友情のカケラ
放課後の教室に、西日がオレンジ色の影を落としていた。
教科書を机に広げたまま、玲奈はため息をついた。数学の宿題はさっぱり分からない。
そのとき、ひょいと誰かの影が机に差し込んだ。
「またため息ついてる。…難しいとこ?」
声の主は、大輝だった。玲奈とは幼なじみで、クラスでもよく一緒にいる友達だ。
「うん。図形がもう全然分からない」
「じゃあ一緒にやる?今日、部活ないし」
玲奈がうなずくと、大輝は彼女の隣の席を引き寄せ、ノートを開いた。
大輝は決して天才というわけではないが、丁寧に人に説明するのが上手で、
玲奈がつまずく箇所を見つけると、少し考えてから例えを交えて話してくれる。
「三角形を家の屋根だと思えばいいんだよ」
「屋根?」
「そう。ここが支えてる柱みたいなもので…ほら、こうすると分かりやすいだろ?」
玲奈は、屋根に見立てた図形の意味を理解した瞬間、目を丸くした。
「ほんとだ…!なんで大輝って、そんなに分かりやすく説明できるの?」
「玲奈が分からないとこ、だいたい想像つくから」
何気なく言った大輝の言葉に、玲奈は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
自分をこんなにも気遣ってくれる存在が身近にいることに、改めて気付く。
ひと通り宿題が終わる頃には、外はすっかり夕焼けに染まっていた。
教室の窓から見える空が赤から紫に変わっていく。
「ありがとう、大輝。ほんとに助かった」
「いいよ。困ってるときは言えって、前にも言ったろ?」
「…うん。そうだね」
玲奈が微笑むと、大輝も照れたように視線をそらした。
廊下を並んで歩く二人の影は、夕日を受けて長く伸びる。
その影が重なったり離れたりするたび、玲奈は思う。
——友情って、きっと特別なものだ。
気付けばそばにいて、当たり前のように支えてくれる。
それがどれだけ大切なことなのか、今日、あらためて知った。
「帰りにさ、コンビニ寄っていかない?」
「いいね。アイス食べたい」
何気ない会話に笑い合いながら、二人は夕暮れの校舎をあとにした。
その歩幅はぴたりと揃い、まるで未来へ向かう道のりを、
これからも一緒に進んでいくかのようだった。
今日休みで寝転んでたらなんか思いついてできた短編です。
ここまで読んでくれた方!ぜひ「忘却の輪郭」読んでみてくれると嬉しいですっ!現在連載中です!




