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第012話_錬金術師のボロ屋、情報収集_中編


「おいエドガー、エドガー…エドガーーーーッ!!」


 大きく声を出して呼んでみるが、全然反応しない。

 もしかしてぼったくられたのかと嫌な検分を交えてしまう。

 

「ああ、すまないね…」


 後ろから気配も無く声がして、すぐに振り返った。

 一週間ぶりの再会だが、この男の姿はあまり変わってない、前よりは汚れているようには見えた。


 「仕事終わりました。」


 そう言って、部屋に行き点検してもらう。


 「うん、見やすくなってるね。」


 「ああ、種別で分類した。」


 そういうと少し目を丸くして、俺を見たエドガーがいた。


 「君、内容理解できたのか……ここにあるのは大抵が自費出版モノと学術書だからタイトルに統一性はないし、中を見なきゃ解らないだろう?」


 ルナル自身、言ってもいいものか迷った。

 実際なら仕事をもっと早く片付けることも出来たが、読みながらの作業で遅れたなどと言おうものなら給金もらえないのではと、少し困っていた。


 「別に読んだことを咎めるつもりは無い、ここまで理解力があるなら助手にほしいくらいなのさ……」


 「そういわれれば言うしかないな」


 瞑目しながらも、不承不承話をした。

 話しながら解ったことだが、この男エドガーは元貴族の家柄だという。

 研究者だった父の研究を引き継いで研究をしていたが、母の借金で家を質に取られ追い出され予備に昔使っていた父の研究所に引っ越してきたらしい。母は金を持って逃走。

 借金も少し残額が残る形となり、この土地で薬屋や道具を売って返済や生活費に当ててるらしかった。

 

 「いやー、久しぶりに人と話したよ。俺研究に没頭すると何も見えなくなるし」


 頭をかきながらしゃべるのはいいが、ふけがボリボリと散って汚らしいこと請け合いだ。


 「あんた風呂は入れよ」


 「そんなことよりさ、君助手やらないか?借金も次の集金でチャラに出来るしその分を君の給金でどうだろう。」


 願っても無い話だが、実際ここでの情報収集は終わっている。

 仕事の内容にもよるなと俺はどんなことをするのかと聞いた。


 「私はね、ホムンクルスを作っているんだけど、その生成過程で魔力が必要になるんだよ、君の話では必要な知識を集めるって事だったけど、利用するためのものだと感じたけど」


 嫌に確信を着く奴だと苦笑した。


 「ああ、俺は魔法使いみならいみたいなものだ、忌々しいがな」


 「ほう、魔法使いか初めて見るよ。なら話が早い。」


 「いや、俺には」「みなまで言うな」


 じゃあ、私の娘に合わせよう、と男は言った


 「はっ?」


 水晶の中に少女が眠っていた。

 年端もいかない、5,6歳の女の子だ。

 純白の長髪で肌が透けるほど白い。

 これが人工的に作られたものだというのなら、あの世界ウツミの常識で考えれば、クローン体の実験は途中経過しか知らない。だから、人工的に作ることの出来る生命という点では明らかにこちらの方が上だと確信するが、この少女一向に目覚める気配が無い。


「君は普通と違うね……。」


 エドガー何気ない一言をルナルに言った。

 それを聞いたときどういう意味か、俺には答えられない。

 自然と質問で返した。


「何がだ?」


「こんな実験は非人道的とか倫理に反すとか言うやつも居るんだ。それに君はまだ子供なのに……」


「ハハハッ…ハハハッ……は、」


 笑い声が室内に響く、から笑いだが本心から笑っているルナルの姿があった。


「何を笑うんだい?」


「いやはや、この世界に来て初めてだ、本心から子ども扱いしてもらえたのは……」


 意味が分からないエドガーは首をかしげるしかない。


「倫理とはな、培うものではない、育み在るものだ。」


「人として在るべき行うべき道を思想と行動で示す。倫理はまともな奴の護用足しの理屈だよ」


「ほう、細かいことを言うね」


奇妙な絵図がそこには在る。1人は8歳の子供とヨレヨレの白衣を着た社会不適合の大人。

親子でもない分、対等に離す姿は、底知れぬ違和感があった。


「俺自身も経験がある。衝動と好奇心を満たすために全てを投げ打って挑むときもあった。」


子供の姿に何を見るのか、エドガー自信子供と話している感覚がなかった。


「思考伝う現在への好奇心、変化が生む変わり続けることへの好奇心、新たに求める未知への好奇心」


「全部同じことではないのかい?」


「そうだ、思考を好奇心で満たした変化を未来の未知に求める。一纏めにすれば人が変わり続けるために必要なことだ」


自信気に断言する姿は、子供の顔ではない。

ただ、倫理が劣る壊れた世界から来たものとしての一つの帰結だった。

戦争が日常になり、生活がそれに支配される。

これは、変化ではないと末期と過去ルナルは称えた。

人殺しが日常に組み込まれると言う事は種族なんて垣根端く殺し合いをしていくことでもあったからだ。


「まぁ、小難しいことはまた今度にしよう。」


そう言ってエドガーは臆面もなく話を切った。

エドガー自信分かる思いがあった。この研究を確立するために、他貴族が助力していることに何か裏があると感ずいての事だ。

それにこのルナルがかかわっているとは思わないが、自然と警戒が強まったのは確かだ。

だが、好奇心とは面白い言い方をするとエドガー自身思っていた。

自分自身もそれを求めてこの研究に携わったのだから、


「君になら、よさそうだ。警戒していたのが馬鹿みたいにね。」


「何がだ?」


「このホムンクルスは特別制でね、竜の血脈に連なる者なのさ。」


「竜族だというのか?」


「いいや半竜ってところだろうね、魔族と竜族の混血児、魔竜とでも言えばいいかな。」


「ちょとまて、この世界にいる種族に魔族なんているのか?」



「ああ、表ではいないとされている。だが、大陸北部の森にその集落があると言われ俺はそこまで旅をして細胞を採取してきたのさ」



負い目があるのか、顔をふさぎながらエドガーは言った。



「といっても、貰ったの女の子なんだけどね、何故か体の一部分を提供してくれといったのに長くて美しい髪をバッサリと切って俺にくれたんだよねぇ……居た堪れないよね?」



 確かにそれは重い、見ず知らずの男に髪をそんなに容易くやるとは魔族とそこまで馬鹿なのか単細胞なのか純粋なのかわからん種族だ。

まぁ、実際いくことになる場所だ。よるかよらないかはそのとき決めよう。

今はそれより間近かからの水晶を観察する。

正面からは氷のようにもやが立ち上っている。

氷結の魔術で全身覆っているのだろう。クリスタルはケースに過ぎないらしい。

俺はゆっくりと水晶に触れてみた。

やはり、冷たい。氷を思い起こさせるくらいに、


 -ああ、来てくれた私の主様-


それは脳内で響く、鈴の音のような女の声。


「な、なんだ」


俺の動作に何かを感じたのか、エドガーも言わずにはいれない。


「何か感じるのかい?」


「ああ、頭の中で声が聞こえる。」


包み隠さず言ったが、エドガーは笑みを返すばかりだった。



-我が名をくだされ-



-我を、我を支配できるのは同輩のみ-


ー我が名を、我は我が名を付けしモノに従うー



「エドガー先生?これはどういうことだ。」


ルナルの視線は既に少女ではなく、事の成り行きを見守るエドガーに向けられた。

その瞳は穏やかだ、手には給金の入った袋を持ってそれを俺に投げてよこした。


「やはりね、上質な魔力を精製できるものすなわち魔法使いこそが、本来の主足りえるわけか」


「おい、エドガー」


「いやね、君の言葉で目が覚めたよ、だからこれに名前をつけてくれないか?」


おいおいと俺は、どういう理屈でそうなるのか知りたかった。

いきなり研究品を俺に渡すとか、意味の分からない錬金術とはそこまで無駄にしていいものなのか?

俺なら作ったものを他の野郎に渡すなど、死んでもごめんこうむるが、だが、このやり取りには覚えがあった。

作ったものの未来が壊れているのなら、その道理も覆る。なら、それだけやばい目的のために作られたものだということだ。

次のエドガーの言葉で明らかになった。


「この子は戦争の兵器として作られた。いや作ったんだ。」


「なら、どうして俺に預ける?こんなどこの馬の骨ともし分からない貧弱な子供に」


「君は死をよく理解している。そんな者は今まであったことがない。金に汚い家族、裏切りを繰り返す貴族は今日この子を引き取りにくるんだ。

 そして名をつければそれで終わりだ。この子は死神となって人殺しをしてしまう。」


 決まっていることだという理屈は同時に否定したいとルナル自身は思ってしまう。

 他人の運命に善性がなくとも、そこに意味を見出して無視するということもできる。

 だが、人殺しに意味はない、いや、種族全体で見ればどうともいえないが、それでもこの幼い少女を道具にされるのはさすがに気が引ける。

 そうして、切羽詰ってギリギリになって話しかけたのは見定めるためか…と俺は考えた。

 なら、仕方がないと俺は背負うことにした。


「分かった」


 そうして俺はなを付けようとしたが、ドンと大きく戸が蹴破られた。

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