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第018話_王との会談、別の転生者_前編



 闇が立ち込めたことに気づいた人間はルナルだけだった。

 といってもこの空間には既に三名しかいない。王はあの発言の後、ことの真意を確かめるために、昔の情報をあたり事実確認が取れるまで、俺を軟禁すると言い放った。

 それからほどなくだ、エドガーが監視のために残され、ファブニールが熟睡中にそれが  空間に現れた。

 見覚えのある、黒い影があわ立つ光景。

 腕が頭が胴体が、と最後に足を出し終えて、魔女エルヴィンがそこにいた。

 監禁部屋と言うには、豪華なベットがある部屋は出入り口以外の一切に隙間がない

 場所に平然と侵入を果たした魔女にルナルは化け物と感想を頭に浮かべた。

 

「あら、久方ぶりに会ったのに愛想のない顔ね。」


 ふと見れば、周りの光景が止まって見える。

 注視せねば気づかないほどに、周りの光景は異常だった。

 それでも、寝返りをうとうとしたファブニールの腕が上ったままだった事で気がついた。

 そしてエドガーにしても、ここにいる魔女に気がつきもしない一方向を見つめたままなのも異常だ。


「時間を止めた?」


 そうとしか形容できない事柄だが、ルナルには信じられない光景だった。

 絶対の概念であるはずの時間を、止めていることにルナルは魔女の力を改めて常識外と認識しなおした。


「いけないわね、いつも横道にそれるのは」


「何時も何時も、そらさせる要因を作るのはお前だがな……。」


「それでも、注意力散漫なことには違いないわ」


ベットの足元に腰を下ろして、ルナルを睨むように見るエルヴィン。


「全く、要らない情報を渡してくれたわね?」


咎めているのは、先ほど口にした王への要求ではなく、自分の主事を明かしたことだろう。

ルナル自身、いくつかの打算と計算があってのことだが、不安要素であった一つは自ずと目の前に現れた事で証明された。


「そちらの思い通りに動くとでも思ったか?俺は俺のしたいように行動するさ、たとえ監視されていたとしてもな……」


情報が駄々漏れになっていただろう事に頭が痛いルナルは、睨み据えた魔女に悪態をつく。


「あら、違うわ…別に貴方を監視していたわけではないの」


「何?」


ルナルは怪訝顔で否定した魔女を見た。


「この国にも私たちの密偵や情報源はいるのよ……。」


とすれば、この国で行動を起こしても筒抜けになるわけかとルナルは全くの無駄足を取った気分だった。実際のところ、王位継承者だという情報を与えて、少なからず条件を飲ませるつもりだったが、この魔女の言い分からして、多大に情報が漏れているらしいことが分かった。


「まるで全ての国にいるかのような口ぶりだな」


「出来ればそうしたいわね……でも今は大仕事をするための準備期間なの」


「あの情報は意図して流したのか」


情報だけでも、大国への牽制や認識に影響を与える。

事実この国は、それにより軍備増強に踏み入った。


「ええ、今は各国に均衡を持たせる次期なの」


「どこまでが、術中(じゅっちゅう)なのか疑いたくなるな?」


「そう疑心暗鬼にならなくもいいわ、私たちもルフランを利用するつもりでいるだけなのだから」


「なら今俺の前に現れたのは、利用するためか?」


ルナル自身の看板が必要になったのかと自然と警戒心が強くなった。

時間がある限りはあの手紙曰く、自力でルフランまでいけばいいものと思っていたのだが、状況を早めるつもりなのだろうかとルナル自身、まだ何もなしてないままの状況ではただの操人形(くぐつ)になって終わると言う結末しか見えない。


「いいえ、今回は私たち側の事情で来たのよ、このまま傍観に徹するという話をしにね」


軽快していた事ではないようで内心ホッとしたのが本音だった。

だが、疑問が残る言い方について質問が出た。


「今の状況で手を出さないというのか?」


「ええ、このままのほうが面白いとあの人が言うのよ……。」


何だその愉快犯はとその人物について一切語らないが、親しみある間柄なのだろう。

語る口調が柔らかく、表情も少し和らいで見える。


「まるで、目的を楽しんでいる口ぶりだな…」


「ええ、そうね彼は楽しんでいるわ……」


話しぶりから男かと分かったが、この魔女をここまで落とす男はどんな人物なのか一回あってみたいものだが、いらない事情を抱え込みまた、メカ弄りから遠のくのはごめんだったので聞くことはやめた。


「そうだったわ、一つ頼みごとがあるわ」


魔女が頼みごととはあまり受けたくないものだが、内容は至極簡単だった。


「ここにいる異世界の子には、優しくしてあげなさい」


「それは何かのたくらみか?」


「いいえ、ちょっとした助言に近いわ」


意味のない事柄に俺は憮然としながらも、それを承諾した。

そうして魔女は消え去った、闇に溶けるように消えていった。

助けることなく……。


「とことん、俺を馬鹿にせんと気が済まんのか……。」


時間はいつも通り滞りなく動き出す、エドガーにとってはいきなり喋りだしたルナルに目を向けてどうしたといってくる。それになんでもないと返して、ルナルはこの状況を改善出来る魔術の存在を思い出す。様は出口がなければ、作ればいいという結論だった。

召喚器を取り出して、そこに施された魔術式を読み取って必要な部分だけとり記憶する。

後は書き足す部分を書き足しておかねばならない。

空間制御の魔術の応用『転移』の術式。

3次元空間を把握し他の場所に転送するという空間把握を魔術として使用するにはまだ時間が足りないが、結果が悪ければ逃げる手段としてルナルはベットに倒れこみ横になって魔術式をくみ上げ続ける。

横にはファブニールの無表情ながら涎をたらした顔がある。

これを護らねばならないと硬く決意する。

親ばかに毒されていることに確信を抱きつつ、王が事実確認を終えるまでが猶予だと考えている。そうこうしている内にコンコンと部屋の戸を叩く音がした。


「失礼するぞ?」


入ってきたのは姫だった。

今は外で着ていた鎧を纏ってないドレス姿だった。

銀の髪を後ろでまとめ、青いドレスを着た姿は一瞬姫と見紛うほどかわいらしいものだった。エドガーは見慣れていたのか、横のどいて姫の脇に移動している。


「どうだ、住み心地は、駐屯地の貴賓室だ接客などに使われている部屋だぞ」


的外れに言ってくれるものでどう答えれば満足か、皮肉にしかならないだろう言葉を仕方がなく口にする。


「ああ、住み心地はいいぞ、お姫様。」


「そうか、お父様が面会謝絶というのでな、こっそり入ってきたのだ」


この御転婆姫に常識と良識を教え込んだのは誰なのか問いたいと常々思うところだ。

だが、この話しぶりからこの姫には情報は一切話してないと見て間違いないだろう。

魔法使いのことも、隣国の情勢のことも、子供ゆえに見逃しているのだとしたら王族としては三流と揶揄してやるつもりだった。だが、同時にこの無邪気さが翳るのを見たくないのも事実だった。


「それで、お姫様は何のようで?」


「いや、特にはないのだが、お前は女装が趣味なのかと……」


「ぶっっ!!」


なんと的外れなことをいってくれるのだろう。

確かに事情があって女装をしていたが、今は簡易服に着替えさせられているのだ今更その話を持ち出すとは、何か気になるところでもあったのだろうかと姫の表情を伺ってみたが少し頬を赤くして、こちらを見ているだけで特にこれといった変化はなかった。

仕方がないことだったと名誉を護るために弁明し、どうにか納得してもろうが、またしてくれと何故か好評だった。


「そうか、趣味ではなかったのだな。」


「そうです、姫様アレは変装だったそうです。似合ってましたが…」


「趣味がいいなエドガー。」


「いえいえ、姫様ほどではございません」


何故か、俺の女装談義に花咲かせる二人がいた。

全く持っていらぬ神経を使わせる二人だと俺自身嘆きたい気分だったが、またも部屋へノックもせずに王が乱入してきた。


「情報の確認が取れたぞ、」


「お父様?」


 姫が反応したが、それを無視して王が入ってきた。

 これからが本番だとルナルは自身を戒める。

 一国の王との会話だ、簡単な事ではすまないと要求した事柄を思い浮かべていた。

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