5人とかなり詰めていた。
ルナルとファブニールは馬車の中、荷物類の横に。
イグニスと焔が挟み込むようにして王が真ん中の席に座っている。
後方に追随して、他の騎士の外に銀色の魔動騎士がいるがそれがエドガーの機体で今もそれに搭乗しているらしい。
華麗な装備をつけた騎士はまさに王の護衛という感じにふさわしいものだが、盾もなく剣一本のみという系装備の軽量型はあまり護衛に剥かないのではないかともルナルは思っていた。
だが、それよりもこの狭さにルナルの意識は引きずられていた。
「なぁ、王様、こんなに詰めていく必要があったのか?」
ルナルは甚だしい王の蛮行に文句を付けたかった。
高速馬車を用意した良いが、それが四人乗りだった。
無理に5人入っている分、速度は落ちる。
馬を五匹繋いだこの馬車には結構な重量だろうが、ファブニールは恐ろしく軽かったので大丈夫だろうとルナルは自分の膝の上に乗せて斜めに見える王の意図に少なからず視線がこわばる。
「おや、父上と呼んでくれてかまわんのだよ?」
おどけた口調で先ほどの婚約話を今、こんな状態にあると分かって言ってくる。
性格の悪さは自分とためを張りそうだとルナルは頭が痛かった。
「私は認めません、こんな婚約……。」
首を縦に振ることなく、あの後も顔を見るたびに背けられるルナルは、まぁ当たり前かと別段気にしてはいない。
四人が精々の狭い馬車の中、わざわざ対角線上の位置に座り顔を背けるのも気にしない。
しかし、それをニヤニヤと笑う王の顔にはこぶしをぶち込んでやりたい衝動に駆られる。
「んぎっっっ」
足に痛いほどの衝撃があった。
みて見れば、細い足にヒールの付いた靴、その角を器用に使いこちらの水月を抉っている足がある。
フフンとこちらにどや顔で見下した姫の顔がある。
全く無視されていたことに業を煮やし暴力に転じたらしい。
気が短く短気なのは知っていたがここまで好戦的な少女だったろうかとルナルは苦笑いを貫くしかない。
「どうやらイグニスは痛く君の事を気に入ったようだ。」
王は何を勘違いしているのか、これを仲の良いもの同士のじゃれ合いと勘違いしているらしい。
「な、何を言っているお父様」
どもりながら返したのはイグニスだった。
ルナル自身は、事の矛先が父親に向いたことに胸を撫で下ろすが、王の勘違いにはほとほと此方が参る。
「王様、これはどう見ても嫌がっている風にしか見えないぞ?」
「何を言ってるの、ルナル」
ここまで黙っていた焔がいきなり反応しだした。
詰まらない話をうだうだととしていたら、いきなり恋花に話が変わったことで彼女は参戦した。
「彼女はね、構って欲しいの」
「え?」
「主よ、どういう意味だ?」
ファブニールは事の成り行きが分からないから質問したらしかったが、今は出来れば沈黙して欲しい所存である。
「ファブちゃん」
「ぬ?」
焔がつけた愛称に首をかしげるファブニール。
それをみて微笑み、親しい間柄では軽い名前を付け合う習慣があると焔が懇切丁寧に教えている。
カクカクと頷いていることから、そういうものだと理解したらしいファブニールにルナルはこのこの学習能力の高さを天然以外では認めざるおえない事に今更ながら気がついた。
一度教えたことは、どういう状況であれ、それがどういう行為か正しく理解しようという姿勢と、記憶力のよさはずば抜けて高い事がうかがい知れた。
「わ、私は構ってほしくなどないっ!?」
思考が横道にそれていたことに気づいたときにはイグニスが怒鳴り立ち上がっていた。
彼女に嫌われていることをルナルはその言葉で知っていた。
故に、ルナルは彼女に気を使いながら言葉をかけた。
「分かってるよお姫様、俺は話しかけないし一切構わない…それで良いだろ?」
何故か、下唇をかんで、こちらを睨む姫の姿があった。
ルナル自身、なだめるために言ったことだったが、姫にしてみれば機嫌を損ねない言葉だったのだろうかとルナルはどうにも事の展開が分からず頭を捻るばかりだった。
別の視点から、焔は見ていた。
女性から見てのイグニスの行動は分かりやすいッたらない。
彼女の不器用さと、ちゃんとした思いもあることに自然と親しみがわいた。
そして、こういう色恋沙汰に目のない焔は、イグニスの心情を多少は察して、笑みを浮かべた。
「あーあ、乙女心を理解しないね、ルナル君は……」
何故かお姉さん口調の焔、王様に退け、と声を新たにだした、それに素直に従う王。
場所が変わり、イグニスの隣に来て、彼女の頭を撫でた。
如何して撫でてくれるのかわからないイグニスだが、自然と心が安らかになったことで、ボロボロと涙をこぼした。
自然と背中を撫でて抱きついてイグニスをなだめている焔。
それとは別に対面に座るルナルはビクッと彼女が涙を流したことにルナルは動揺するも目を瞑って事が止むまで無関心を貫くことにした。男としては最悪の手段だった。
それとは別に王にいたってはぞんざいに扱われたことに一つも腹を立てず、上下関係がどうなっているのか疑いたい態度でルナルの向いに座る。
揺れる馬車の中の移動、危なげなく変わった席で王は、我冠せずを貫くルナルに話しかけてきた。
「婚約者を泣かせないでくれないかね、一応父として言っておく」
王都まで飛ばして三日、この面子でいることにルナルは苦痛を覚えるがここに胃痛薬がないことをうらむばかりだった。
二日目の馬車、室内で眠りこけたイグニスとファブニールと焔をよそに、ルナルは窓から空を見上げた。
「この夜空を見ていると本当に異世界だと実感できるな」
自然と見上げた月が、異世界の証明であり、一番の確認方法であることにルナルは自然と苦笑する。
あんなふざけた戦争ばかりの世界でも見比べて、懐かしむくらいには空は見上げていたかと何となく思ってしまった。
「何をさしてそう決めてるんだ」
ファブニール達とともに寝ているものと思っていたが、どうやら王も目がさえているらしい。
「あの壊れた月が、何よりの証明だ。」
異世界と自分がいた世界の明確な相違点にして一番の確認方法。
自然がこんなに残っている時点で、まかり間違ってもこの世界と元の世界を比べるべくもないがと当たり前のことを自然と考えていた。
「そうか、確か異世界の月は丸いままだったのだな」
焔にでも聞いたのだろうが、あいつの世界と俺の世界には多少差異がある。
だが同じく月は丸いのかと不思議なものだなと改めて思った。
世界は違えども、戦争は双方ともにあったというのだから
「ああ、戦争は酷かったがな……」
「……」
呟きが聞こえたのか、王は口をつぐむが目線を俺に合わせて聞いてきた。
「お前の世界には何があった?」
在り来たりな質問だが、異世界という他世界からしたら別の世界というものがどういうものなのかと興味を抱いたのかもしれない。
競にまで足を運ぶ、この行動的な王なら確かにありえる話だなとルナルは事実だけを語る。
「何でもありさ、戦争と言う大義名分は人を殺す道具を量産する格好の生産場だ。そこにあるのは無意識にある洗脳さ、あの国が悪い、誰が悪いと情報と言う悪意で人心を惑わし、惑わさなくとも同時に武力も行使する。全面的に権力者による闘争の世界だ。」
言ったことに王は沈黙した。
子供の姿で語るルナルだが、いつもとは違い大人びた表情でことを語る。
王自身は少し面食らう形だったが、少し聞きたいことと違ったのだろう。
ルナルは意地悪だと思おうが、ルナルから見た世界はそれでしかなかった。
「だが、国と言う基盤はあったのだろう?」
仕組みは生きていたのかと王は問うが、それも否定になる。
「いいや、国とは名ばかりの国民には何も知らせない。裏では下種に成り下がった終わりの見えた世界だった。」
ただ重く、王は一言だけ返して、ルナル自身に焦点を持ってきたらしかった。
「そうか、でも、お前のその技術の一部は、元の世界で培った者だろう?」
「確かにな、何故かこういう分野にしか役に立たなかったし、同時に趣味でもあった。」
「趣味か……、あまりいいとはいえんな、こちらはそれを求める側にあるが……」
どうやら真実を語りすぎたらしい。
王はこちらに対して少し負目抱いているようだ。
姫に見せた冷徹さで王でい続ければいいモノを、この王は信用に足るのか少し悩む所だった。
「どうした王様、姫に言った冷徹さはどうした?」
「はっきり言おう、この前哨戦は20年から始まっている。」
突然仁王は真意を語る積もりになったのか、真面目な顔でルナルに言ってきた。
「20年前?」
「あのアスガルドに二度戦力をぶつけた時がルフランにはあったのだ。一つは、8年程前とそのずっと前20年ほど前になるが、小さな内乱があった。」
「アスガルドでか?」
「いいや最初はルフランでだ。その後統制を取って、アスガルドに信仰したが返り討ちにあった。」
本筋であるルフランの話を王はするつもりらしいが、ルナル自身、ルフランについては書物で聞きかじる程度の知識だ。魔女達のアスガルド反対勢力はあの国を利用するつもりらしいが、俺の前に現れたりと色々、やろうとしている事と食い違いが出てきている。俺を旅に出すつもりで落っことしたのも何か意図があったのではと勘繰るところだった。
「当時、私も即位したてだったがそういう情報は集めていた。だが、話を聞くと奇妙さが際立った。軍が挙ってルフラン王を殺そうとしたらしいが、幾人かの貴族をまとめて処刑することでそれを収めたらしい。」
首謀者を殺すのは何処の国でも同じことだと思うが、何が奇妙なのだろうとルナルは王に聞くべく話を進める。
「別段普通じゃないか?」
「いいや、その後王は軍部を掌握した。そして騎士の量産化で他国に流通を求め、現在では計り知れない国力を身につけた。」
なるほどと、利用されたのは貴族の方だったと言うオチかとルナルはことの進み具合から推測する。
「魔法使いが関わっていると?」
ことが量産という具合になるとルナルは不自然さを初めから感じていた。
いくら技術力があろうと、量産をできるほどあの技術は簡単なものじゃないと常々感じてはいたのだ。
そして、あのデューイの機体ディシエントを軽く検分してわかったことは、この世界の水準から見たら明らかにブラックテクノロジーによるものだということだった。
もともと、騎士本来は遺跡等で出土や彫像と化して村などで祭り上げたものを貴族が骨董品を集めの習慣で買い取ったり、見つさせたものが継承された形が多い。
騎士を戦闘という舞台に引っ張って来たのはアスガルドという国のばかげた歴史が主だ。
王政時代の王の気まぐれから戦争に転用されるくらいにのし上がった兵器。
それが魔動騎士の今のあり方に繋がっている。
しかし、量産まではルフランが技術供与という形でばら撒くまではなかったことだった。
それ故に、転生者という不安要素が関わっていることを否めない。
「否定できない要因だ。」
王は断言してくれるが、意図がわからなかった。
王は知っているのか、ルナル自身質問するしかない。
「ルフランは何を狙っていると思う?」
技術供与による量産機の散布は他国を強くするだけだが、それ自体に何か意味があったのだろうかとルナル自身不安要素が増えるばかりだと悩むしかない。
王都へ付いたら、情報の整理と収集もせねばなるまいと心に留め置く。
「解らん、中央を手に入れても他国からの敵視は否めないし流通した騎士は明らかに武力を持たせている節が……。」
王も同じ意見らしい言葉は途中で轟音とともに途切れた。
「っっっ何だ?」
ドオオオンッッ
重い物が倒れる音だった。
同じくして、急制動かけた馬車にも、慣性をそのままに衝撃がかかる。
外で何か起きているらしいことに、その場にいた全員が気づいていた。
王は、御者に話しを聞くために、窓口からどうしたと呼びかけた。
「敵襲ですっっっ。」
御者の声で思考から我に返る。
この状況で襲うのは明らかに、王を狙っているものと推測が付いた。
最近だるくて眠い、何とか更新。
途中で切ってますが、後時間のあるときに手直しして載せます。




