第10話 素材を集めよう
朝食後、私たちは早速活動することにした。
まず鈴には施設の作成のお手伝いをお願いする。
基本的には素材の調達と加工がメインとなるわけだが、並行して転移紋の痕跡調査もお願いする。
いくらそういった見えないものの痕跡を辿るのが得意な鈴であっても弱弱しい痕跡だったら簡単に見つけることはできない。
「詠くん。鉱脈を見つけた時、鉱石の採掘は雛が採掘するのかな?」
作業に向かう途中、鈴がそんなことを聞いてきた。
「採掘機は準備に時間がかかるからね。雛なら直接鉱石を取り出せるし適任なんだよ」
雛の能力は実に多岐に渡る。
大容量の倉庫に高性能な防御スキルとカウンタースキル、高い体力と防御力もあれば資材の調達もできるようなスキルがそろっている。
完全な支援型と言ってもいいだろう。
そんな雛の能力は彼女が望んだものだった。
「【鉱石抽出】って便利だよね。あれボクにも欲しいんだけど。素材集め放題じゃん」
そんな雛のスキルを鈴も欲しいようで、ねだるように私を見つめてくる。
「スキル自体はあるけどまだ力が戻ってないからね。力が戻ったら構わないよ?」
【スキル付与】というスキルがあっても力が戻ってないなら使えないという大問題。
ただの宝の持ち腐れである。
「いつくらいに使えるようになりそう?」
「少なくとも雛菊と合流できれば使えるようになるよ。だからもう少しの我慢かな」
「わかった。待ってる」
そんな話を鈴としながら私たちは居住環境の整備に取り組んでいく。
早く雛菊と合流したいところだけど、環境が悪いと雛菊にも悪いからね。
「あるじ様~。近くの地下に銅系の鉱石と錫鉱石の鉱脈がありましたー! 鉱石抽出してもいいですか?」
「あぁ、かまわないよ。それと抽出出来たらさくらの近くにまとめて置いておいてくれるかな? あとでまとめて精錬に出すから」
「はーい!」
さっそく雛が鉱脈を見つけてくれたようなので抽出のお願いをする。
ついでに分かりやすい場所に置いておいてもらうことにしたので銅や錫に関しては一応問題ないだろう。
集めた鉱石の使い道だけど、いくつかは手元に残して鉱脈の種をクラフトするつもりでいる。
それ以外の鉱石はせっかく解放された遠隔アクセスの能力があるので、宇宙に配備されている工業艦の精錬施設に転送する予定だ。
料金は取られてしまうけど仕方ない。
「意外と鉱脈はあるものなんだね」
雛の報告を聞いていた鈴の一言。
「地質にもよるけどね。海沿いなら褐鉄鉱の鉱脈があるかもしれないけど」
そもそもこの世界の鉱石分布も地球とかと同じなのだろうか? 魔法があるくらいだから違う生清のされ方をしているかもしれない。
あればラッキー、なければアンラッキーくらいで考えておこう。
「へぇ~。ボクもスキル手に入れたら色々と抽出してみよ~っと。あっ、これは薬草になる草だね。ポーションにちょうどいいや」
そう言いながらてきぱきと辺りに生えている草を摘んでいく鈴。
彼女はさくらと同じようにしっかりと解析と選別ができるのでとても頼りになる。
「これは体力回復にいいでしょ。これは精神安定にいい。こっちは持久力回復にいいね。これは便秘に効くし、これはほかと混ぜると風邪の予防や対策にいいね。これは~野生の穀物か」
どうやら鈴は野生の穀物を見つけたらしい。
それはねこじゃらしのような見た目の、イネ科っぽい植物だった。
「そういったものはさくらにあげると喜ぶよ」
「うん。そうする。さくら姉品種改良好きだもんね」
さくらは植物系を育てるのが非常にうまい。
相性もあるのだろうけど、やはり調査なども得意なのでアーカイブにアクセスしては最適な栽培方法や改良方法を模索・実践しているというのが大きいだろう。
「代わりに鈴は魔法関係や製薬、ポーション作りなんかが得意だよね」
「ふふ。もちろんだよ。ボクにかかればちょちょいのちょい。でも良いランクのポーションはあんまり市場に出せないしね」
「鈴の作るポーションなら下級の下でもいいと思うけどね。効果としては十分だろう」
「そういうものかなぁ」
そんな風に話しながら作業をしていると、不意に空間の揺らぎを感じた。
一瞬目が霞むような視界のブレとちょっとの間だけ無臭になる瞬間があったのだ。
「鈴」
「ん。これ転移紋の揺らぎだね。でもどこかはわからない。たぶんどこかの地面に埋もれてるよ」
「地面を掘るしかないってことか。仕方ないか。とりあえず目星は付けたし一旦さくらたちの元に戻ろうか」
「うん」
こうして私たちは一度みんなで相談することにした。
転移紋の揺らぎを見つけはしたものの、この揺らぎ、困ったことに直下や周辺を探ればいいといものでもない。
転移紋から発せられるほんの一瞬の揺らぎは、空間を伝い発生場所から遠く離れた場所までゆっくり波紋のように届いていく。
このため発生源が実は遠く離れた場所でした。なんていうことが起きうるのだ。
何にしても確実に存在することの手掛かりは掴めたので良しとしよう。




