翻弄される運命の中で
Prologe
何も知らないまま。 。ままいなら知も何
何も知らされないまま。 。ままいなれさら知も何
何も知ろうとしないまま。 。ままいなしとうろ知も何
何も知ってはいけないまま。 。ままいなけいはてっ知も何
何も知ることが出来ないまま。 。ままいな来出がとこる知も何
何も知らすことが出来ないまま。ままいな来出がとこすら知も何
何も知ることが出来ないまま。 。ままいな来出がとこる知も何
何も知ってはいけないまま。 。ままいなけいはてっ知も何
何も知ろうとしないまま。 。ままいなしとうろ知も何
何も知らされないまま。 。ままいなれさら知も何
何も知らないまま。 。ままいなら知も何
寄り添って。寄り添われて。
難から逃れた1人の少女は、孤独の海をさまよいもう1人の少女と出会う。
新しく見つけた少女は純粋で、どこにも付け込む隙がなくて、だからこそ残された少女の心を揺さぶった。
どうにか見つけた少女を利用しようとして、そのたびに壁に阻まれ、純粋な少女は残された少女に寄り添って、残された少女はその隙を見つけて、付け込んで、また阻まれて、追い出され、純粋な少女はまたより沿ってきて、残された少女は諦めて、他の道を探して、純粋な少女はその道探しを手伝って、道が見つかって、残された少女が行こうとすると、純粋な少女はそれを止めて、残された少女が一緒に、というと、純粋な少女は首を横に振って、残された少女が立ち去ると、一人純粋な少女は、目に涙を浮かべた。
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「ねぇチーちゃん、何で刺されちゃったの?」
「優等生のチルルが気にすることじゃないよ」
白いベットの上で寝転んでいる、小学校のころの友達のチコに向かって、チハルは心配そうに声をかけた。
「こんなことになるぐらいなら、あたし、受験しなかったほうが良かったのかな・・・・・・」
「だから気にしなくていいって」
「だって・・・・・・、庄月中って悪い話しか聞かないよっ!もしチーにこれ以上悪いことがおきたらって思うと、あたしすごい心配なんだからっ」
「うちはそこまでヤワじゃないよ。安心していいって」
「無理だもん。ねぇチーやっぱり受験しない?編入生としてうち学校にはいるの」
「だからさっきから何回も言ってるじゃん庄月中からは離れないって」
「なんで?恋なの?」
「恋愛関連じゃないからさ。もっと深いところで理由ってのはあるんだよ」
「チーのおうちってお金持ちだし、私立に入ってもチーの頭だったら何の遅れもとらないよっ」
「そうゆぅことじゃないって」
「だって・・・・・・、友達刺して自分も刺して、そんで自分だけ死んじゃう人がいる学校なんて・・・・・・」
「えっ?ヒノ・・・・・・、死んだの?」
「うん。さっき警察の人が話してるの聞いたもん」
「そぅ・・・・・・」
「何でそんな悲しそうな顔するの?!だってチーを刺したやつだよ逆に喜んでもいいぐらいじゃんか」
「でもさほら、やっぱ親友だったわけだしさ」
「親友を刺すの?ナイフで?」
「・・・・・・」
チハルは知らなかった。
今、目の前にいるチコこそが今回のこの状況を作った張本人だという事を。
チコは知らなかった。
目の前で自分に話しかけてきているこの友人が、チャットで「チハル」と名乗っている人物だと。
「そんな刺したようなやつを親友呼ばわりなんて絶対にしちゃだめだよ!チーちゃん」
「でも・・・・・・」
「この前学校を爆破した人だってチーの友達だったって聞いたよ」
「ゆーちゃんはホントいいやつだったよ。爆破なんてしなけりゃね・・・・・・」
「だからそう言うこといっちゃダメだって!チーちゃんはきっとそういう悪い人たちに騙されてるんだよ」
「そうかもしんないね。でも、うちにとっちゃ大事な、大事なダチだったのさ」
「もぅ、だからさぁーッ。それに県民サイトでもさ、庄月中は悪いってもっぱらの噂だよ」
「ん?県民サイトって?」
「知らないの?」
「なにそれ?」
「みんな使ってるのに。今度チーちゃんにもアド教えてあげるからさ、来てみなよ」
「それってさ、チャットとかあるの?」
「あるよある!ねぇ、そしたらさ、また小学校の時みたいにいっぱい話そうよ」
「わかった。でもホント、ネットって便利だよね」
「分かるそれー。どんなことも出来るしさ、ネット上に情報保存したらどっからでも引き出せるしね」
チハルは、あくまで自分の友人の身を心配しているつもりだったのだが、それより前に、チハル自身の身を心配しなければならないのだとは、予測も出来なかった。
チハルの中ではチコは彼女の友達に騙されて、その巻き添えを食らったのだという考えしかなかったのだ。その逆の考えなどは、頭の中をよぎりもしなかった。
つまり、チコがチコの友人たちをそそのかして、学校を爆破させて、自殺に追い込んだりしたという考え、チコ自身の趣味で、学校を地域的に崩壊させるということの一環で、自分を刺させたなどという考えは。
チハルは知らなかったのだ。今目の前にいる友人の本性を、今までどんなことをしてきたのかも。
チャットルーム
―チハルさんが入室しました。-
チハル:こん
陽炎:こにゃちゃー
ボブ大王:ごきげんよぉう~~
翔灯Mk.2:ばんはーっす
チハル:陽炎さん、いま夜ですよw
チハル:こにゃちゃ―はないでしょ
陽炎:翔灯さん、で、この前どしたんですか?
チハル:無視かいっ
ボブ大王:陽炎さんはそうゆぅ人ですから
チハル:しょうがないなぁ
陽炎:なんかものすごいイラッとくる気がするんだけど無視無視。。。
チハル:無視できてないよぅw
ボブ大王:だねwww
翔灯Mk.2:あぁ~この前ねぇ~
翔灯Mk.2:なんか急にアク禁されたみたいでさ
陽炎:マジか
翔灯Mk.2:IDもきえてたし・・・・・・
チハル:ぁ、話し変えた
チハル:陽炎さぁ~んえww
ボブ大王:それはそうとしてそれどういうことっすか?
ボブ大王:アク禁でID抹消て
―翔灯Mk.2さんが、悲劇の王子様に名前を変えました。-
悲劇の王子様:それがさ、よくわかんないんだよね
悲劇の王子様:もしかしてあの情報管理者にとって都合が悪かったのかも
チハル:でもさー、それって管理者があのチャット見てたって事だよねー
ボブ大王:もしかしてこの中に?!
悲劇の王子様:Quietさんだったりして
陽炎:いやいや、そこは意表をついて初心者らしき
陽炎:ヒノっぴさんでしょ
ボブ大王:案外今いる面子の誰かだったりして
チハル:きゃー
悲劇の王子様:でも管理者って庄月中生みたいだよ
陽炎:え
チハル:はぃ?
ボブ大王:じゃぁやっぱりヒノっぴさんだ
陽炎:いやそれどころじゃなイッショ
チハル:怖いぃいいいいいいぃ!!!
ボブ大王:退会しよかな
陽炎:でもねぇ・・・・・・
悲劇の王子様:でもさ、アカウント製作んとき
悲劇の王子様:住所とか別に打ち込んでないから
悲劇の王子様:大丈夫っしょ
チハル:そかなぁ
ボブ大王:むーん
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私のイチ
寄り添って
「もぅー、チーちゃんってば、なぁんにも分かってないんだから」
大声で独り言をいい、チハルはボフっとベットに飛び込む。
大の字になった身体を、寝返りを打って横にした
ピンクの縞々のねまきから、肌色の絹のような肌が見え隠れする。
そして、またつぶやく。
「なんで庄月中なんかがいいんだろ・・・・・・?」
自分の両手を見ながら、チハルはベットの外に足を出す。
そのまま、よたよたと立ち上がり、机の前の椅子に座る。
明るくなり始めたディスプレイに、ねむそうなチハルのかおがぼぉっと映る。
完全にコンピューターが起動した後で、椅子の上で眠りかかっていたチハルはマウスに手を伸ばす。
メールのウィンドウを開き、アドレスブックの中から小学校由縁の友達のアドレスを引っ張りだす。
長々とした文章とともに、県民サイトのURLを貼り付け、メールの送信ボタンを押す。
メールが送信されたことを確かめてから、チハルはまたよたよたとベットにもぐる。
上ブトンから、指と顔だけをちょこっと出して、チハルは今日最後の呟きをもらす。
「チーぃちゃんっ」
眠気に飲まれて、チハルは暖かなフトンにつつまれて、スーピーとかわいらしい寝息を立て眠り始めた。
チハルのメール
宛先:Espeloth@yahoo.com
件名:チコー、久しぶりのメールだよぉ~
内容:チコ、ばんはっ!
今日さぁ、病院で話したこと考えてくれた??
私のいる学校に編入するッて話
チコはいやだっていったけど
私は諦めないからねッ
チコの傷が完全に治って、安全になって
これから何もないようになるように、
私、何度でも言い続けるから!!
チコがどうしてもいやってならしょうがないけど
(((((((それでもいい続けるけどね
なるべくチコに害がなくなるように
庄月中にいても安全になるように
私、頑張るからッ!
ぁ、それと今日言ってた
県民サイトのURLはね、↓
http://kenminsan.jp/
だよw
こんな夜遅くにごめんね
それにチコ病院にいるから
このメール見るのいつになるかわかんないけどさぁ、
見たらすぐに返信してねっ
チコの親友のチハルより
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県内某病院にて
「チルルってさぁ、ダチとしてはいいやつなんだけどねぇ・・・・・・」
月明かりの下、白いベットの上で彼女はつぶやく。
「なぁんかピュアの純度がたけぇっつぅか、天然っ子っていうか」
明るいディスプレイの中に映るメールを見て、彼女はため息をつく。
ごろんと大の字になって窓の外に浮かぶ月を眺めて彼女はまた呟きを漏らす。
「とにもかくにも、うちの手伝いはしてくれそうにねぇんだよな」
このとき彼女は決めた。
そのメールの内容を見て、彼女の趣味に付き合ってくれそうにはないと判断した彼女は、チハルを利用する事を諦め、他の方法を探し始めた。すなわち、チハルを間接的に利用して他の誰かに彼女の手伝いをさせる、彼女の趣味につき合わせるという方法を。
メールの返信もせずに彼女はPCの電源を落とすと、薄く自虐的な笑みを浮かべた。
「チルル」
最後にそうつぶやいて、彼女は眠りについた。
運命を操ろうとし、それがままならない彼女の苛立ちは、彼女の親友に当てられたものではなかった。親友の運命すらぞんざいに扱えない、自分自身に向けてのものだった。
「残念だけどさ、そう上手くはいかないんだよ」
自分自身に言い聞かせるようにして、その彼女の寝言は夜の闇の中へと吸い込まれていった。
暗い個室の中で、彼女は今日もひとりで生きる。
それが一人なのか、それとも独りなのか、彼女には判断のしようもなかった。
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県内某所
「チコちゃん、あなたのことはわかってるんだからね」
闇の中に、一人の女性がいる。
彼女の前には明るいPCの画面。
「知らないふりして」
彼女の周りを取り巻く雰囲気はどことなく邪悪で、その目は憎しみと恨みに満ちているように見えた。
「あの子を殺したのは」
その人に、闇の中から現れた男性が声をかける。
「許せないんだよな」
「もう、勝手に部屋に入ってこないでっていってるでしょ」
「いいじゃないか」
そういって、その男性はPCのキーボードに手を置く。
女性の目には、先ほどから一つのサイトの画面が映っている。
「じゃあ、チャットは任せたわよ」
そういってその女性は部屋を後にした・・・・・・・・・・・・
残ったその男性は椅子に座ると、キーボードを鳴らし始めた。
「翔灯」それが、そのサイトでの彼らのIDだった。
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あなたのにィ
寄り添われて
翌朝、目が覚めるとチハルはチコの元へと電話をかけた。
「チーちゃん、お・は・よ」
『もぉー、朝っぱらから何?』
「別にぃ」
『ホントにもぉ』
「ねぇ、チーちゃんに聞きたいことがあるんだけどさ」
『何?』
「病院てさ、パソコン使える?」
『うぅん、えと、ロビーに一つある。それだけ』
「じゃぁチーちゃんは使えないわけね」
『そうだよ』
「なぁんだ、ちょっと残念かも」
『つうかさ、いま朝の7時なんだけど』
「だから?」
『・・・・・・、ちょっとはさ、人の都合とか考えたことあんの?チハルって』
「むぅーん、いっつも考えてるよ」
『じゃぁさ、この時間にもっと寝ていたかったけど、頼んでもないモーニングコールに無理やり起こされたうちの気持ちも考えてたっていえる?あんた』
「チーちゃんは別だよー」
『そういうことならうちもチルルに逆贔屓しちゃる』
「もぅ。やめてー」
『冗談』
「わかってたもんねぇ」
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電話を切った後、チハルは暫らくベットの上でごろんとしていた。
またしばらくしてよちよちと立ち上がったチハルは、スプライトのねまきを脱いで、薄い黄色のシャツと、ダークグリーンの上着を着ると、部屋の外へと出て行った。
そこで、ズボンがまだねまきだったことに気が付き、急いでスカートをはくと今度は家の外に出て行った。
今日は土曜日。
特に何にもなくて暇だが、チハルは、チコの病院にいって暇つぶしをしようと思っていた。
バスに乗って、病院に向かう。
チハルは、チコという友達のことが、他の誰よりも大切だった。
病室の前について、チハルは一つ、深呼吸をする。
「チー、また来ちゃった」
「暇だっただけの癖に」
「もー、毒舌家ぁ」
「なんだ、図星?」
「それはそうだけどぉ、チーのことが心配だもんねー」
「じゃあさ、そんなに心配ならもう少し寝かせてくれないかな」
「なんでぇ?」
「朝チルルが電話かけてきてから眠れてねぇんだよ。頭が痛い」
「そんじゃぁ寝てていいよ。寝顔見といてあげるから」
「落ち着かないなぁ」
白い扉を開け、白い病室の白いベットの中にうずくまる友人の姿を見てチハルは安心をする。
チハルは、チコにもっとかまって欲しかった。
チコと、もっと話していたかった。
だから、いつかチコにそうしてもらえるように、せめて自分はチコによりそっていっているのだ。
寄り添って欲しい。
寄り添われて欲しい。
もっとチコに近づきたい。
自分より、何もかも出来るチコに対して、チハルは憧れを通り越してある普通ではない感情を持っていた。
その感情は、チコと関わっていても壊れない。それに対しての代償かもしれなかった。
チハルは、チコに、愛情、という、感情を、抱いて、いた。
歪んで、本来別の人に抱くはずのその感情を、チハルはチコに対して抱いてしまってるのだ。
寄り添われて、寄り添って。
寄り添って、寄り添われて。
チハルの中で、チコに対する感情は遠い昔に芽生えて、いま少しずつ成長していっているのだ。
その感情が極限まで成長しきったとき、チハルは崩壊の道をたどるのか、それとも別の道を見つけるのか。
それは、チハルには見当もつかないことだった。
チコがチハルを壊せない理由。
それは、とうの昔にチコによって、チハルが壊されているからだったのかもしれない。
そんな中、二人の少女の生活は続く。
どこまでも歪に絡み合い、歪んで、お互いを自らのものにしようとし、どこまでも平行線上をたどる。
絡み合った歪なその平行線は、現実にはありえないその形とともに、今日も少しずつ延びてゆく。
その先の運命は、誰も、知らない。