第4話 グレーメル探索者組合
ランドとはいざというときの手助けをして貰う約束をしているので一旦ここでお別れとなる。
お互いどちらかが必要としたときにまた会うこともあるだろうが、今は探索者組合に行って身分証を入手する必要がある。
「さくら。探索者組合の位置はわかりそう?」
「少々お待ちください」
さくらはさっそく私の影に隠れてウィンドウを操作している。人目につく場所での使用は避けたほうがいいだろうか?
そんな事を考えていると、眼の前にいる探索者? と思しき男性たちのパーティーが目の前にウィンドウを表示させていた。
まるでゲームのような光景だけど、システムの根幹が同じなのだからスキルが有れば当然表示できるのだったと思い至る。
「さくら。街中でウィンドウを表示させても大丈夫そうだよ。どうやらステータスとかを見るのにウィンドウを表示させるスキルがあるようだ」
「はぁ。ゲームみたいですね。とはいえ、そうですか。では隠れて行う必要はなさそうですね」
さくらは影から出ると隣でウィンドウを操作し始める。
「今いる場所がグレーメル北門すぐにある商業組合とのことです。探索者組合は街の中心、今見える大通りを真っすぐ行った先に噴水があるそうなのですが、そのすぐ真向かいとのことです。地図と靴のマークの看板が目印です」
「ありがとう。じゃあ早速行きますか。街の散策は少し後にしよう」
さすが港町というだけあっては色んな種族や地方の人間たちが集まっているようだ。
ターバンを巻いた褐色の商人もいればずんぐりむっくりした赤毛のバイキングのような男もいる。
また別の方向を見ればケモミミを生やした人や和服のようなものを着た人まで見ることができた。
人種の坩堝といったところか。
周囲の様子を軽く見た後、まっすぐ目的地を目指す。
しばらく歩いていると目印の噴水が見え、その先に地図と靴のマークの看板を確認することができた。
ここが探索者組合なのだろう。
白い石造りの大きな建物に茶色い木製の両開きの扉が設置されているので開けて中に入る。
建物の中は思った以上に広く、中央に円形の受付、その奥に並んだカウンターと扉、二階へと続く階段に壁際に本棚やイス、テーブルなどが設置されていた。
建物内は基本的に静かで大声を出すような人はおらず、行儀よく列に並び依頼の授受? や納品?のようなことを行っている様子が見て取れた。
「グレーメル探索者組合へようこそ。ご依頼ですか? 登録ですか?」
周囲を見回していたせいか、不意に女性に声を掛けられてしまった。
どうやら初めて来たのだとすぐにわかってしまったようだ。
「探索者として登録に来ました。未経験ですが大丈夫でしょうか?」
すると受付の女性はにっこり微笑みながら「では簡単にご説明いたしますね」と言い、システムについて教えてくれた。
要約するとG級から始まりA級まで階級制度があり、最高がA級、最低がG級とのことだ。
ランクを上げるには一定数の依頼達成回数と評価が必要とのこと。
「登録料は一律銀貨1枚。1000クレムとなります」
「さくら、2000クレム出しておいてくれるかな」
「はい。こちらが代金となります」
「ありがとうございます。こちらの紙に必要事項を記入していただけましたら後程身分証と登録証を発行致します。少々お待ちください」
受付の女性はそれだけ伝えると一旦その場を離れた。
この世界の通貨はクレムという通貨を主に使用しているらしい。
それぞれ100枚単位で次の素材の貨幣に移るらしく、銅貨1枚が10クレム、銀貨1枚が1000クレム、金貨1枚が10万クレムとのことだ。
それから少し後、先ほどの女性が戻ってきたので記入済みの用紙を渡す。
「受領しました。それではこちらの半透明のカードをこちらの水晶の上に設置いたしますので、水晶に触れてください。貴方のこの世界での情報がカードに記録されますので」
女性に促されるまま水晶に触れる。
すると水晶が一瞬輝きカードに情報が記述されていく。
『氏名:お名前を入力してください。
性別:性別を入力してください。
年齢:年齢を入力してください。
種族:種族を入力してください。
スキル:スキルを入力してください。
加護・恩恵:加護や恩恵を入力してください。』
「ふむ……」
「えっ? あれっ?」
女性は困惑気味で情報が書き写されたカードを見ていた。私もびっくりだ。
「なんで……? エラー……?」
女性が慌て始め、周りが若干騒がしくなり始めたので対応することにした。
(【アクセス デュオ クリエイトアーカイブデータベース 対象:狐塚詠春及びその従者・眷属。都度無難な情報を生成すること。最低ラインで構わない】)
すると再び情報が書き変わり、初期状態だったカードに名前と年齢、レベル等の情報が記載された。
「うそっ!? 突然情報が更新された!? 不具合かしら……」
困惑する女性をよそに、さくらが私に話しかけてきた。
「情報が更新されていないようです。この世界は雛菊ちゃんの管轄ですが、もしかすると雛菊ちゃんに何かあったのかもしれません。あとで確認してみてください」
「わかった」
早速さくらに言われた通りに従者である雛菊との繋がりを辿ってみる。
しばらく引きこもっていたせいで他の世界について何も見ていなかったけど、案外問題が山積みになっているのかもしれない。
しばらく雛菊との繋がりを辿っていたが、不意にある地点で途切れていることが分かった。
場所は私が降り立ったあの島の地下だ。
「雛菊との繋がりが切れているようだ」
「ふむ。となると休眠しているということですね。雛菊ちゃんが力を使わないといけない事態が起きていたということです。今の状況を見る限り落ち着いているようなので解決はしているのでしょうが。マスター、雛菊ちゃんを取り戻したらお説教ですからね」
「はい……」
雛菊とひそひそ話をしている間に、慌ただしく動いていた受付の女性が落ち着いてきたようなので軽く状況を確認することに。
「それで、身分証と登録証のほうは問題ないのでしょうか?」
「あっ、えぇ。確認したところ問題ありませんでした」
「では少し確認しますね」
以下登録された基本的な情報はこのように表示された。
『氏名:狐塚詠春
性別:男性
年齢:27
種族:人間/狐人族
スキル:クリエイト、統率、従者化、眷属化、恩恵付与、スキル付与、加護付与
加護・恩恵:座の管理者の加護、座の管理者の恩恵』
『氏名:狐塚さくら
性別:女性
年齢:14
種族:狐人族
スキル:空間操作、料理、家事、秘書、管理者、機動兵器操作、機動兵器作成
加護・恩恵:座の管理者の加護、座の管理者の恩恵』
以上が簡単なステータスとなった。
ちなみにスキルは少ししか記載されていないが使えるものは多岐に渡るので無難そうなものだけ表示されているようだ。一部おかしいけど。
「見たことのないスキルなどもあるようですが正常に表示されているようですね。あれ? でもなぜ詠春さんの種族が2つ表示されているのでしょうか?」
私のカードを見た女性が疑問の声を漏らす。
「あぁ。私は元々人間なんですよ。今種族を変えているもので」
「しゅ、種族を変える???」
どうやら理解してもらえていないようだ。でも説明してもよくわからないと思うので「たまにあることです」とだけ付け加えておく。
「は、はぁ。わかりました。では身分証と登録証をお受け取りください。依頼を受ける際は依頼ボードから該当の依頼番号を依頼受付にお伝えください。くれぐれもランク1つ上以上のものはお受けにならないでください。受付で止めてはおりますが、漏れた場合に困りますので」
「わかりました。ご忠告ありがとうございます」
「いえ。それでは詠春様、さくら様。良い探索者ライフを」
こうして私たちは探索者組合の受付から離れた。
次に向かうのは依頼ボードだ。何か簡単そうな依頼を探してみようと思っている。
「依頼ねぇ。さくらは何かやってみたい依頼はあるかい?」
依頼ボードの前でさくらは難しい顔をして唸っている。
どうやらどの依頼が一番よさそうか考えているようだ。
「定番なのは『街道外れのウルフ退治』でしょうか。どうやら街道から外れた森、私たちの出た森付近に【森狼】という狼が出ているようです。街道の安全のための定期駆除みたいですね」
さくらの指し示す依頼の内容は森狼という狼を倒すだけらしい。
報酬は1討伐ごとに銅貨50枚。500クレムだという。
一見安そうに思えるが、この世界の一般人の平均稼ぎが月5万クレムから8万クレムほどらしいので100体倒せば一か月暮らすことができるというわけだ。
やりようによってはそこそこ儲かるのだろうけど、装備などの維持管理費次第では赤字になりそうだ。
「受けてみるかい?」
初の実戦ではあるがやりようはある。
「受けて立ちます」
さくらは小さな体にやる気をみなぎらせていた。




