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48/55

48、《交流会》イヴの舞姫デビュー

 王家主催の《交流会》は、王都の中心にそびえ立つ《ヴァルクリス城》にて行われる。


 イモートが潜入しているアルヴァリク公爵家も、王都の中では際立っているが、それよりも更に広大な敷地と、何よりも高さを有している。


 さらに白を基調とし、光を反射してキラキラと輝きを放つ城の名は、国と同じ《ヴァルクリス》


 何故ならヴァルクリスの歴史は、この城の建造から始まったからだ。


 遥か昔、恐らくはまだ人間が生きていなかった頃、偉大な何かの戦いがあったのでは無いか、と伝えられている。


 その理由は、超高温の何かが山肌を削り、そこに楕円形に削れた、キラキラと輝く地面があったから。


 発見された時点では、誰もこれが何なのかを知らずに放置していた。しかし時代を経るごとに、生活に密着した錬金術が盛んになり、土を高温で熱するとガラスになる土の存在を知る。


 この地面がガラスである事を証明するため、何人かの錬金術師が調査に乗り出した。


 そして彼らは知る事になる。


 これはガラスでは無く似た何かである、と。

 錬金術では、人間の手で再現する事は出来た無い。

 ガラスにしては硬くクリスタルよりは柔らかい。


 火の神ヴルカン。この地面を創り出した"何か"に、人々はそう名付けた。


 光を反射する、火の神が創り出した、まるでクリスタルの様な何か。人の手では創り出せない伝説の素材。それはヴルカン・クリスタルと呼ばれるようになる。


 周囲の為政者は、こぞって錬金術師達に採取に向かうよう要請する。しかし直前になり、人間同士の争いが起こる。当然の話だが、周辺国にはスパイが紛れ込んでいた。


 戦争が起きた。ヴルカン・クリスタルを巡る戦争が。


 期せずして、この地に人間が集う事になる。それは戦争の余波を受け、迫害を恐れて逃げ出した者達なのか、戦いの最中に立ち寄り、定住してしまったのか、後世の者には知りようも無い事だが、まるでヴルカン・クリスタルに惹かれるかのように、人々は集まり、そこで争いを止めて生活を始めた。


 不思議な事に、この地は海と森に挟まれていて食料が豊富にある為か、動物や、魔物と呼ばれる生き物も多く。危険ではあるが、それが逆に功を奏した。ここに居るのは戦争に駆り出された者達だ。元から戦いを生業としていた者が多くいる。魔物を狩っての生活には困らない。


 そして森も平野も海もあり、非常に自然が豊かだった事から、急速に生活の基盤が築かれていった。


 しかし、戦争を起こした周辺の為政者がよく思うわけが無い。たが、気付いた頃には余りにも人が集まり過ぎていた。早急に軍が編成され、ヴルカン・クリスタルの周辺に出来た村へ向けて進軍を開始した。


 今度は周辺国とヴルカン・クリスタルの周囲で暮らし始めた人々との戦争が始まった。


 ヴルカン・クリスタルの周囲に集まった者達には、武器はあっても家族や、自分の身を守るための拠点が無い。しかしそれもまた、錬金術師がいた事で、展開が変わる。


 ──ヴルカン・クリスタルを使って砦を造ろう


 彼らはヴルカン・クリスタルを砦の材料としたのだ。魔力を通して混ぜると形状を変え、時間が立つと他に類を見ない程に硬くなる。他の鉱物と混ぜ合わせる事で軽重の操作も容易だ。堅牢な砦を築くには、最高の資材であった。但し、全てが白に染まる。


 錬金術師は、集まった者の中から弟子を取り、砦の建築に必要な素材を造り続けた。


 そして──何故か砦ではなく城が出来ていた。


 理由は定かでは無いが、恐らく建築の途中で気付いたのだろう、これ程に堅牢な素材で作るならば、最初から城を作ってしまえば良いと。


 ヴルカン・クリスタルを混ぜ込んだ物質は全てが白く染まる。白の外壁が陽の光を反射する。月明かりですらも反射して、美しく輝く白亜の城が完成した。


 その内部は何度かの修繕を繰り返しているが、外壁は一向に衰える様子がない。


 不破の城は不敗の国を築く礎となり、命を賭して戦った者達が貴族となり、緋色の髪を持つ錬金術師を王として頂き、国が生まれた。


 ヴルカン・クリスタルも元に生まれた国家。ヴァルクリス王国として、戦いを挑む周辺の国を飲み込んで大きくなっていく。


 ──そして現代。


 白亜の白の大広間は、王家の紋章をあしらったタペストリーと金糸のカーテンに包まれ、無数の魔導灯が夜の空気を柔らかく照らしていた。


 楽団の美しく緩やかな音楽は、聴く者の心を穏やかにするものだが⋯⋯。


 広間に集まった紳士淑女達は、グラスを手に談笑しながら、それぞれが持ち寄った“家の誇り”を順番に発表したり、展示して説明したりしている。


 ある侯爵家の嫡男は、南方から取り寄せた翡翠の鉱石を掲げ、光に透かしては「これはその国の王家の冠にも用いられている希少石だ」と誇らしげに語る。


 別の伯爵家の婦人は、自らの高名な画家である祖母が描いたという、遺作の油彩画を披露した。筆致は柔らかく、金の縁取りの額に収められた絵画には、かつてのこの国の王妃が佇む姿が描かれていた。


 周囲の貴族たちは「なんと見事な」「あの方は私の母の友人で⋯⋯」「幼い頃に見た王太后様そのものではないか」と口々に感嘆の声を上げ、そこから更に互いの品を比べ合うように、賞賛と探りを交わす。


 まさに、家の格式と美意識の競演。だが、華やかな笑みの奥には、家同士の静かな優劣の駆け引きが隠れていた。


 一段高い所でそれらを睥睨し、時折跪いて語り掛ける高位貴族に対応する、ヴァルクリスの国王、ジークハルト・ヴァルクリス。


 歳の頃は40代半ば、初老に入った頃だろう。平和な中央、王都に座す。しかし、それでも覇気と知性を失わぬ緊張感を常に漂わせている。それこそが王の資質であるかのように。


 しかし反して王家の面々は、明るく朗らかに談笑している。王妃、側妃に関わらず、口元を扇で隠しながらではあるが、愉しそうに催し物を見ていた。その妃達の子も愉しそうだ。


 流石に侍従や侍女は壁際に控えている緊張感を漂わせてはいるが。


 そんな空気の中、楽団の奏でる音が一度、静まる。


 司会役の文官が前へ進み出て、声を響かせる魔道具を用いて恭しく告げた。


「本日は、東の国防を担うフェルム辺境伯家より、お越し頂いております──」


 ざわめきが走る。この国の東端に位置する辺境。魔物が跋扈する恐ろしい領地だ。しかし危険に見合うだけの報酬を得る事が出来る地でもある。誰もが欲しがる資源⋯⋯魔石や、希少な鉱石に加えて、いくつかあるダンジョンの管理も担う。


 フェルムに限らず辺境伯と呼ばれる者達は、王都にいる貴族とは一線を画する存在である。その格式の基準は軍事力と資源の豊富さと、独自性だ。どの領地もかつては一つの国として立っていた。


 平和を享受する中央では想像できないほどに、強き者以外には生きる事すらも出来ない土地である。


 そのフェルム家の貴族が、王都の社交場に現れること自体が稀。ざわめきも起ころうというものだ。


「フェルム家より皆様に披露されるものは、羽衣の舞『黎明の羽衣──羽兎夜』でございます。それでは⋯⋯お願い致します」


 しかも披露するのは舞──誰も予想しなかった演目だ。


 ゆっくりと照明が落ちて、しかしその収束に反するようにして、広間の中心に光が集まり、そこから直径10メートル程の魔法陣が生まれた。


 魔法陣はゆっくりと床に降りる。

 楽団の音楽が止まり、静まり返る。


 ──トントン ──トントン


 静まり返る広間に、軽やかな音が聴こえた。


 淡い薄紫のドレスに身を包んだ演者が、ゆっくりと"空中から"降りてきた。


 どうやら彼女の足が"空気を蹴りながら"降りてくる音だったらしい。


 貴族達が息を呑む。


 階段を降りるように"空気を蹴っている"事に驚き、次に演者の容姿に釘付けになる。露出は控えめだが、背中から流れる布の羽衣が光を掬い、床に降り立つと柔らかな光の尾を描いている。


 演者──舞姫イヴが床の絨毯に足を付けた。


 顔を上げる。


 整った愛嬌のある顔立ちに、夜に映える化粧を施してはいるが、決して派手に主張するものでは無い。その自然な美しさに、またも目を奪われる。


 しかし演目の始まりを予感させる動きに、観客の視線が集まり、空気が変わる。


 静寂の中、床の魔法陣から笛の音が一つ、会場に溶け出した。


 ──「黎明の羽衣」


 それは、夜明け前の世界を描く舞。

 一匹の羽兎が、そこに感情を紡ぎ出す。


 最初は沈んだ闇のように、動きは重く、静かで、どこか哀しげに。彼女の指先が揺れるたび、裾の布が月光を掬うように煌めき、沈黙の中に祈りを溶かす。


 やがて笛に弦が重なり、リズムが生まれる。イヴの動きもそれに呼応し、滑らかに熱を帯びてゆく。


 ──夜の闇に心を閉ざしていた少女が、光を掴もうとするように。

 ──痛みに耐え、再び息を吹き返すように。


 彼女の舞は、静かでありながら、確かな情熱を宿していた。


 手先、足運び、視線──そのどれもが丁寧で、繊細で、淀み無く。見る者の心にゆっくりと火を灯す。


 やがて音楽は、鼓動を刻む様に跳ね始める。


 羽兎──いや少女は夜明けの哀しみと喜びに跳ねる。


 背中から流れる羽衣が弧を描くたび、観客の息が止まり、音楽が高まる。跳ねる、回る、止まって、流れるように滑り、また跳ねる。光を纏い、縦横無尽に。


 最後の一音が鳴り響いた瞬間、イヴは静かに片膝をつき、手を胸に添えて瞳を閉じた。


 その姿は、まるで黎明の一瞬を閉じ込めた、彫刻のようだった。


 観客は知る──静寂とともに夜が明けたのだ、と。


 一拍の静寂の後、会場を包み込んだのは、嵐のような拍手だった。


「……素晴らしい!」

「なんと静かで美しく、激しく⋯⋯言葉に出来ぬ」

「フェルム家の客人か? 何という気品だ──」

「もっと見せろ!」


 誰からともなく賛辞が漏れる。驚いた事に、男性貴族だけでなく、パートナーとして参加していた女性達も、小振りながら拍手を送っていた。


 この舞は単なる余興ではなく、観る者の心を打つ程の祈り、"祈祷"の類いあった事を感じ取る。誰もが一度は感じた事のある"高鳴る喜びと終わる瞬間"を舞で現したものだった。


 この、舞の出品者はフェルム辺境伯次期当主。


 特産品や希少な魔物素材の出荷。そして国防を担う武威により、広く名は知られているフェルム辺境伯。


 その次期当主が連れて来たという、何処の誰とも知らぬ娘。しかし今、王侯貴族の目に、イヴはただの踊り子などとは映っていない。


 ──舞姫


 それはまるで闇の中、一筋の光の中に立つ、誇り高き"使者"のように映っていた。たった一つの短い舞で、王侯貴族が並ぶこの広間に、存在感を植え付けて見せたのだ。


 その"特別な彼女"がゆっくりと、一つの無駄も無い動きで立ち上がる。王家に連なる者も、居並ぶ貴族の者達もが、合わせたように静けさを取り戻す。


 舞姫が自然な動作で、入り口の扉に視線をやると、皆がそれに釣られ、扉を見る。


 静寂を破るように、笛の音が細く長く響く。右手は胸元へ、左手は前に、手の平は上へ、指先は空を彷徨うように。舞姫はその場で静かに片膝を付き、頭を垂れた。


 流れる羽衣の裾が床をなぞり、淡い金の光が、触れた部分に宿るように光を散らす。


 舞姫は長いまつ毛を伏せる。それはまるで──主を迎える"舞台の完成"を告げるように。


 観客の誰もが息を呑み、次の瞬間を待つ。

 笛の音が止み、広間の空気が張り詰めていく。

 居並ぶ王家ですらも魅入られていた。


 その時、重厚な扉が、内側へ少しずつ音を立てて開いた。


 最初に姿を見せたのは、2人の美女。


 一人は、陽の光を透かしたような、薄い黄金の髪をハーフアップにして、肩口から流した美女。


 鋭く切れ長の瞳は淡い桃色に輝き、透き通るような白い肌は、まるで月の光を浴びた大理石のようだった。


 銀の縁飾りをあしらった濃紺のドレスは、凛とした武人のような端正な立ち姿をより際立たせ、その背筋の伸びた歩みには、戦場を渡ってきた者の気品と誇りが滲んでいる。剣を帯びていなくとも、誰もが彼女を"戦いに身を置くもの"と感じ取った。


 もう一人は、銀糸のように滑らかな髪を編み込み、後ろに流した褐色の美女。日差しに焼けたような健康的な肌。しかしムラは無く、扉から漏れる光を受け、黄金のように艶めいている。


 大きな紺碧の瞳は、宝石のように澄み切っており、その瞳が瞬きをするたび、視線が吸い込まれる。


 彼女の純粋さを表現するかのような、柔らかな白のドレスがその褐色の肌を引き立て、歩くたびに裾がゆらめき、彼女が薄浮かべている妖艶な笑みは、見る者の心をざわめかせる。しかし彼女の全くブレること無く立つ姿に、やはりこちらも"闘いに身を置く者"特有の気配を持っていた。


 対照的な美──冷たい静謐と温かな陽光。


 二人は静かに左右へと分かれ、まるで"主を迎え入れる門"を形作るように、扉の両脇に立つ。


 静寂の支配する会場の空気は動かないまま、次いで、扉の影から足音がゆっくりと近付く。


 扉を潜り現れたのは、漆黒の礼装に身を包んだ男。


 フェルム辺境伯家次期当主、ミルト・フェルム


 入場を告げるはず宰相の従者が場に呑まれてしまい、紹介を忘れてしまうが、その必要など無かった。


 黒髪黒瞳の青年の、立ち姿に淀みは無く一切のブレが無い。居並ぶ王侯貴族に動じていないのだ。この場において一雫ほども緊張を感じさせず、鋭い目で広間を見渡し、姿勢を正し口元に微かな笑みを浮かべた。


 広間の貴族達を釘付けにした舞姫の跪く姿。

 金と銀の神秘的な美女が開いた扉。

 全てがこの瞬間のために整えられていた。


 触れる事すらも想像出来ない超然とした3人の女。そしてそれを従え、王の如き振る舞いで現れた青年。


 まるで宗教画を専門とする巨匠が描いた絵画のようだ。この計算され尽くしたかのような光景に、広間に居る全ての者が、動きを止めて魅入っていた。


 ミルトが一歩踏み出す。広間の空気がわずかに震え、歩みを進める度に緊張が高まる。


 歩みを進める度にざわり、と音が広がり貴族達が反射的に姿勢を正す。辺境の貴族が王家の催しに現れるなど、滅多に無い。3つある辺境伯家、その最たる家である、フェルムの次期当主が目の前に居るのだ。


 幻想的な舞でイヴが整えた舞台。だがその後の静けさは、まるで彼を迎える為に用意されたかのようだ。


 ミルトは静かに歩みを進める。靴底が柔らかな絨毯の上を歩くたびに観衆の視線が動く。


 跪くイヴの髪が揺れ、静かに顔を上げた。その瞳には尊敬と誇りが宿り、言葉は無くとも、彼女の仕草が雄弁に告げていた。


 イヴの前に立つと、彼はわずかに顎を引き、低く穏やかな声で言った。


「……見事だった、イヴ」


 その一言が、まるで契約の印のように広間の空気を完全に支配した。


 誰もが理解した。この夜の主役は、フェルムの若き当主であり、この静寂を支配する者なのだと。


 王族たちの間にも小さなざわめきが走る。だがミルトはそれを意にも介さず、イヴの差し出している手を取った。


 イヴはゆっくりと立ち上がる。羽衣がふわりと広がり、再び光を掬った。


 2人が歩き出すと、床に薄っすらと残っていた魔法陣が霧散する。それに合わせるようにして魔導灯の明かりが広間を照らし出す。


 2人の後ろにトニトルスとパイシーが付き従う。


 明るくなった広間を歩く4人の姿は、幻想的な薄暗闇の中では無くとも、まるで観劇の1シーンのように貴族達の心を打っていた。


 4人は並んでゆっくりと淀み無く、王家の並ぶ壇上へと向かって歩き出した。



 ミルトの目の前に、重厚な扉が静かに開かれようとしている。両脇で控えるトニトルスとパイシー。金と銀の髪が揺れ、まるで王を迎える儀式のようだった。


 だがミルトの頭の中は、それどころではなかった。


 扉を潜れば、先導するようにトニトルスとパイシーが、扉の両脇に並び立つだろう。今、煌めいた光を背に受けたその姿は、まるで神話の双翼のようだ。


 2人の間には、一歩分の空白。そこは、ミルトのために整えられた舞台。ミルトはその中心に立つのだ。


 さて行くかと気合を入れたいが、頭の中では別の喧騒が渦巻いている。


『おおぉぉイヴぅ!! さっき踊ってたの俺の妹がなんだよ! 立派になって⋯⋯兄さん嬉しいよぉ!』


(知ってるわ! さっきからうるさいぞナキアス。お前の感情が移って涙で視界が滲んだらどうする。この場で泣き出したら変人だと思われるだろうが!)


『だってよぉ……ぐすっ……イヴがぁっ!』


 ミルトは表情を固め、無言で深呼吸した。


『落ち着けミルト・フェルム。ここが戦場であれば今の貴様は真っ先に的になるぞ』


(アーヴァイン、これは戦場じゃない。式典だ)


『ここは王城、"王の影"の主戦場でもあるのだぞ? 心の乱れは命取り。常に気を張るのだ』


(気を張ってるよ⋯⋯あんたらが話し掛けてくるからな!)


『ふむ……見事な構図だ。金と銀に挟まれ登場する黒、中央に立つだけで"物語"が完成しておる。その先に待つ妖精の如き踊り手も含め、見事な演出だ』


『レオニードか。プルフルもその辺に居るはずだがな。とりあえず、ここまでは順調だ』


『ふむ、良い仲間に恵まれたな小僧。それにお前も良くやっている。緊張も無く堂々としたものだ』


(⋯⋯頭の中が騒がしくて緊張する暇が無いんだよ)


 晴れの舞台に死者達が騒ぎ立てる。ちなみに言語化されていないだけで大勢の死者達が騒ぎ立てている。


「これがお城なの!? しゅごい⋯⋯」

「あっちの飯めっちゃ美味そう!」

「あの頃着ていたドレスのデザインが復刻してるわ」


 ⋯⋯非常に煩い。


(いい加減にしてくれないか⋯⋯気が散って──)


 その瞬間、ひときわ澄んだ女の声が割り込んだ。


『男というのは、いつの世も頼りないものね』


 声が響いた途端、ざわついていた脳内がぴたりと静まり返る。ナキアスもアーヴァインもレオニードも、何かを察したように口を閉じた。


(誰だ……?)


『セレナ・ヴァンディエール。元侯爵家の令嬢よ。ミルト・フェルム、有象無象の声に耳を傾けていないで、姿勢というものを学びなさい」

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