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第016話_王族の縄張り、初の魔術戦闘_前編

 冷や汗が額を伝うし背後からの視線が微妙に怖い。

 ばれないとは思うが、如何せん至近距離ではないことが唯一の救いだ。

 それでも、商品を競にかけた者として、紹介のときは立たねばならないのだが時間制限あるということで事態はあんまり変わらない。

 親しげに姫と話をしているエドガーが見えるが、知らないフリを通すほかない。

 ファブニールもドレスアップしているから、分かりにくいとは思うが一応背中に隠してかばう。

 

 「むにゅ、どうした主。」


 背中に押し付けたせいか、息し辛かったのだろうファブニールに誤りながら状況を説明せねばなるまい。実際には、エドガーたちにあっても、無視するようにいったが、この子が天然だったことを忘れていたのだ。目にしようものなら、明らかに反応することうけあいだ。


「ファブニール、これから言うことをきちんと護れるか?」


「うむ、言ってみるがいい主」


「ここでエドガー達に逢っても、エリーと名乗れ、決して本名を名乗ってはダメだ。」


「む、何故だ。」


 眉根を寄せて、無表情に首を傾げるファブニールに俺は重ねて言い含める。


「今、俺達は逃亡者なんだ。下手に本人だとばれるとやっかいなことになる。」


「だが…」


「お願いだ。あとで好きなもの食べさせてやるから」


「了解したぞ、主」


 二つ返事で了解してくれるのはありがたいが、後になっての食費の出費を考えると頭がいたい思いだった。しかし、お披露目のとき意外はスルーすればどうにかなりそうだとルナルは楽観視していた。

 ルナルは平静を装うために軽く深呼吸をして、商品が出るまで他の商品を見て楽しむことにした。

 この会場自体は簡易的にな材木で作られて、見た目は派手にみえるが結構張りぼてでできている。

 イスなどは結構、豪華なものを使っているが、舞台などは簡易的な劇場みたいな感じだ。

 見る分には丁度いい高さだから文句は言わない。

 実際興味深いものが多数出ていた。


 水精のネックレス、石王のトゲ、魔獣のツメ、竜の鱗、

 魔術師の杖、遠見の鏡2つ組、火石、黒ずんだ碑石、それに魔剣。


 一応ここら辺で手に入るものはない。

 価値で言えば、素材も結構重要だ。

 特に竜の鱗は、あまり入手できないものだと思われるし、碑石等は見たことも無い物だ。

 『構成分析』の魔法にかければ、『錬金』で合成も可能かもしれない。

 そうすれば、属性武器も作れるかもしれない。

 火石はたしか、魔素を取り込んだ鉱石だ。

 環境によってそれ自身が、魔力を精製し、火のよう常時熱い石のことだ。

 それに魔剣というのも興味深い。

 剣の表面に施された術式は、こちらからは見難いが、何かを取り込む方式が取られているように見える。曖昧な部分は知らない魔術式(プログラム)だから見当も付かない。

 やはり、色々と旅をしてみるのもいいかもしれないと改めてルナルは思った。

 世界は広く広大で、自分の知らない事が沢山有ると感じられた。

 魔動騎士の改造をするための場所も探さないといけないからやること山積みだった。

 オリジナルの騎士を作り出したいという目的も変わっていないのだから、今は目の前の問題と金をどうにかしなければいけない。そうでなければ、もっと先に伸びてしまうことになりかねない。

 どこかに倉庫みたいなものでも作れればいいのだが、そんな予算などどこにもない。

 

 実際のところ場所としてはこの首都より外れの町では、早々いい場所は手に入らない。

 大体が、商人や国軍等に抑えられているのが落ちだろう。

 そう言えば、あの認証キー兼短刀は、確か亜空間固定した機体を呼びだす術を施してあったはずだ。それを分析して空間魔法を再現できれば、任意の空間を作成して、そこを倉庫兼自宅にするのもいいかもしれない。まぁ、自宅は冗談にしても倉庫の方は本気で考えていたりする。

色々と考えていると丁度お呼びがかかったようだった。


「ルディア様、エリー様、どうぞ商品のそばまでおいでください。」



偽名での登録したために一瞬誰と思ってしまう。

閲覧席の椅子を立ち、商品を紹介する舞台上へとあがる。

お客である、貴族や商人、王族なんてのは見えないようにして軽く頭を下げて商品の紹介をすることにする。


「初めまして、今回は多忙の父に変わり商品の出品を任されました私たち姉妹がご紹介します。」


 女言葉になれないせいか少し硬いが大丈夫だろうとファブニールをつれて前に出る。

 実際には背中に隠れている形だが、人目が多くこの子も緊張しているようだった。

 背中がすうすうするドレスも我慢して無理やり笑顔作って説明する。


「最初にこちら、火の盾という指輪についてご説明します。」


 妙に睨んでくる姫は視線を商品ではなく、俺へと向けている。

 眉根を寄せるだけで、気づいてはいないようだ。

 俺はなるべく視線をそらして説明を続ける。


「魔力を通すことで、前面に炎の盾を出現させます。」


 そう言って指示通りにファブ二ールに石を投げさせる。

 と言っても全力で最初投げられたときは死に掛けたので、すごーく弱くと念を押していた。軽く投げて当たる直前に魔力を流して展開。

 ボッと石が炎の壁に触れて、ドロリとけて下に落ちる。

 観客がその成り行きにしばし呆然とした。

 実際、盾を障壁を生じさせるものなら多数にあるだがこれはどれ位の温度が出せるのか試したためにかなりピーキーな設定なっている。岩石を融解させるほどの高温だからはっきり言って飛び道具の防御に最適だ。ただし、使用者が暑いのが難点だが、魔力をカットして火の盾を閉じた。


「以上がこの盾の使い方です。飛び道具などを見切って使用すれば絶対の障壁になるでしょう。最低額は1万Gからです。」


実質、お金自体はそんなにかかっていない。

手間は徹夜して仕上げたって言う事実だけ、あとは魔術式の書き込みを指輪に施すのに苦労した程度だ。他の魔術具をみても、出来がいいものも結構あるが、出力の出し方や効率の悪い魔動式が書かれていたりとで詳しいものが鑑定しないとあたりを引きにくい位に粗悪品が混じっていた。出来のいいものの値段をそのまま付けさせて貰ったが反応はしてくれるのか、いささか勝負心あり値段だった。


1万1000G…

1万5000G…

1万7000G…


どんどん値がつりあがる。

予想では、一割ぐらい高い値がついてくれれば良かったのだが、予想以上に値が上がっていく。


1万9000G…


とうとう、二倍額にいくかと言う値段にあがった。

これはファブ二ールノ食費を当分賄える額になるなと嬉顔で落札かと思いきや、


「4万だ」


と、閲覧席に座る足を組んだオールバックの年配の男性が、一気に2倍近くの値を付けてきた。

いきなり値が跳ね上がり他の客はしり込みして。それ以上の値を付けることは無く4万で落札された。まぁ、予想に反し大金が手に入ったのだから疑問を持つのはやめようと次の『風の囁き』をだす。


「こちらは、結構珍しいものです。」

 指で片方をつまんで、自分の耳に付ける。

 ルナルは閲覧席に呼びかける。


「申し訳ありませんが、片方を誰かためしに付けてもらえませんか?」


実証せねば分かるまいと閲覧席の方々に手伝いをしてもらうつもりだった。

だが、ここで予想できていた。


「うむ、なら私がしてやろう。」


小さな体に鎧姿、銀の長髪に色白の肌、目先が鋭い我の強い女性。

お姫差が率先として手を上げることなんてのはなんとなくそうなると思っていた。

好奇心旺盛でエドガーの部隊に仮入隊したりする御転婆が、面白そうなことを黙ってみているなんて淑やかな令嬢をやるわけがないと思っていた。


「では、こちらを」


顔には出すまいと、笑顔で接していたが微妙にぎこちなさが残った。


「ほう、変わった装飾だな……。」


「ええ、故郷の物で、十字架と言うんです。」


ルナルはどうぞとイヤリングを手渡した。

転生前の世界にあった主教の飾りと言えはしないので、そこら辺は適当に故郷とした。

お姫様は、自分で装飾を付けたことは無いのか手間取り、悪戦苦闘していた。

回りのご婦人からは失笑を買って、少し涙目で睨んでいる。

普段から、御転婆を繰り返しているであろうお姫さんだ、身だしなみを自分で整えることが出来るほど、成熟しているとも思えないし多分メイドなどに手伝ってもらっているのだろう。

俺自身、率先してかかわりたくないが、ファブ二ールの世話で板についたのかどこか妥協してこれくらいは言いかと姫を見た。

仕方ない、と俺は姫様に近づいてその手にあるイヤリングを取り上げる。

「えっ」とお姫様は俺を見るが、にっこりと笑って付けてあげますと言うと、小さな声でありがとうと返してきた。存外にこの子自身は素直な子なのかも知れない。

あの時、傲慢な貴族の同族と扱ったのは悪かったかもしれないと自然と思った。

手で耳の辺りを触り頬に少し触れた、きめ細かく滑るような肌手に気持ちよかったが妙に全体的にお姫様の顔は赤いようだった。

どうですか、と聞いたら勢いよく返事が来た。


「うん!付け心地は悪くないっ!!!」


 そうですかと返しルナルは舞台上よりさらに向こうまで行き簡素な張りぼてを通り越しそこから話しかける。観客たちにはどういうことかさっぱり分からなかったが、お姫様にははっきりとルナルの声が伝わっていた。


「聞える、ああっ分かったその通りにやればいいのだな」


観客たちに言い含めて、姫様がイヤリングに触れて魔力を通し、反対方向を向いて呟いた。

これで、俺には何を呟いたか、分かるわけが無い。

俺は戻ってきて、呟いた言葉を言った。


「エドガーのアホ」


観客の驚愕は大きかった。

エドガーは二度もアホと呼ばれて眉筋をピクリと動かしていた。

息を飲んでそれを見たものもいたが、姫様自身も使ってみて面白いと豪語していた。


「すごいな、これは遠くにいても会話できるのか?」


笑顔で微笑んだお姫様にそうですよと答えた。

声を風の魔法で届ける仕組みだと簡単に説明した。

互いに受信、送信の魔術式を仕込んであるとも話した。

そうするとオールバックの中年が話しに割り込んできた。


「って言うとつまりお壌ちゃんがこれをつくったってぇのかい?」


聞いてくれるに任せて喋ったために、自分が作った作者のように喋ってしまった。

AT人型兵器の新型発表するかのような浮かれ気分を出してしまっていたらしい。

冷や汗が伝うがみんな真剣に見てくるので俺は笑いながら否定する。


「あははっなにをいってるんですかぁ、これは父の取引相手から譲ってもらったんですよ。」


咄嗟に考えた言い訳は妥当だろう。

皆軽く疑問に思った程度だったのだろう、軽く引いてくれたがオールバックの中年だけはシツコクいてくる。


「なら、その取引相手を教えてくれ」


尚も食い下がる。

後がない分言い訳を用意してこればよかったと俺は今更ながらに思ったが、どうにもこの親父は始末が悪いと悪態尽きたいのを笑顔で我慢する。


「えーとっ……。」


「金なら10倍だそう」


驚愕する額を提示するオヤジに金銭の天秤が軽く傾きにかかる。

だが、製作者は自分などと言えるはずも無い情報だ。


「お父様、そんなに言っては迷惑だぞ。」


と姫様が言ったことに俺は驚愕した。

お姫様は父親が王様だから姫様である訳で、今姫様が父と称して話しかけたのはオールバック中年に向いてなかっただろうか。

ありえないだろうことだが、この中年こそ……


「エルダイン王だと……」


ルナルは知らず呟いていた。




呟いたルナルを見つめる三つの視線。

一人は驚愕、一人睨む、一人は品定めするかのように観察する。

処々は違えど、この三人の注目を集めるとは流石にまずいことを言ったと思った。


「君、何故私のことを知っているのかね?」


中年いやエルダイン王はまじめな視線で目の前の少女の格好をしたルナルを見る。

どうにか言い訳を考えねば、かなりやばい状況だった。

貴方の娘さんを知っているからですと言えばいいのか。

だが、どこであったと言えばいいだろう。

この姫さんがパーティーとかにちゃんと出てるのだろうかと言う不確定要素が多々ある。

御転婆よろしくサボってたりしたら、話がかみ合わない。しかもいつのパーティーかなど聞かれれば、それこそ終わりだ。

エドガーにいたっては、睨みすえて、剣に手をかけている。

仕方ない一か八かと、王様に話しかけた。


「うふふ、何言ってるんですか……以前パーディーで親と一緒にお顔を拝見させてもらったことがあるんですよ。」


これで妥当だろう。

ネ、とファブ二ールにも相槌を打つ、偽名エリーは仕方ないと擁護するように言ってくれた。


「そうだ、主人は悪くないぞ」


バカいっちゃいけないよっと俺はファブ二ール叫びたいほどだった。


「主人だと…。」


エドガーは聞き覚えのある呼び方に、目を細めてルナルを見た。

黒い長髪に赤い目、白い肌に、少女……と当たりをつけ、熟考する。

そこで機転が利いたのか、一気に氷解する答えがエドガーの中にはあったらしい。


「ルナルか?……」


やっぱりばれてしまった。

びくりと反応してしまったのは、言い逃れすらできない。

と後の後悔を胸に秘め、状況の打開を開始せねばと思うばかりだった。


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