第015話_錬金術師の娘、逃走_後編
途中書いたら投稿という形態をとっているために偶に分割してお届けしてます。誤字脱字はなるべく時間あるときに直します。
ルナルは早速、武器屋や防具屋、金物屋等を廻りガラクタを集め回った。
実際再利用するつもりだったものを、安く譲ってもらった形だ。
それで有り金は全部はたいたように思える。
最初の場所で、荷を積むために荷物を引く荷車を借りたからそれで全額消え去った。
かなり量が多くなったために、俺はどうやって運ぼうかと思いその前に立ち尽くしていた。
「うーん、どうするか」
「主よ、これを運ぶのか?」
事の成り行きを見ていたファブニールがたずねてきたので、ルナルは頷いた。
「そうだ、一応、宿の裏までは運んでおきたい」
「そうか、分かった。」
何が分かったというのか、荷車の持ち手を両手で掴む、オイオイと無理だととめようとしたが、
「んっしょ」
小さな掛け声とともに少女の数十倍の大きさのものを積んだ荷車の腰が上がる。
「うそー」
としらけた声を上げてしまったのは、あまりにも相対比に偏りがあったためだが、これも竜の力かと何でもかんでも竜のせいにしてしまうのは逃げかなと思いつつ、まぁいいかと思考を放棄した。
優先することがある分、考えることは後に回している。
とにかく売って金にできるものを作り出さねばならないのだ。
「助かったよファブニール」
「んっ」
無表情のその頭を撫でて、フリでもいいから横で荷物を支えるフリをする。
そうでなければ、ものすごいへんな光景になるからだ。
6歳前後の少女が荷車を両手いっぱいに持ち手を持ち両手を挙げた状態で前に進む。
はっきりと今でも奇異の視線が集中しているが、そんな事気にしている余裕はなかった。
どうにか宿前まで運んで、作業を開始した。
初めは素材の確保だ。
これら集めたガラクタから構成比の高い鉄の部分だけを抽出しなければならない。
そこででてくるのが、構成分析だ。
この魔法は、魔動騎士にある当たり前の機能だ。
CPサイズ調整に使われる、搭乗者の情報分析に使われていた魔術式を改造して魔術にしたものだ。今は手を通して思考領域内に情報が事細かに送られる。そうして構成比を確認したら、次は別の魔術式、『精製』を立ち上げる。
これは言わずもがなエドガー宅にあった技術だ。
混合物を廃し、純粋に近い物質のみを抽出する魔術。
それによって不純物を取り除き汚れもない立方体が作成される。
これを何個も作っていくのが最初の作業だった。
量は最初多いと思われたが、全部を処理し終わると、大体20個の立方体が出来上がった。
鉄と区分できないガラクタは黒い墨のようなの塵へと変わってその場に落ちた。
この立方体から装飾品を作り出す。
錆びにくいように加工もせねばならないから
動物の死骸や植物を構成分析し亜鉛を取り出す。
これで材料自体は揃った。
ここからは、別の魔術式『錬成』になる。
これにて思考領域にある設計図による再現が行われる。
思考領域にある多重の魔術式を閉じて、それに集中する。
材質と質量と形状を再現し、構築する作業。
錆にくくするために亜鉛による加工も行い、材質を補完し出来上がる。
デザイン的には女性が好む銀細工をモチーフにしたものだ。
見た目は過去の異世界にあったデザインだから悪くはないはずだと思う。
一応これが試作第一号になった。
ルナルはこれを売りに、装飾店へと足を運んだ。
本来なら、材質で判断が下されるであろうそれは意外と好評だった。
デザインが斬新ゆえか見た目が綺麗だったためだ。
この世界には、装飾華美なものはたんとあるが、斬新といえるものはない。
新しい考えが普及していない分、異世界のデザインは意外と売れるようだ。
ルナルはそれから色々ためし、魔道具なる物まで作成した。
貴金属に魔術式を刻み、魔力を通すことで発動する媒介を作りアクセサリーとして作ったのだ。
今現在知っている、風の魔術式と火の魔術式を工夫して作ってみた。
一つは、『火の盾』という指輪。
もう一つは、『風の囁き』というイヤリングだ。
火の盾は文字どうり魔力を通すことで、身を護る火の盾が発動するというものだ。
発動すると1m弱の火の膜が前面に展開するというものだ。
風の囁きは、遠くにある音を拾い逆に届けることもできるものだ。ついになった二つがあり、通信も可能という優れものだ。
実際にそれを出そうとしたが、競に出してはどうかと言われ丁度あの忌まわしいの正午に開かれるという。
まぁお金受け取ってから逃げると言うのもありかと高額になると予想してくれる店員に俺の胸は弾むが懸念するのは、鉢合わせしてしまうと言うブッキングだ。
それだけは避けねばと、ルナルは妙案思いついた。
甚だ尺だが仕方がないと、当日ルナルはある格好をすることにした。
競、当日
「お集まりの皆々様、ここにお集まりいただきまことにありがとうございます。」
「ここにあるのは数々の商品からえりすぐったお宝や貴重な芸術品です。」
「どうぞ、満足いく商品を競り落としてください。」
司会者が進行を司り、商業市場のど真ん中でそれは行われた。
にぎわう人々を観客に、商人や貴族も多数見受けられるようだった。
実際には、この競はこの国にある主要な村や町で偶に団体移動する商人などが開催するらしい。
事実、珍しいものも多数出品されることがあるために開催されるたびに貴族の使いや店の買い付けに来る商人なども参加する小さなイベントとして親しまれているらしかった。
ルナル自身、出展者として席を設けられた。
今のルナルは完全な少女だった。
黒い髪を後ろで上げて、片方の瞳を前髪で隠し、顔には薄っすらと化粧まで施している。
漆黒のドレスは、後ろが開いた面積の小さいものだ。
子供の着るもんじゃねぇといったが聞いてくれなかった。
定員さんが意気込んでルナルの改造をプロディースしてくれたのだ。
そのせいで今のルナルは貴族の娘として、閲覧席に座っても申し分ないほどの気品があった。
横には同じくドレスアップした白髪の美少女がいる。
姉妹で参加と言うことにしてあることから色々助かった。
白髪の少女はファブニールだった。
こちらは白を基調としたドレスでゆったりしたものだ後ろにリボンが付いたかわいらしいものだが何故俺だけこんなに面積の少ないものになったのかルナルは不愉快で仕方なかった。
が、変装は大丈夫だと自負した。
実際、ルナルを知る宿屋の店主などは、俺がこの姿で部屋から出てきて唖然として誰と呟いたくらいだから見破られる心配はないだろうと少し安心していた。
だが、出品のされた商品が進むにつれて、あることに気づいた。
閲覧席の空席が最初あったのだが、それが埋まったことでルナルはどうしようもない危険と隣り合わせとなった。
「エドガー、この席であっているか?」
「姫様、ルナルたちと会う前にここに来てよかったのですか?」
「仕方ないじゃないか、出品されるものの中に面白いものがあるんだ見逃す手はない。」
「しかし……。」
「大丈夫だろうさ、もしものときは……だろう」
「そうですが、あの方はどうされるのですか?」
「大丈夫だ、少し市場を見てから参戦すると言っていた。」
「参戦って……」
そば耳を立てたが、聞こえない所が多々あった。
だがもうルナルは、ばれる寸前まで来ているのではないかと隣にいるファブニールの頭を撫でることを精神安定剤にしてばれないことを祈るばかりだった。




