第7話 拠点整備1
雛と和解したところで早速次の行動に移る必要がある。
まずは拠点整備だ。
「雛。建築用資材とかは倉庫に入ってるかい?」
拠点設営のための確認なのだが、雛は首を横に振ってしまう。
「ちょうど整理しちゃったところ。道具ならあるけど……。あるじ様、船から素材転送できない? 全部船の倉庫にあるんだけど」
「船かぁ。力を部屋に置いてきちゃったから遠隔アクセスができないんだよね。船に繋がってる何かがあればアクセス権を回復できるんだけど……」
私の持っている最も有用なスキルは基本的に創造だけだ。他のスキルは従者たちのためだったり管理運営のためのものばかりしかない。
雛のいう船とは私たちが普段生活している宇宙に浮かぶ宇宙船のこと。
本来なら管理者権限で船内にある設備を地上に転送することができるのだが、認証に必要な力のほとんどを置いてきてしまったためそれができない状況だ。
力による認証というと奇妙に思う人もいるかもしれない。
ここでいう力とはそれぞれが保有している固有の特徴的なエネルギーのことを指す。
これにより個人認証を可能としているわけなのだが、今私が持っているわずかな力ではうまく認証できない可能性があるのだ。特に遠隔ではだ。
ちなみに他人や機械がこれを取得、流用することはできない。
「うぅ~……。そっかぁ……」
「ごめんね。たださくらの話によるとこの島の地下に船のモジュールが埋まっているらしいからそこまで行けばアクセス権を回復できるかもしれない。雛菊もいるみたいだし」
「雛菊ちゃん!」
雛菊の話をすると雛はとたんに嬉しそうな顔をする。
とりあえず早めに休眠している雛菊を助け出してあげないと。
「マスター。場所はおわかりになりますか?」
「いや、わからない。ただどこかに転移紋か転移装置を設置しているはずだから、開拓しつつそれを探そう」
モジュール自体は地下にあるが物理的に埋まっているというわけではない。
地殻内に小規模の亜空間を形成してそこに待機している状態というのが正しい。
つまりいくら掘ってもたどり着くことはできないというわけだ。
本来であれば苦も無く探し出し移動することができるのだが、残念ながらまだ力が足りないためそれはできない。
「とりあえずあたし木を切ってくるね。採掘は木を切ってからでもいい?」
「頼む。私は素材の加工を行おう」
「うん! 力仕事なら任せて!」
雛はそう言うと早速鉄製の斧を持って周囲の木の伐採を始めた。
「雛。最初に私が辿り着いた洞窟のほうに向かって切って行ってくれ。ほぼまっすぐだから」
「はーい!」
というわけで早速転移紋などの痕跡を探しつつ海辺の仮設住居から洞窟への道を開拓することにした。
この開拓で得られるものは道と資材だ。
鉱石類があるかはわからないが、地質の種類を考えなければ石材は確実に手に入る。
鉱脈がない場合は鉱脈の種を作るので一旦それで急場をしのごうと思う。
「さくら。周囲に鉱石類が置いてたら私にくれ。鉱脈の種を作る」
「わかりました。鉱脈の生成場所は話していた洞窟でしょうか?」
「そうだね。雛が鉄製品を持っているからとりあえず銅系鉱脈、錫系鉱脈、鉄系鉱脈の種にしようと思うよ。船とのアクセス権が回復したら工業製品を生成する予定だからね」
「はい。承知致しました。しばらくはデッドストックということですね」
「そうだね。雛はほとんどのもの置いてきたとはいってるけど最低限の装備や設備は持ってきているみたいだから」
こうして話している間にも雛は伐採を進めているようで少しずつだけど道ができ始めていた。
大きな木の伐採は時間がかかるので小さい木や藪から始めているようだ。
「今日はさくら姉様のおいしご飯~♪」
「雛ちゃんは何か食べたいものありますか?」
「かつ丼!!」
「卵とお肉は先日買ってありましたね。お肉は豚もしくは豚っぽい何かですけど。お醤油とか調味料関係は買わなくても大量にあるので問題ありません」
「鍋も買っておいてよかったね。ただ専用のがないから気を付けてね」
「はい、お任せください」
というわけでがっつり食べたい女子である雛の要望により今日のお昼はかつ丼となった。
初日の寂しい食事が嘘のようだ。さくらには足を向けて寝られないね。
「よーし、伐採頑張るぞー! あっ、あるじ様。枝払いした丸太あるので加工お願いします」
「うん、いいよ。クラフトなら乾燥させなくてもいいからね」
さっそく雛の倉庫から自分のインベントリに丸太が送られてくる。
丸太はクラフトすると樹皮と丸太本体の部分に分かれる。
本来は細かく辺材や心材などに分かれていくのだが、クラフトではその辺りは考えなくても勝手に必要な部位を選んで使用してくれるのでかなり楽だ。
「薪用、建築用、そのほか用っと。クラフトの設定は問題ないな」
インベントリ内でオートで実行されるクラフトスキルは材料がある限り一定の物を一定の品質で作ってくれるので非常に便利だ。
講師品質なものを作る場合はちょっと手を加える必要はあるけど。
「じゃあさくらは周りのサポートをお願い。私は簡単に道を作ってしまうよ」
「わかりました。道といっても凝ったものにはしないんですよね?」
「そうだね。現状はスキルで草をどかして地面を露出させた道にするつもりだよ」
それからしばらく伐採と道作成の作業が続き、夕方になった頃には洞窟にたどり着くことができた。
基本拠点はこの洞窟近辺、遠征時の拠点は海岸沿いの森の仮設住居となるだろう。
あのあたりも資材を準備して整備するとしよう。




