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天使の輪っかの不思議

「はいとうちゃ~く」


 登下校は彼女の飛行に任せることにした。

 ぶっちゃけ死ぬほど楽だが、これくらいの恩恵は受けていいはず。

 という訳で屋上で、今日を乗り切る作戦会議を始める。


 昨日は半日で学校が終わったが今日から一日中、学校にいることになる。

 つまり、今日からが本番という訳だ。


「はい輪っか。あんたが持ってて」


「だからなんなんだよ。その輪っかは」


 はじめにミカエルが、頭部に浮いてる輪っかを俺に渡してきた。

 こんなに物みたいに扱われると困る。


 それって神聖なものじゃないのかよ。

 手渡しで人に預けるなよ。 


「いや、何で俺が……」


「手離してみて?」


 それに自分で保管すればいいだろう。そんな疑問を俺が口にするとミカエルは俺に指示してきた。

 それに従い輪っかを手から離すと、一人でにミカエルの頭の方に移動していった。


「ほら、どうしてもほっとくと頭の上に来ちゃうのよ。でもあなたが持っとけば万事解決、でしょ?」


「万事の中に俺の都合を入れてくれよ」


 こいつの解決方法はいつも俺の都合が入ってない気がする。

 こんな得体の知れないものを保管するのはどうにも気が乗らない。

 ただ、断りきることは出来ず。半ば強引に押し付けられ、輪っかをバッグにしまうとため息がこぼれた。


 ……いや。天使の輪っかをバッグにしまうなよ。


 ファンタジーと通学鞄を一緒くたにすんな。ハルマゲドンで授業受けるぞ。

 何だかこいつの狂気が俺の中でデフォになりつつある気がする。

 

 今度は不安材料がミカエルと天使の輪っかと、分裂して俺の学校生活を邪魔してくることにうんざりしながら、ミカエルが先に教室に向かい、遅れて俺も出発した。

 俺たちに交流があると知れ渡るのも面倒、という訳で俺なりの危機回避の手段である。最も、こんな災厄と過ごしている時点で、説得力の欠片もないのだが。

 

 まあなんにせよ、何も起こらないことを切に願う。

 そんな願いをした後に、振りとかフラグとか、そんな単語が頭をよぎった。


  ***


「やっぱお前、あまつかさんのことチラチラ見てんじゃねえか。ツンデレ可愛いねえ」


「うるせえ。ぶち殺すぞ」


 直樹が俺の頭を撫でながらからかい、俺はそれを振り払う。

 そうして出てきた暴言にけらけら笑うと、直樹はバレバレだぞとか、顔に出てるぞ、とか言いたげに俺の方を見てきた。

 ただはっきり言う。何も分かってない、こいつは。


 ミカエル、もといあまつかのことを俺がどんな気持ちで見ているか。

 いつボロが出るか、不安で仕方ないのだ。

 

 あいつと俺の席は一番遠い。

 出席番号一番の俺と転校生で最後の番号になったミカエルの席は一番遠い。

 故に視線を送っていることはバレやすく、不愉快な憶測を直樹がしてくる。


 しかも輪っかのせいでバッグはあいつの方に向かっているし、その度に一人でに動くバッグを自分の方に引き寄せている。

 三十秒に一回くらいこの作業をしなければいけない。


 もう、頭おかしくなる。

 新手の拷問だろ。人間は無駄な動作をさせられ続けると壊れるんだぞ?


「あれ? 今バッグ光らなかった?」


「あ……携帯電源切ってなかったわ。あっぶねえ」


 教科書を出そうとした瞬間、バッグの中身が天使の輪っかにより光り輝く。

咄嗟の嘘で光り輝くバッグを誤魔化しつつ、俺は輪っかを面積の多い国語の教科書で覆った。心労が絶えない。


 この学校は校則により授業中は携帯を使えない。

 授業中携帯がなったら没収。ということで生徒は電源を切っており、その危機一髪の焦りを演技する。

 

 なんかミカエルのせいで演技する機会増えたな。

 その度に直樹騙せてるし、俺には俳優の才能があるのかもしれない。目指してみようかな。


 そうやって頭おかしくなった勢いで夢を描きながらも、今日という日は終わりへ近づいていった。

 イライラは増していくばかりだが俺にはどうすることもできず。

 この輪っか、破壊してやろうかとも考えた。

 そもそも春休みあけ、新学期新クラスで心労も激しく、それにミカエルも加われば手の付けようがないのは当然。俺はすごいよくやってると思う。マジで。


 そうして四限の移動教室が終わり、俺と直樹は一緒に教室に帰ろうとしていた。

 

「ん? なんでお前国語の教科書もってきてんの?」


「ああ、間違えただけだよ」


 輪っかを手放すわけにはいかない。

 という訳で面積の大きい国語の教科書に挟んで輪っかを管理していた。

 直前の授業は理科の実験だったし、怪しまれるのは分かり切っていたが仕方ない。

 

 そう思っていた時、廊下の電気が消され暗くなる。


「ああ。暗……ってお前、何その教科書」


 何故か窓にもカーテンが掛かっていることで、廊下が急激に暗くなる。

それ自体はいいのだが、そのせいで国語の教科書が光出した。

 イライラが頂点に達っした。プッツンと何かが切れる音がした。


 なんで国語の教科書が光るんだよ。

 光ってんじゃねえ!! ぶち折るぞ? 将来に役立つことなんも書いてないくせに。


「おい! その教科書みせろよ」


「ちょ、やめろよ」


 直樹が好奇心旺盛に迫って来る。

 俺はそれに抵抗。見せても意味わからんものしかない。

 見られたら終わりだ。今ならまだ、「たまたま国語の教科書が光った」っていう言い訳で誤魔化せるはず。

 誤魔化せないにしても、天使の輪っかなんて意味の分からない答えに辿り着けるはずがないのだから、見られなければ勝てる。

 

「っておわ!?」


 そうやってもめ合っていると輪っかを彼に見られてしまった。

 それだけならどれだけよかっただろう。

 揉め合ったことで直樹がこけ、輪っかをくぐってしまい――。


 一瞬、空気が凍ったように感じた。


「は?」


 そこにいるはずの存在が消失。

 一人になったからなのか、それとも絶望したからなのか、音を拾うはずの耳が機能していないと思うほどの静寂に包まれ、俺の心音だけを的確に拾っていた。


 直樹が、輪っかの中に消えていったのだ。

 彼は無事なのかな? 無事だとしてどこに消えたのかな。


 どういうこと? イライラしてたけど、親友なんだよ。俺の親友返してくれよ。

 もう……泣きそう。助けてミカエル。


見つけていただき、読んでいただきありがとうございます。

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