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集結した崩壊を進んで  作者: 美紗埜 穂美
少女たちのその運命は
3/7

その道はずっと続いて

prologe


 歩こう。

 生きよう。

 進んでいこう。

 その道の先まで。

 

 向かおう。

 見つけよう。

 創っていこう。

 新しい未来をその道で。

 

 探そう。

 集めよう。

 表していこう。

 自分自身のその存在を。


 果てしなく遠く続くように見える彼女の人生は、ある一人の少女に変えられる。

 その道は途切れ、新しい道が拓ける。彼の人生は一度終わり、また新たに再出発する。

 崩壊した日常が新しく始まり、1人欠けた生活を送る。


 歩こう。

 生きよう。

 進んでいこう。

 その道の先まで。

 

 向かおう。

 見つけよう。

 創っていこう。

 新しい未来をその道で。

 

 探そう。

 集めよう。

 表していこう。

 自分自身のその存在を。




 

                 創ろう。

                新しい道の先に、

               その先の手前の中に。

              まだ見ぬ新たな自分自身を。


________________________________________


 カタタタカタタ


 キーボードの音と共に、画面に文字が打ち出される。

 

 カタタタタタ・・・・・・・・・・・・

 

 彼女は自分自身の作ったページを再確認して、その綺麗な顔を歪めて薄く笑う。

 自県民専用のコミュニティページをつくり、自分の学校の生徒以外に、ページの噂を口コミで広げていった。

 彼女が2年間かけてやってきたことが、今、完成する。

 自分の県をネットで一つにつなげ、自分の学校をその輪の中から排除するという事が。

 

チャットルーム

―Quietさんが入室しました。-

Quiet:どもーこんちゃー

―チハルさんが入室しました。-

チハル:こん

翔灯:んちゃー(・ω・)

陽炎:ちゃー

ボブ(,/л\..):ごきげんよー

Quiet:皆さん聞きましたー?庄月中の噂ぁ

陽炎:あぁー、え、女子生徒の自殺のやつ?

チハル:あれさ、いくらガッコがやだからってさ、爆破とかやりすぎだよねー

ボブ(,/л\..):先生殺したって聞いたぜ

チハル:マヂか

翔灯:犯人の名前って確か友美だったよね

陽炎:え

陽炎:友美て前ここの掲示板顔出しとったぞ

チハル:へ?ヤバくね?

陽炎:ま、2,3回ぐらいだけど

―ボブ(,/л\..)さんが名前をボブDXに変えました。―

―ヒノっぴさんが入室しました。-

チハル:こん

翔灯:ちーっす

Quiet:こんちゃー

ボブDX:ごっきげんよぉー

陽炎:んちゃー

ヒノっぴ:こんち^^

ヒノっぴ:あ、庄月中の話ですか?!

翔灯:そぅそぅ、爆破、殺人、募金詐欺。ありとあらゆる分野に手を染めた凶悪犯Yさんについて。っってな感じなことをちょうど今話してた最中っぅすw

ヒノッぴ:でもあれ犯人の人最終的に自殺したってことは自分の行いを悔いたんでしょう。そぅ責めたらかわいそうですよ

ボブDX:そういえばこのサイト、掲示板にもチャットっとかにも庄月中生だって言う人いませんね

Quiet:ってゆうかいたらなんかこワイよね。。。。。。

陽炎:だねぇ

チハル:庄月中生て悪い噂しか聞きませんしねー

Quiet:やな学校です

ヒノっぴ:そんなことないって、いいとこもあるよ

翔灯:え、なんで

Quiet:もしかしてもしかすると庄月中生?!

内緒話toQuiet ヒノっぴ:なんで庄月中のこと悪くしか言わないのよ?

内緒話toQuiet ヒノっぴ:そんなに庄月中のこと嫌いなの!?

ヒノっぴ:むぅ!うるさぁ~い!!

ボブDX:怒らないでww

ピノっぴ:怒ってませんよ(メ―л―)

翔灯:でも庄月中ってなんか近寄りたくないなぁ・・・・・・

Quiet:だよねー

ヒノっぴ:もーぉー

     ・  

     ・  

     ・ 

     ・   

     ・

     ・    


________________________________

   いちぃ

   崩壊



「チコ」

 急に聞こえてきた自分の名前を聞いて、彼女は振り向く。

 くるんとカールした彼女のツインテールの髪が、ふわっと揺れる。

「なぁに、ヒノぉ?」

「分かってるくせに。Quietとか名のちゃって」

「なんのこと?」

「そりゃぁさ、ゆみがあんなことして私だって嫌だよ。でも、でもだよ、だからってあんな酷い噂流すことないじゃん。掲示板見たよ。なんなのあれ?酷すぎない??」

「ゆーちゃんが死んだ当てつけなんかじゃないよ。もうずぅっと前からやってるの」

「私にあそこのアド教えたのは何で?」

「それは当てつけ」

 ふふっ、と彼女は笑った。

「わたしの日常はゆーちゃんに壊されたの」

「だからって、何であんなことしてんのよ?!」

「切れちゃ、いけないよ。せっかくさ、ゆーちゃんが物理的に壊してくれたんだから、わたしは社会的にあの学校を壊すの。ゆーちゃんはさ、つまらなくて、自分で新しくしようと思ってやったんだろうケド、私は違うの。ただ単に面白そうだからやるのよ」

「ゆみのやったことが関係してないなんて嘘よ。だってチコ・・・、ゆみが死んでからなんか吹っ切れた感じだもん」

「ゆーちゃんがやったからわたしも急ごぅかなーって、思って」

「ゆみが死んだから、せめてその償いは私たちがしなきゃいけないでしょぅ?!」

「そぅかな?」

「そぅかなって・・・、あんたねぇ・・・・・・」

「いまさら辞めるつもりはないから」

「どぅでもいいけど、私は絶対に協力しないから」

「いぃよ、それで」

「・・・・・・」

 バィバィ、と手を振って、彼女は親友のもとを去る。

 部活も終わった、完全な放課後の学校で、彼女の友人は独り、とり残された。

 彼女とその友達との関係は、いま、この瞬間を持って崩壊した。

____________________________________________________


帰り道、庄月中の生徒を遠巻きにして歩く人々の姿をみて、彼女は自虐的な笑みを浮かべた。彼女の流した噂、友美が起こした崩壊、それらが地域の人々にもたらしたものはなんだったのか。今すでにこの時点で、庄月中は地域からの信頼を失い、崩れ行く道をたどっていたのだ。

 その道はずっと続いて、限りなく極限の綱渡りを続けて、もう誰にも止められないほどに、深く暗く延々とさまよい続けるのかもしれなかった。

 たった二人の生徒によって。


____________________________

  にぃ

  破損



 タタタタ・・・・・・


 ツタタタタタタタ・・・・・・


 カタカタタタタタツタタ・・・・・・


 夜の闇の中、彼女の鳴らすキーボードの音だけが響く。

 キーボードの光にさらされて、そのツインテールが光る。

 崩れていく学校に、彼女の両腕が更に拍車をかけて行く。

 彼女のカキコは、自らの学校を陥れ、暗闇のふちに連れて行き、もうどうしようもないほどに一人歩きを繰り返し、彼女自身の生活を破壊する。

 彼女は分かっていた。

 自分の親友だった友美があんなことを犯したのは、自分があの県民サイトのアドを教えたからだと。

 彼女はただ見たかったのだ。 

 もとから自分の学校を嫌っていた親友が、庄月中か地域からどう思われているかを知ったらどういうようになるのか、どう壊れていくのかという事を。

 結果、友美は死んだ。

 破壊し、崩壊させ、全てが日の下に表われ、その負荷に耐えることが出来なくなって死んだ。

 彼女はその友人の死を、悔やむどころか逆に嬉しくさえ思っている。

 自分が進めてきた学校の崩壊に、一気に拍車とかけてくれたその友人を彼女は敬い、冥福をささげた。

 自分の好きなように世界を動かし、学校を崩壊させ、地域をコントロールする。

 その快感から、もう彼女は、抜けられなくなっていた。

 

チャットルーム

―Quietさんが入室しました。-

Quiet:ばんちゃー

翔灯:ちっす(^0^)/

陽炎:ばんにゃ

チハル:こん

ボブEX:ごきげんよぉー

Quiet:またボブさん名前変えて・・・・・・

―ヒノっぴさんが入室しました。-

翔灯:ちわ(^0^)/

陽炎:ばんちゃーっす

チハル:こん

ボブEX:またまたご機嫌よー

Quiet:ばんにゃらー

―ヒノっぴさんが入室しました。-

―ヒノっぴさんが退室しました。-

陽炎:え?はぁ??

翔灯:何しに来たんだw

チハル:まぁ、あの人のことだから

翔灯:ヒノっぴさんて不思議キャラだよねー☆なんかさぁ世間離れしてるってゆうか、庄月中のこともなぁ~んか庇ってたし。もしかしてもしかすると庄月中生だったりして (((((キャー

ボブEX:あぁ~、前もなんかいましたしね

Quiet:犯人?

陽炎:ズバッと言うねー

―ヒノっぴさんが入室しました。-

チハル:あ、もどてきた

内緒話toQuiet ヒノっぴ:どういうこと?

内緒話toQuiet ヒノっぴ:ゆみにもここのアド教えてたの?

内緒話toヒノっぴ Quiet:うnwそだけど? なにか?

内緒話toQuiet ヒノっぴ:わかった。もぅいい

―ヒノっぴさんが退室しました。-

Quiet:ありゃりゃー

翔灯:神出鬼没のUMAヒノっぴww

ボブEX:なんかちょとずれてる気がする。UMAてww

チハル:荒らし目的なんじゃない?

陽炎:うわーズバッと言うねー                                 

チハル:Quietさんとお仲間ww                                

Quiet:ずばっと軍団w                                    

陽炎:www                                         

Quiet:でもあれどぅやって爆破したんかな~?                         

Quiet:そんな爆弾とか置いてあったら普通に気付くと思うんやけど                

翔灯:それってさぁこれじゃない?                             

翔灯:★←のリンクをクリックw                              

Quiet:え                                        

陽炎:なんすか?                                       

チハル:★になんかあるの?                                 

ボブEX:翔灯s、なんがあるの??                              

翔灯:もぅ、何でもいいからクリックしてよ~!                       

―ヒノっぴさんが入室しました。-                              

チハル:あ                                          

―ヒノっぴさんが退室しました。-                              

ボブEX:なんだたんだろ?                                   

翔灯:もぅ、とにかくクリックっ!!                            

Quiet:はぁい                                        

チハル:なにこれ?!                                     

陽炎:コイン型爆弾?!                                 

ボブEX:映画みてぇー                                    

Quiet:でも・・・、これ一個で壊せるんですか?                       

翔灯:1個じゃ無理だけどさ、何個かあわせて使ったんじゃないかな?               

Quiet:あ、なるほど                                     

翔灯:それにこれここ県民サイトの管理者さんが売ってるみたいだよー               

チハル:マヂすか

内緒話to翔灯 Quiet:どこで知ったんすか?コレ

内緒話toQuiet 翔灯;何も内緒話にしなくても・・・。今からみんなに言おうと思ってるからwちょとまっててねぇー

翔灯:Quietさんにコレをどこで知ったのかと訊かれたから答えまーす

翔灯:このサイトの自分のページってとこから

―翔灯さんが退室しました。-

ボブEX:・・・・・・。

チハル:え?なに?どゆうこと?

陽炎:嫌がらせ??

Quiet:あ、用事はいったから今日はこれでー

チハル:あ、^^ノシ

陽炎:おやー

ボブEX:じゃねーーw

―Quietさんが退室しました。-

  ・

  ・  

  ・

  ・

  ・

  ・


____________________________________________________


 

 PCの電源を落としてから、彼女は深々とため息をついた。

「ゆーちゃんだけにしかわかんないようにあの爆弾のサイト作ったのに・・・」

 もう、消去したページのことをバラされそうになって、翔灯を管理者権限であわてて強制アク禁にしたのはいいが、彼女は、どうしても引っかかることがあった。

「新聞にもでてない犯人の名前がゆみだって知ってたし」

 翔灯が誰か。

 それが今最も彼女の心を惑わしている元であった。

「まぁ、どぅでもいいんだけどもね」

 そういって彼女は再びコンピューターの電源を入れると、自分の作った県民サイトにアクセスして、「翔灯」というIDを見つけると、そのデータだけをコピーしてそのIDを削除した。

 そうしてまた電源を切ると、ベットに身を投げて、深い眠りについた。


______________________________________________________

「ってきまーす」

「はぁい」

 勢いよく玄関のドアを開け、彼女は学校に向かって駆け出す。

 チャリンコにまたがり、勢いよくペダルを踏む。

 昨日夜更かししたせいで、ちょっと寝坊をしちゃったんで、いつもは通らない細い近道の路地を通る。

 彼女は、その路地に入る角を曲がった。

 その直後のことだった。


 反対側から、彼女の元親友の姿が見えてきた。


 その少女の手には一本の銀に光る凶器が・・・・・・


 彼女はいそいでブレーキをかけた。

 だが・・・、間に合わなかった。


 

 衝撃


      激痛


           熱気

               

                ・・・暗転



 遠のいていく意識の中で、彼女は思った。

 また、イチからやり直し・・・・・・、なのかな?


 

 一丁のナイフを手に持ち、ヒノは泣き叫ぶ。

 零れ落ちた涙が血の上にかかり、滲ましていく。

 ヒノは、ナイフから手を離した。

「全部・・・、全部、チコのせいだったの?チコがゆみをそそのかして爆弾を売ったりしたの?」

 ヒノはケータイをポッケから取り出し、電話をかけた。

 

 110

 

 ヒノは、全てを覚悟の上に決めた。


 流れてくる血がヒノの足元を湿らし、その死をより色濃く演出しようとする。


 119


 彼女の身体が紅に呑まれ、自転車の上から転げ落ちる。

 あぁ・・・、崩壊だ。


 ヒノは狂い、かつて、友美がしたように哄笑した。

「アハハハハッハアアアハハハハッハハハ・・・ッハハハ・・・・・・ッ」


 数分後、救急車と警察が来て、彼女らの身体はその場所から消えた。

 紅い血のあとと、深い崩壊の傷跡を残して。


_____________________________________________________________


チャットルーム

―チハルさんが入室しました。-

チハル:ばんはー

陽炎:晩わーっす

ボブ君:ご機嫌麗しゅうございます

陽炎:いやー、最近ヒノっぴさんもQuietさんも翔灯さんも来ませんねー

チハル:ってUか翔灯さんはコイン型爆弾の謎を残したまま、あれいらい来てませんよねー??

ボブ君:なぞっていやぁ、あの爆弾のページ

ボブ君:履歴履歴から開こうとしても無理だったんっすよ

陽炎:えぇーマヂかよ

陽炎:せっかく買おうと思ってたのに

チハル:ヤバいよ、ヤバい

陽炎:でもホント庄月中って怖いですよねー

チハル:またのその話題か、まぁ確かにそぅなんだけどね

ボブ君:今日も、夕刊で生徒が生徒を刺したってありましたよね

陽炎:うんうん

チハル:えっ、二人とも新聞とか読んでるの?!えらーぃww

ボブ君:いくら児童保護法とかに護られてるからってなんでもやっていぃって訳じゃないんだよねー☆ってゆうか新聞ぐらい読めよ

陽炎:登校中に待ち伏せして刺したんだとか

チハル:恋の関係かなぁ~、怖いねーー

ボブ君:庄月中ってもぅほんと・・・、あれだねぇ

陽炎:うぬ。あれだよねー

チハル:あれってなぁにぃ??

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