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第009話_急転の門出、魔法使い_後編

ちょこっと改定。

拙い文章ですが、お付き合いください。

 

 

 意思の自由を取り戻したかった。

 わがままな言い分だろうが、なんだろうと俺は俺の意志を貫かねば終わる。

 何が終わる、と言われれば人生がと答えよう。

 ルナルは自身に課せられた思いに真っ向から立ち向かう。

 

「あの、辞退させてもらってもいい……」


 ひどく情けなく言ってしまったのは空回ったわけでない。

 

「ちなみに拒否権はない。」

 

 だが、母は断言してくれた。

 どうやら判断がついて俺に資格有りとしているようだった。

 状況は逼迫して俺に結果を押し付けるようだ。

 

「いい加減にしろや、母親?」

 

 ドヤ声で言ってみて、母の一睨みで萎縮する。


「いい加減にしてくださいますか?お母様」

 

 小さい小動物宛らの愛らしさを出してみた。

 意地や尊厳を捨て去っての捨て身の攻撃だ。

 長い黒髪と上目使いの絶妙な角度。ルナル自身の容姿が中性適なのもあっての攻撃。


「グハッ!?」と母は片膝をついた。


 まだ終わらぬ、終わらんよと意味不明なことを言って立ち上がった。

 

 もうこれは母の中では条件を満たしているらしかった。


 王位に当てるための条件を満たす、と聞こえはいいがルナル自身はオタ趣味に走ったのみだ。

 改めて、考えてみると俺は現在8歳の子供だ。

 精神年齢は大人のそれだが、肉体的には魔動騎士すらまともに扱えない未熟者。

 

「王戦」とはどういったものか、具体的な記述がそういえばあったのを思い出した。

 

 魔動騎士による一対一の決闘だったことには僅かながら気持ちが弾んだ。

 アスガルドの魔動騎士の歴史は実は浅い。貴族間で骨董品としての扱いが多かったほどだが20代目国王が決闘に用いたことから話は変わった。

 娯楽としての付加価値とその純粋な強者を決める戦いと、巨人の戦闘に魅せられた王は、貴族、民間を問わずの決闘に賞品を用意した。

 戦闘狂(バトルマニア)だったのか初代国王はと、そのときは馬鹿にしたが、その賞品こそが、

 

 王位資格が与えられると言うものだったのを忘れていた。


 本来有り得ない報酬は王の権限で実現した。


 というより、他の貴族の思惑もかんで一層催しに拍車がかかった。

 

 庶民から貴族。

 貴族から王へ。

 貧民層から見たら願ってもない資格。

 貴族なら誰もが抱える欲望の頂。

 それが、この国の破綻を呼んだ(まつりごと)かと今更ながら、あきれ果てた。

 万事飛んだ王様の愚作、富むことで暇をもてあました貴族の遊び。

 

 そして、これに民間が絡むことはない。

 

 なぜなら、魔動騎士で戦うと言うことは、魔動騎士が必須で魔術師であることが絶対条件だからだ。

 平民に魔術を使えるものはほとんどいない。

 肝心の魔動騎士などは、骨董として扱われていたほどだ、その価値も貴族間でしか取引されないほどだったという。

 他国が介入すれば、自国の兵を送り込み勝利させ国を乗っ取る事もできそうだが、それをねじ伏せる形で今の軍事国家があるのだ。

 自国間でのみなら誰でも王になれる制度と端からはそう見えるが、魔動騎士を所有する民間人等はまず居ない。

 今更ながら、おれ自身、生まれた時から乗り手として訓練した熟練した魔術師に勝てる自身は毛頭ない。

 

「母上、実際問題、経験から言えば俺には勝ち目はない」

 

 もう少し時間と歳月があれば可能かもしれない。

 しかし、この未熟で頼りない華奢な体躯は、運動にも適しているとはいえない。

 はっきり言うなら、俺はこの世界でも乗れるほど、今は力がない。

 

「だから? 私が何のためにきたと思ってるの?」

 

 エルヴィン、魔法使いたる少女は会話を遮る。

 何処から自信が来るのか、その傲慢さは賞賛に値する。

 母は彼女が苦手なのか、直視することを避けて事も無げに言った。

 

「私が訓練させたいのだが……。」

 

「無理よ、今一刻の猶予もない。貴方が逃亡して私たちの立場も悪くなる一方」

 

「なら、魔術師として育ててもそこで終わりよ、だから現在最も育てられる場所に連れて行く。」

 

「な、勝手な言い分は認めない。第一、私はお前を刺客としても疑っている。」

 

 絶対に認めないとする母はかなり焦りを見せていた。


「それなら、最初に行動してるって貴方も気づいていたでしょうに」


「疑うなら、私たちの組織名言ったほうがいいかしら?」

 

 これでわかったことがある。

 彼女こそが、王政復興をなさんとする組織の一人。

 目的はルナルを魔法使いという規格外に押し上げるつもりらしいこと。

 そしてその組織は母の昔居た組織だ。

 ルナルはさしずめ祭り上げる旗頭にして反旗を翻すためのお題目。

 正々堂々と制度を使い奪う事を狙いながら、何かをたくらんでいるのだろう。


「ほら、沈黙している時間はないわ。私は魔法使い、誰にも縛られないけどあの人が言うから使者なんて役目引き受けたのよ?」 


「ぐっっ」

 

 何故か母が追い詰められていた。

 ルナル自身、成り行きを見定め、否定したい気持ちでいっぱいだが、次の言葉で答えは決定した。

 

「同盟を結んだ、ルフランに申し訳が立たないわ。」

 

「ルフランにいくのか?」

 

「ええ……。そこで師事してらう先生に預け、然るのち、王戦に出場してもらうわ。」

 

 ルフランと言えば、魔動技術の大本にして宝庫、そこから得る知識、経験と使える物資の魅力は他を措いてない。

 魔術を使うための基本コードそれすらも、閲覧できるかもしれない。

 魔動騎士の量産すらなし得る国だ興味が尽きないのは当たり前であり必然だ。

 キラキラと目が輝きを取り戻した。

 偏りのある思考は、自然と口を開いた。

 

「いきましょうっ!!!」 


「何故だ、ルナルっっ!!」


 反射的に母は叫んだ。

 すまないとは思うが、親の心子知らずを地で行く。

 無視するルナルは欲望に忠実だった。

 

 目的と一致した話を二つ返事でOKする。


 判ってると自分で自分を肯定する。

 魔動騎士の技術は手に入れなれば、そしてカスタムせねばと強く心に刻みこむと言う欲望で満たされた肯定だった。 


 暴走しこのときは思慮が飛んでいたことは否定しない。

 

 迷いはなかった。

 国……? 奪還してやる。

 敵……? 蹴散らして、地に沈めてやるし命はやらん。

 

 だから、母よと先の返事を今しようと視線を合わせ微笑んだ。

 

「拒否権がないといったのは母上ですよ?」

 

 母はとうとう壁に寄りかかった。

 心情と簡単に決意をあらわにした息子にかなり動揺したらしかった。

 実際の所、欲望優先の簡単な思いなのだが、母は真摯(しんし)に受けたと信じたらしい。

 それほど息子を特訓したかったのかと妙な怖気が走るが、実際は親馬鹿の執着なのだろう。

 ルナル自身、母を支えたいという気持ちも少なくはない。

 だが、目的を蔑ろにする理由はない。

 それが根幹をなす存在理由だからこそ譲れない。

 

「話は決まったわね。じゃあ急いでつれてくわ」

 

 彼女の影が、沸き立つようあわ立つ。

 

「そんな、待ってくれルナルを連れて行かないでくれ……。」

 

 ベットから抜け出して、そんな彼女にルナルは抱きついた。

 

 自分からそんなことをしたことはないし、彼女が片時も目を離したくない理由もなんとなくだが理解できた。

 それが慰めにしかならないと知りながら、別れをルナルは決意しいる。

 見定めていながら、彼女に手放す気がなかったのだとルナルは知っている。

 何と言う親ばかで愛情深い人だろうことも。

 息子を見定めたと言う母を誇りに思う、それは子供との別れの言葉でもあるからだ。

 

「大丈夫だ、俺の帰る場所はここだ、絶対に帰ってくる。」

 

 その言葉に少しは安心を感じたのか、表情が柔らかくなった。

 この変化は見慣れていた。

 彼女の素顔だ、軍に居たころにはない結婚し短い間で築いた微かな普通の証。

 

「本当に行ってしまうのね。」

 

 命令口調と断定口調がない母としての姿。

 

 これも暫く聞けなくなる。

 

 過去、あの世界では親を知らなかった。

 

 信じるものも希望も持てなかった。

 

 今は少しだけ、残る形の絆を得た。

 

 だから、本来の願いだけは叶えよう、彼女が「苦渋」を見せた唯一のことを主命として。

 

「大丈夫だ、母上、必ず帰る。1人にはさせない。」

 

 そうして一歩引いて、エルヴィンの居る影に足を踏み入れた。

 小さな声で、彼女に言った。

 

「やってくれ」

 

 彼女がどんな魔法を使うのか知らない。

 だが、それはここに進入したことと逆をなすモノだろうと推察できた。

 影が俺を飲み込んでいくが母は笑って見送ってくれている。

 

「いって来ます。」

 

 初めて言った言葉にルナル自身驚いた。

 過去、あの世界には家族も帰る場もない研究所の職員として自分はあった。

 そんな奴にこんな言葉を吐いた記憶も相手が居たはずもない。

 今更ながら俺はこの箱庭が好きだったらしいとルナルは気づいた。

 目に焼き付ける風景を最後まで捉え続ける。




 

 そして、影はルナルの視界を奪い、暗闇に引きずり込んでいった。





 

 急展開な門出だが、ルナルにとってはいい頃合なのだろう。

 しかし、危ぶまれることも多分にあった。

 ルナルはこれからこいつを名前でも役職でも呼ばないと誓いを立てる。

 コイツが隠した目的が多分ろくでもないものだと推察できたしルナルの直感はよくあたった。

 悪意を隠そうとしない、母が入るまでの姿は魔女。

 存在も有り方もそのもの、だから俺はこいつを名前では呼んでやらないつもりだ。

 不可思議と相対するための安全策だ。

 子供みたいな強がりだが、今は実際に子供だしそれも許されるだろう。

 かかわらずに居れば幸いだが、事を選ぶ権利を行使するようにエルヴィンがルナルに話しかけてきた。

 やぶへびだが仕方がない。

 

「ふふ、親孝行な息子ね……。」

 

「いってろよ魔女」


 

 こいつ等に気を許してはいけない。

 転生者と看破する魔女は真実を握る側にあるからだ。

 悪いようにも、良いようにも言いくるめることができる側にこいつ等はあるのだから

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