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46、救出&救出

 時刻は夜の9時。


 場所は王都の面する港、第6埠頭の一画にある倉庫。持ち主は、とある伯爵家。


 魔導灯の明かりの落ちた倉庫に、燭台の炎に照らされて、ゆらゆらと淫靡な影が揺らめいている。


 既に周囲の見張りは拘束した。


 突入の機を待つウルタルフの耳に、愉しげな笑い声が届いてきた。


「見よ、この肌艶を。人間では有り得ぬ程のキメ細やかさだ」


「亜人のメスも人間の女と造りは変わらんからな。最近はこれ以外では楽しめんな」


「人間との違いを探すゲームでもするかね?」


「それは良い! 面白い事を考えるじゃないか」


「いやしかし今宵は上物だ。良くぞ仕入れたものよ」


 男達の愉悦に満ちた歓声に混じって、少女達の啜り泣く声が聴こえる。いやだ、こわい、家に帰らせて、と懇願する声もするが、それすら男達を興奮させるスパイスとなっていた。


「⋯⋯中を見せろ」


 怒気を放つウルタルフの指示に従い、騎士が扉の横に覗き穴を開ける。ウルタルフの視界に、中の光景が飛び込んできた。


 運び込まれた木箱から引きずり出された、亜人の娘たちが3人。頭頂部に耳のある者や、手と足に鱗の張り付いた者。青白い肌で髪以外の体毛が無い者。


 それぞれが年齢に見合わない、まるで彼女たちを侮辱するかのような華美な薄布で着飾らされ、両手に魔力を封じる拘束具を嵌められて、地面と足先が届くか届かないかというところで梁から鎖で吊り下げられていた。


 頬を腫らし、口の端から血を流した娘もいる。既に殴られたのかも知れない。恐怖に震える瞳からは、涙が止めどなく流れている。


 その周囲を、数人の腹の出た貴族たちが取り囲んでいた。酩酊の赤に染まった頬、だらしなく開いた口から漏れる笑み。衣服を脱ぎ捨てた彼らは、肉欲の獲物を前に、下卑た視線を浴びせている。


 娘たちの絶望と、男たちの欲望。倉庫の空気は粘りつくように濁っていた。


「⋯⋯なんと⋯⋯いうことだ」


 ウルタルフは、怒りに声を震わせ、それでも冷静に騎士団に突入の準備をさせた。騎士団の小隊長達が準備完了を伝えて来ると同時、即座に号令をかけた。


「状況を開始せよ! 全員捕縛! 1人たりとも逃がしてはならん! 娘達は保護だ!」


 騎士団が扉を蹴破り、なだれ込むように一斉に突入する。ウルタルフも中ほどで突入した。


「何事だ!」貴族の一人が狼狽える。


「貴様らの王国の名を穢す行い──許す事は出来ん! 覚悟せよ!」


 ウルタルフが怒声を上げて剣を抜き放ち、響き渡る声で宣告した。


 混乱の最中、吊り下げられた娘達に近付く騎士がいる。だがその身体が吹き飛ばされ、次に娘達が順番に崩れ落ちる。娘は床に倒れ込むが、すぐに別の騎士達が駆け寄り、厚手の布で覆って抱き止めた。


 殿下の背後に、気配が一つ──。

 だが振り返っても、そこに誰の姿もない。


(⋯⋯ミルトか。有り難い。これで娘達を人質に取られる事も無い。先程の騎士は、内通者か⋯⋯)


 殿下は下唇を噛み締めて剣を構え直し、吠える。


 「ヴァルクリス王家の名において、貴様らの悪行を白日の元に晒し、裁きを受けさせる!」



 騎士団の突入は、表も裏も出入り口を突き破り、更に窓を叩き破り、そして即座に完了した。


 松明の光の下、腹の出た半裸の貴族達の、下卑た笑みは瞬時に引きつり、彼らの夢見た淫らな宴は、現実の鉄と石畳の冷たさに取って代わられた。


 騎士の腕に抱えられた若い亜人の少女達は、膝を震わせながらも騎士の腕に守られる。騒ぎの中心で、怒号と怯えが交錯する。


「何という事を仕出かしたのだ! 亜人連合との条約は、我が国の法典にも記されているものだぞ! 貴族である貴方がたが、率先して王国の法に背くとは!」


 ウルタルフが、1人の貴族の目の前に剣先を突きつけて激昂する。護衛のカクテリアスが周囲を押さえ、騎士達が貴族どもを制圧している。


「ウルタルフ、殿下⋯⋯何故あなたがここに⋯⋯」


 その場にいる殆どの男達は、絶望した表情でウルタルフと騎士達を見ていた。


 しかし、ある男が狼狽えた声で叫んだ。酔いと慌ただしさで色のない顔になっている。


「ま、待て! 我らを捕らえて良いのか小僧!? 後悔する事になるぞ!」


 ウルタルフは額に青筋を浮かべて男を見る。下着しか身に着けていない腹の出た中年が、逆切れのように激昂し出した。


「⋯⋯後悔だと?」


「そ、そうだ! 我らはアルヴァリク公爵家の……ひ、庇護の下にある者! アルヴァリク公爵家を敵に回す事になるぞ! これは公爵家の取り計らいなのだ!」


 その言葉は、倉庫の空気を凍らせる引き金となった。周囲の男達も、同意していいのか分からず、視線を彷徨わせる。ウルタルフの目が一瞬、暗い光を帯びる。声の輪郭が変わる。


「――アルヴァリク公爵家か。安心しろ。既に知っている」


 彼はゆっくりと周囲を見渡した。倉庫の中にいたのは貴族だけでは無い。貴族の従僕ど、見張りの傭兵、あるいは買われた役人の顔が、松明の明かりで揺らめいている。


 ウルタルフの放つ冷たい怒気に、誰もが言葉を失っていた。


「殿下、落ち着いてください」


 カクテリアスがい宥めるように言うが、ウルタルフは耳を貸さない。顔つきが切り替わり、王太子としての風格を纏う瞬間を、梁の上から事の成り行きを見守るミルトは見逃さなかった。


「心配するな、俺は私は落ち着いている。当事者からアルヴァリク公爵家の名が出た以上、尚の事この場は放置できぬ事態となった」


 ウルタルフが低く断じると、周囲の士気は瞬時に変わった。王太子自らがこの場を取り締まるという明確な意思表示。騎士達にとっては何より頼もしいものであり、この場にいる貴族にとっては、最も恐るべき報せだった。


 また別の貴族が必死に取り繕う。


「ウルタルフ殿下、我らはただの客人です! 誤解を解いていただきたく――アルヴァリク公爵家の者に伺いを立てて頂けましたら、ご理解頂けます!」


 この男はまだ、アルヴァリク公爵家の指示ならば何もかも許されると思い込んでいるようだった。


(我ら王家の怠慢が、この悲劇を生んだのかも知れん⋯⋯だが!)


「言い訳は聞かぬ。誰一人として⋯⋯。お前達は今ここで裁く。王国の法、王家の特権を持って処置する。これはそれ程に緊急を要する事態だ」


 騎士に捕らえられた全ての者が息を呑んだ。


「だがまずは、救出された者たちの保護を優先せよ」


 その命令に迷いはない。騎士達は素早く動いて被害者を外へと連れ出した。ミルトは梁の上から全体の流れを見つめる。不測の事態を引き起こさせない為に。


 だが貴族達は黙っているわけではない。ある者は低い声で脅しめいたことを呟いた。


「王子殿下、先程そちらの御仁が仰られたように――我らの多くは公爵家の庇護下にございます。王家の特権などと⋯⋯そのようなものを振りかざせば、公爵家が対立する事になりますぞ? さすれば王都の均衡は崩れる。その被害を被るのは民でしょう。貴方はその責を負えますかな?」


 その問いに、ウルタルフは無表情で応える。続く彼の答えは静かだが、決意に満ちていた。


「責など恐れぬ。我が国が汚される事を見過ごす方が私には耐え難い。そして、お前達の見下げ果てた遊びの為に連れてきた娘達、彼女達もまた我が国の民だ」


「何を言うか! 亜人など――「斬れ」「はっ!」


 血飛沫が舞う。貴族の首が音を立てて床に落ちる。ウルタルフの命に、カクテリアスが即応した結果だ。


「無辜の民に仇なす貴族など要らぬ! 貴様らこそ、その責を負うがいい!!」


 その言葉と行動は、この場にいる者の心を震わせる。騎士達には誇りを、貴族達には恐怖を。


 だがミルトは冷静に見ていた。ここからアルヴァリク公爵家が明確な反撃に出る事は無い。ミルトが行動を操作するからだ。魔族を炙り出す煙幕とするには、騒ぎが大きくならないと意味は無いが、実際に公爵家に動かれては困るのだ。


(あまり派手に公爵家が動くと、魔族の動きに対応できなくなるかも知れんからな。俺が表舞台に立つタイミングが重要だな)


 フェリキタス、龍鱗、貴鱗、――それらを繋げた状態で公表するのがベストだ。恐らくアルヴァリク公爵家は黙殺するだろう。だが反応は見ておかねばならない。公爵家側の動きを読むのは、ここが分岐点だ。


(イモートを"フェリキタス"の男に付けたのは正解だったな)


 ウルタルフは声を張り上げ、現場での逮捕を命じる。命令が通り、夜の港を騎士と、何人かの貴族が手錠を嵌められて連行される。だが連行されながら、別の貴族が口を噤みかけてから、悔しげにこう叫んだ。


「我らはアルヴァリク公爵家の命で動いたのだ! つまり我らは家の名誉のために動いたにすぎぬ! アルヴァリクの力無くしてこの王都の秩序は成り立たぬだろうが! 腑抜けの王子が!」


 ミルトは我知らず笑みを浮かべる。その声はまさに狙い通りの種火となるものだ。王太子の名で摘発した事実と、貴族の口から漏れ出た公爵家の名。それは市井に落ちれば、たちまち噴水のように広がる。


 寄親に命じられたからと、亜人の女の子の前で裸になるのが家の名誉の為になる訳が無いのだが、この国の貴族は既得権益に塗れておかしくなっているようだ。


(とにかく、計画は動いた。だがこれからが勝負だ。アルヴァリク公爵家の反応を観察する。俺が表舞台へ出る段取りを整えなければ。とりあえず、イモートの様子を見に行くか)


 ウルタルフは救出された女の子達にそっと近付き、囁くように言った。


「遅くなってすまない。もう大丈夫だ。私が責任を持って君達を家に返そう」


 その顔は、もう初見の頃の疲れ切った顔では無い。この国の王大使として相応しい凛々しさを纏っていた。


(匂わせはしたが、ルヴィの事は話さなくても問題無さそうだな)



 冒険者ギルドの裏手は人通りも絶えていて、表からは笑い声が漏れてくるが、この路地は不気味なほど静まり返っている。


 イヴは迷いなく足を止め、扉を指差した。


「⋯⋯ここよ。私が連れ込まれたのは、間違いなくここ」


 ただの倉庫に見える鉄扉。けれど彼女の声には、恐怖と同時に確信が宿っていた。


 イヴが魔族と共に転移した元の座標をプルフルが調べたところ、王都の冒険者ギルドと合致した。地下室から転移したとのイヴの証言から、地下に繋がる場所だと推測し、裏手に回ってみれば、拐われた時に木箱の中から見た扉があった。


 イヴは当時自分が連れ込まれた扉を見つめる。意を決してドアノブを回すと、抵抗無く回る。そのままゆっくりとドアを外側に開いた。鍵など掛かっていなかった。考えてみれば自分が連れ去られた昨日から、誰も出入りなどしていないのだろう。軋む音と共に扉が開き、そのまま地下への階段が現れる。


 足音を忍ばせながら降りると、薄暗い地下室にいる少女達のすすり泣きが響く。檻に入れられた少女達は、助けを求める目でイヴを見上げた。


「助けに来たわ。もう大丈夫よ」


 イヴは優しく声をかける。


 トニトルスは背から巨剣を抜き、檻の鎖を素早く切断して回る。パイシーは力強く檻の鉄格子をひん曲げる。しかし誰一人として外には出たがらない。


「安心してええで、あの魔族はもうおらんから」

「そう、ここにいる彼女が倒したから大丈夫よ」

「倒したっちゅうか、自爆しよったんやけどな」


 パイシーのあっけらかんとした態度に、少女達は互いに顔を見合わせて、パイシーが素手でひん曲げた檻を見つめた。


「君達を傷つける者はもう居ない。少なくとも、ようここには現れないから、安心して出て来なさい」


 全ての檻の鎖を断ち切ったトニトルスが、巨剣を背中に挿し直して話し掛ける。


 暫くして、そろそろと檻から出て来た少女達を、イヴは1箇所に集めていく。彼女達は互いに抱き合い、涙をこぼしながらも、少しずつ安心の表情を見せる。


 互いに励まし合っていたのだろう。だが、落ち着いてきたところで、剥製にされた女の子達を見て、また涙を流す。


「もっぺん殺したぁなるわ、あの変態魔族」

「⋯⋯ああ、本当にな」


 トニトルスとパイシーが、生き残った少女達と、絶望の表情で剥製にされた少女達を見て、怒り体を震わせていた。


 それを横目にイヴが部屋を探索していると、壁に小さな扉を見つけた。まだ囚われた者がいるのなら救わないと、警戒を胸にそっと開けてみると、そこには奥へと続く登り階段があった。


「……今度は登るのね」


 低くつぶやき、階段を一歩ずつ上がると、やがて目の前に扉が現れる。だがこちらは鍵が掛かっていた。


「トニトルス、こっちに来て」


 イヴは振り返り、下の階にいる剣士を呼んだ。彼女は直ぐに駆け上がって来る。なんと頼もしい姿かと見惚れてしまう。


「下がっていろ」


 言うが早いか、彼女は最小の動きで巨剣を引き抜くと同時、扉の隙間にある鍵となる部分を切断した。金属が触れ合う甲高い音がして、ゆっくりと扉が向こう側に開く。 


 扉の向こうに現れたのは、執務室。


 部屋の中を見回せば、ここは王都の冒険者ギルドの、ギルド長に割り当てられた部屋だと分かる。


「⋯⋯嫌な予感しかしないわね」

「ああ⋯⋯だがここに居ても仕方が無い、外に出て聞いてみるか」


 書類や帳簿が整然と並ぶが、今はまだ手をつけない。まずやるべきは、職員を呼び出して地下の惨状を目にさせることだ。


「ここで呼び出すわ。トニトルス、一応警戒して」


 イヴは指示を出すと、机の上にある呼び鈴を響かせた。


 やがて一人の若い女性職員が現れる。柔らかい雰囲気の女性だ。しかし表情には明らかな戸惑いが浮かんでいる。


「失礼します。ギルド長室、いつの間に出勤されて⋯⋯あの、貴女は?」


 声を掛けられたイヴは、質問には取り合わず、ギルド職員の彼女を地下へと誘う。


「こんにちは。ちょっと手伝ってもらいたいことがあるの。一緒に来てもらえるかしら?」


 イヴは微笑みながら、地下室の方向を指す。


「えっ!? だ、ダメですよ! その部屋は秘匿情報を保管するギルド長の権限⋯⋯部⋯屋⋯⋯階段?」


「これで良いか? フェルムの家名章だが⋯⋯」


「⋯⋯ふぇ! フェルム!? 辺境伯家の!! し、失礼致しました! その⋯⋯地下に何が?」


「見れば分かる。悪いがここで話せる内容では無いのでな。⋯⋯貴女が優秀な方である事を祈るよ」


 トニトルスの言葉に、職員は首をかしげながらも指示に従い、階段を降りていく。


 フェルムの家名章は効力があったらしい。別れ際にミルトの父親が言った言葉は本当だったようだ。


 地下に到着すると、パイシーが付けたのか魔導灯の明かりで、内部がよく見える。


 地下の状況を認めた瞬間、職員は悲鳴を上げて尻餅をついた。一瞬で顔が青ざめる。絶望の表情で剥製にされた女の子たち、その横で肩を寄せ合って啜り泣く少女達――その惨状は言葉を失わせるに十分だった。


「こ、こん……なな、何⋯⋯これ?」


 声が震える職員の傍に膝を付いて、イヴは落ち着いた声で質問する。


「さっき言ってたギルド長の名前――サテウで合ってる?」


「ひぃっ⋯⋯はい! ギルド長、の、お名前はサテウ子爵様です。サテウ・ズィーロ子爵です⋯⋯!?」


 職員は目を大きく見開く。察しは悪くないようだ。理解出来ない現実に、思わず手で口を押さえる。


「少女たちを攫わせていたの」


「この……あの方が、こんなこと……うそ⋯⋯」


 イヴは首を振って、視線を職員に合わせる。


「本当よ。上の部屋からここを使っていたのは、ギルド長だけなんでしょ?」


「あの部屋は、こ、この部屋⋯⋯ギルド長が管理する扉で、秘匿情報があるから、開けてはいけない部屋で」


「これがそうよ、秘匿情報。ギルド長の立場を使って、あそこの階段の上にある裏口から、少女たちを運ばせていたのよ。私も昨日、拐われて連れて来られた。私は逃げ出せたけどね」


 魔族であることは伏せ、あくまで人間の、立場ある子爵の犯罪行為として説明する。魔族である事を引き合いに出してしまうと秘匿される可能性がある。完全に秘匿されては困るのだ。少なくとも今は⋯⋯。


「これ……すぐ報告しなきゃ……」


 職員は震える手で頷く。イヴは静かに首を振る。


「誰に? ギルド長の犯行よ? もう死んだけど」


「あ⋯⋯じゃあ、本部──え! 死んだ?」


「死んだわ。自分で死を選んだのよ。本部ってどういう事? 冒険者ギルドの本部は王都じゃないの?」


「王都は、支部です。冒険者ギルドの本部は東部のフェルムに⋯⋯ありま、す」


 ギルド職員が、トニトルスの顔を見る。トニトルスは家名章を顔の前に掲げて説明する。


「次期当主が私にこれを預けたが、本部がフェルムにあるとしても報告は冒険者ギルドからが良いだろう」


「そう、ですね。分かりました」


「まだよ。ここからが大事なの。被害者の保護と、記録の確保。それから、誰も知らない今のうちに証拠を整理して。誰かに廃棄されないうちにね。応援が必要なら上から何人か信用出来る人を呼んだ方が良いわ」


 イヴの声には揺るぎない決意がこもっていた。職員はその指示に従い、上から数人を呼んで、証拠の整理を始める。全員が尻餅をつき、サテウの所業に驚愕の表情で応えた。


 地下室にいた少女達は保護されて、上の部屋に連れて行かれた。


「安心しろ。今から安全な場所に向かう。君達に証言して貰うような事も無い」


 魔族サテウ・ズィーロ。王都で子爵位を持つ貴族として生きていたが、しかしその裏では嗜虐的な趣味を行っていた。


 そして最悪な事に、泣きじゃくる少女達の中には冒険者として活動していた子も混ざっていたらしく、捜索し続けていた仲間との再会ので、仲間達と抱き合って泣いていた。


「これから王都支部は大変だろうな」

「これ、隠すん無理やろ⋯⋯どないする?」


 トニトルスは他人事のように感想を吐き出し、パイシーは時間稼ぎですら隠蔽が不可能である事実を突き付けてくる。


「あの変態魔族は、恐らく彼女の前で正体をバラしたりはしていないと思うわ。被害者にギルド所属の女の子が居たのなら、魔族の部分以外は公表するしか無いでしょうね。ただ、実態を掴むのに時間は掛かるはずよ。私達は戻りましょう。目的は果たしたわ」


「そうだな。救える者は救った。私達に出来ることはもう無い。それにミルト達の様子も気になる」


「帰ろか。挨拶は面倒になるからええやろ」


「そうね。証拠を廃棄されないなら問題無いわ。騒ぎが大きな内に帰りましょう」


 3人はギルドの入り口から、堂々と帰って行った。

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