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東京紀行

作者: センカク
掲載日:2026/05/17

 歯医者で用事を終わらし、私は、道中の食事であるあんパンを買う。

 22時に、岡山を出発し、父の運転で東京に向かう。

 白のミッションのハッチバックは、スムーズに進む。

 オートマが普通のこの時代に取り残されたミッションと還暦の父は、まだ生きていると元気いっぱいだと、きびきび動く。

 寝ている間に、鈴鹿に着いてしまった。

 Nがでかでかとあるオブジェをパチリと写真におさめる。

 諏訪湖が見えてきた。私達は、中央道を通って、東京入りした。新東名は、毎日22時まで働いていた父には、モンスターだったらしい。

 山梨県に入って、富士山も見た。その日は、絶好調の日に違いなかった。

 八王子で降り、青梅に向かう。

 青梅の農協は、いつもの梅が売ってなかった。父は、諦め売ってある梅を買った。青梅の梅は、一度、菌によって全滅したらしい。よくぞ、復活した。私は、そう思った。

そして、私と父は、お土産に青梅せんべいを買った。

 母と立川で落ち合った。母は、ほとんど白髪でますますひとまわり小さくなって行く母を、何も言えない不甲斐なさで、気にしないように、接した。

 私、母、父は、青梅街道に出て、晩飯を食べに行った。

 「ローヤルホストがあっただろ?」という父に、「いつの話ですか?」という母。割れ鍋にとじ蓋のようだなと思った。

 会話の中に、老いが節々に見えるのを、私は、ただただ、いつも通り接した。私は、自分の不甲斐なさに激怒した。

 母は、玉川上水で降りて別れた。

 父は、帰るぞと言った。

 その前に、小腹がすいたので、スーパーで、買い物をした。

 桃屋のめんつゆを買う父に、昔から変わらないこだわりを見て、私は少し安堵した。そして、子供っぽくかにパンを見てはしゃいで購入する父に、私は、昔かにパンを食べたことを思い出した。

 私は、寝た。

 父は、下道で、浜松を越え、名古屋に入った。

 湾岸長島パーキングエリアに入った。もう、6時だった。父は、何かと戦っているかのように、休みながらも、運転し続けた。ミッションの運転をとうに忘れ、「運転代わろうか」と、声をかける勇気がない私は、ただただ、座って寝ているだけだった。

 朝食を済ませ、私は、インスタントのスガキヤラーメンを購入した。私は、焼きそば弁当と同列で好きなご当地インスタント麺だった。

 父は、私の持っているスガキヤラーメンを目にして、「スガキヤラーメンといえば、ラーメンフォークでしょ」と、物珍しそうに言った。

 ラーメンフォークがあるらしいので、ネットで調べ、ラーメンフォークができた経緯を知った。

 そして、帰宅するまで、スガキヤの話をした。

 帰宅した。

 私は、馬鹿だった。私の知らないことばかりだった。特に、父は昔のことを懐かしむことなく言うのが新鮮だった。

 私は、中耳炎が治って、虫歯で歯医者に通っていること以外、現況を母に言わなかった。母は、もう私がお絵かきしてないことを知らなかった。私が、文章を書いていることを知らなかった。 

 でも、いずれわかるんだ。そう決意した。

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