第8話 拠点整備2
洞窟まで戻ってきたところで早速簡単な拠点の制作に取り掛かる。
3人いるので初日よりもスムーズに完成し、とりあえず夜を過ごす程度であれば問題ない程度はなった。
「一時的に休める場所はできたけど、嵐がきたらあっという間に倒れてしまいそうだね」
作っておいてなんだが、頑丈とは言い切れないのでもう少しどうにかしたいところだ。
一応計算上は大丈夫ではあるけど、さくらたちが自分の部屋を持ちたいと言った時に対応できない可能性がある。
「小さい部屋ですが頑丈だと思います。ちゃんとした建築はそのうちやりましょう。寝る場所も私も雛ちゃんもマスターの上で寝るので問題はありませんよ」
「あるじ様、もしかして1人部屋が良かった?」
「いや、そんなことはないよ」
小首を傾げながら不安そうに問いかけてくる雛を見ると男女分けたほうがいいのではとは言い出せなかった。
「マスターは色々と気にしすぎなんですよ。どれだけ一緒にいたと思っているんですか。ぽっと出の女性たちとは違いますよ」
「無駄なことを気にしてたんだ! 気にしなくていいのに!」
どうやら私の気遣いは全くの無駄だったようだ。
彼女たちの好きにさせてあげるべきだろう。
「それはそうと明日からのことです。まずは雛菊ちゃん捜索のために鈴ちゃんを呼び出しましょう。それから島の開拓をしつつ転移紋などがありそうな場所を捜索します」
「はーい!」
「雛ちゃんは引き続き物資の回収をお願いします。マスターは建築の続きと採集、私はマスターのサポートとご飯などの準備をします」
「わかった。その通りに動こう」
そんなわけでさくらの指示に従うことを決め、翌日。
朝、目が覚めた私は胸の上に乗っかって眠る2人の従者の耳と頭を軽くなでてからそっと起き上がる。
2人はまだまだ眠いのか起きる気配はないのでそのままベッドロールの上に寝かせて毛布をかけなおしておく。
「さて、準備をしなければね」
早速顔を洗い歯を磨き身だしなみを整える。
そうこうしている間にさくらが起き出してくるので「おはよう」と挨拶をして周囲のチェックを行う。
私が色々と動いている間にさくらは朝食の準備をし、その準備の間に雛が起き出してくる。
雛に「おはよう」と挨拶をしてから小さなテーブルに向かうと、そこには4人分の朝食が用意されていた。
「雛ちゃん。ご飯の前にやることがありますのでしばらくお預けですよ」
「うぅ~……。はい~……」
朝一でお腹が空いているであろう雛が悲しそうな声を出すがこればかりは仕方ない。
「ごめんね。すぐ終わるから」とだけ伝え、覚悟を決めてポータルを開くことにした。
「【アクセス デュオ クリエイトポータル】 おいで、鈴」
黒い穴が虚空にぽっかりと開く。
最初はそこから小さな可愛らしい手が出、その後に黒いローブを被った狐耳の生えた頭が出てくる。
やがて全身が現れると、目を半分だけ開いた眠そうな表情の少女が現れたのだ。
何度も見た光景だ。
「……」
穴から出て来た狐耳の少女こと鈴は私を見、さくらを見、雛を見ると周囲に視線を巡らせて確認する。
そしてーー。
「ごふっ」
徐に小さな黒い球状の力の塊を私に何度も何度も投げつけて来たのだ。
1つ1つの威力はないものの衝撃だけは強いお仕置き専用の攻撃だ。
「ちょっ、鈴!?」
「……」
耐えつつ頑張って言葉を絞り出すと、ふと気が付く。
鈴の目にうっすら涙が浮かんでいることに。
しまったな……。
がんばって耐えつつ鈴の側に行き、小さなその身体を抱きしめると、鈴は攻撃するのをやめた。
「……」
「ごめんな。鈴」
鈴はもう攻撃してこないものの、その口から言葉が紡がれることはない。
周囲はただじっとその様子を見守るだけ。
そしてしばらく時間が流れた後ーー。
「次はない」
それだけ口にし、小さな手を抱きしめ返すようにこちらに伸ばしたのだ。
「もちろん」
私もそれだけ口にすると、鈴を抱えてみんなの待つ食卓へと向かうのだった。




