4
「もっとお互いのことを知るために、デートしませんか?」
「でえと、ってなに」
特に予定もない休日。天気もよかったので社へと向かい、庭でなにやらぼんやりと過ごしている朧に緊張を必死に押し込めながら誘ったデート。
だが彼の第一声は【でえと】とは何ぞや。だった。
基本的にオレが考えなしで話してても伝わるし、向こうの言いたいことも伝わるんだけどたまにこういうのがあるんだよな。
お互いになにが引っ掛かるきっかけになるんだろうか。
「ええ……デートってどう説明すれば伝わるんだ?」
「なんかすること?」
「あ、そう。二人で出かけること」
「なんだ逢い引きか」
朧がどの時代を人の世界で生きてきたのか厳密にわからないからどうだと言えば伝わるんだろうと思案を巡らせているオレに朧が投げてくれたのはなんとも的確な質問だった。
言葉自体を言い換えるのでなくてもいいのだと理解し、問いに頷いて返せば朧はなんだそんなことかと小さく息を吐く。
「逢い引きって……なんか秘密で逢うみたいだな」
「まあオレと出かけたいなら当然遊羅の許可がいるわけだから、密会にはならないけどな」
デートに誘うだけでもこっちは一大イベントだから朧が何とはなしに言った言葉でもドキドキしてしまう。
胸元を抑えながらその感覚に浸っていると、そんな余裕あるのかと首を傾げられ一瞬で冷静になった。
「それはそうだけど。もし遊羅くんがいいよって言ったら朧は行ってくれる? 嫌じゃない?」
「場所にもよるし、遊羅が許可出さなければ楽なのになと考える程度には面倒だけど、首を振るほど嫌かって聞かれると……そこまでではないかなとしか」
「オレが聞き返す必要がないくらい全部答えてくれるじゃん。朧が嫌ってわけじゃないなら遊羅くんに聞いてくるよ」
遊羅くんの許可が必要なのは仕方ないにしろ、それよりもオレが気にかかるのは朧の気持ちだと告げればなんの躊躇いもなくオレが知りたいこと全部真っ直ぐぶつけてくれた。
まあそれがオレへの感情が無関心に近いからだって理解していても、彼が嫌じゃないとハッキリ伝えてくれたことは確かな喜びだ。
オレはさっそく社へと上がり、居間にいる遊羅くんへと許可を求める。
遊羅くんの開口一番は「馬鹿だねえお前」だったけれど、朧は遊羅くんがいいと言えば構わないと言ってくれたと伝えれば盛大なため息の後「じゃあ仕方ねえか」と吐き捨てた。
デートといって、正直どこに行けるのかと思っていたけれど朧、遊羅くん、ダンくんに聞いたら闇市がいいんじゃないかと提案されオレと朧は今、妖を始めとした人ならぬ者たちが開く闇市へと訪れている。
「茶屋街と夏祭りがごちゃ混ぜになってる感じだ」
「有象無象って感じだろ」
社の勝手口から繋がる道を朧に手を引かれながら歩き、辿り着くのは一体どんな場所なのだろうと期待と不安が入り乱れていたが目の前に広がるのは江戸時代とかをイメージしたテーマパークや、夏祭りでよく見る屋台が並んだ光景だった。
並んでいると表現するとなんていうか一列にきっちり、って感じだけどそれとは程遠い。法則性もなく、茶屋と屋台が入り乱れて店が開かれている。
その中を多くの者が歩き回っているからまた、ごちゃごちゃに拍車をかけている。
「闇市って言うからもっと薄暗い……言葉悪いけど治安悪そうなの想像してた」
「人の真似事で始めたもんだってだけだよ」
「ああ、表じゃないからってことか」
無法地帯ではあるが、言葉から受ける陰鬱なイメージと異なっているのは確かだと呟くと朧がこの市場の成り立ちを教えてくれて意味を理解した。
「今は昼間だしな。夜はオレは兎も角、しゆには危ない。冗談でもなんでもなく、喰われるぞ」
「夜までには帰すって約束したから、絶対に帰すよ」
続けられた言葉を口にした朧の声が、低く真摯なものであったので昼と夜とでは治安がまったく変わるのだろう。
それに頷きつつ、遊羅くんとの約束でもあるからと返せば朧は小さな声で「そうして」と言った。
「さて、どうしたいの?」
「朧が嫌じゃなければ、一通り見て回りたいな。こんなに賑やかだとなにがあるのかも見当もつかないし」
「しゆが出かけたかったのにオレに嫌かどうかなんてイチイチ聞かなくていいよ」
「なんで? 二人で出かけてるんだし、キミの好きも嫌いも知りたいから誘ったのに飲み込まれたら意味がない」
着いただけで満足かとでも聞くような声に、まさかと首を振りつつ一先ずは見て回りたいと先を指差すとそんなオレに朧が不思議そうな眼差しを向ける。
自分の意見は不必要だと言われたことの意味が受け入れきれず思わず早口で答えてしまったのだがあまり変わってない表情を見るにイマイチ伝わってないな。
そもそも感覚も価値観も違うから仕方ないか。オレも朧の言ったこと理解できなかったわけだし。
「なんか、しゆって面倒くさいな」
「そりゃ妖からすればそうかもしれないけど」
「別に嫌なことを隠したりしないよ。だからしゆの好きにしてくれると楽」
「そっか、うん。わかった」
相容れないのは朧の面倒だと吐き捨てたのを聞けばわかる。でもため息交じりに続けられた言葉に、オレはまた勝手に嬉しくなって何度も首を振った。
それを見てまた呆れる朧に「迷いそうだから手を繋いでもいいか」と聞いたら流石に「逆上せ上がるな」って怒られた。
その後、朧と市場内を歩いていていくつかわかったことがある。
まず、これだけ人が多いのにどこをどう歩いてもぶつからない。通り自体は広いがあちこちに店がある分道は狭いように感じるのに。
辺りをキョロキョロと見回すオレを気にして朧が傍を歩いてくれるお陰もあってはぐれるってことも相当のことがなければ起こらなさそうだ。
並んでいる店も、人ならぬ者にしか存在や価値がわからない物を売っている店もあれば普通の食堂や甘味屋、青果商の他にも装飾品や食器類なんかの雑貨とかもある。
それと、どうやら現代通貨が使えるらしい。クレカとかは流石に無理っぽいけど、1円玉から1万円札まで使用可能みたいだ。
見たことのない硬貨で支払っている人や、物々交換ってのもあるようで見た限り価値に見合うものであれば渡すものはなんだって構わないのだろう。
ここに至るまでそれを考えてなかった自分に、今更肝が冷えたが安心した。
「なにか気に入ったものはあった?」
「うーん。どれもオレの目には手の届かないモノに見えるよ」
「こんなところにあるような品だ。曰くつきのものもあるから安易に手を出さないのは賢明な判断だと思う」
適当な範囲をぐるり、と一周したところで見えた茶屋でいったん休憩を挟む。
アニメやドラマで見るような赤い布が敷かれている縁台に腰かけ、温かいお茶と羊羹で疲れを癒していると朧がオレに問うた。
ただ尻込みしているのをいいように言っただけだから、賢明だと返されるとなんだか罪悪感があるな。
それが顔に出たのかつい渋い表情を浮かべると、理解できない朧が眉根を顰めた。
「なに」
「あのさあ朧。なにか土産を買いたいんだって言ったら逆上せ上がってるって思う?」
「そんなことじゃ別に思わない。好きにしたら? ただオレにはなんか憑いててもわからないからあんまり物珍しいものじゃない方がいいだろうけど」
「確かに。変なもの買って帰ったら遊羅くんに怒られそうだな」
「ふーん、その心は?」
隠しているようなことでもないので正直にいいものかと伺えば、好きにしたらいいが賛同は出来かねるといった至極真っ当な答えをもらった。
朧は強いけど、そういうの専門外なんだなというのが言葉の端々から伝わってくるので無理を言うまいと頷くと、怒られると思った理由を聞き返される。
聞いてきたのにすぐ顔を逸らしてお茶を啜ってるからどういう意味を持つのかオレでは読み取れないな。
「え? だってオレが無知で危ないもの持って帰ったら、朧に危害が及ぶことになって……それは遊羅くんが一番嫌うことだから」
「ははっ、よくわかってるね」
「最初に牽制されたのもそうだし、何度も言われてるし、怒った顔も見たことあったからね」
オレが社に通えているのも、こうして朧と共に闇市に来られているのも遊羅くんのお陰だ。それは彼との約束の元でもあるからそれを破るわけにはいかないと告げれば朧はそんな遊羅くんのことを「わかりやすい」「過保護だ」とでもいうように肩を揺らして笑った。
そしてまた一口、ずずっとお茶を啜ってからオレを見やる。
「遊羅が怖い?」
唐突に投げられた短い問いかけに、何故だろう。ほんの一言だけど言葉が足りない気がした。
それは「そんなに」というものなのだけど、オレには朧がその言葉を飲み込んだ意味も理由も見当が付かない。
でも、まだ彼らと出逢って日が浅いのだから致し方ないだろう。
「怖くないって言ったらそりゃあ彼がすごい存在だって知ってるから嘘になるよ。彼の強さはオレにはまだ想像の域を出ないっていうかそもそもできる段階でもないし。でもなにかと遊羅くんを引き合いに出すのは彼に怯えてるからじゃないよ。それは朧も同じだろ?」
約束を交わそうとする度に彼の名を出すのは、なんていうか……互いの異なる常識を図るために友達に「親の了承は得ているか?」と聞くのに近い。
だから別に怯えているのとは違うと返しつつ、そうだってつい立て前にしてしまうのは朧にとっても彼が自分の盾であり守ってくれる存在であると知っているからではないのかと問い返せばあからさまにその顔に不本意だって浮かべて黙ってしまった。
ってことは遠からず合ってるって取って良さそうだ。
「それに朧に危険が及ぶことはオレも本意じゃない」
話を戻し、オレ自身も朧を傷付けたいわけじゃないと言葉を続ければ朧は小さな声で「別にそういうことを聞きたいわけでもない」と言って首を振る。
複雑だなあと思いつつそれは心の内に秘めておくこととしよう。
「朧はなにか気になるものあった?」
「そりゃあふかふかで寝心地良さそうな布団はいいなと思うくらいはあるけど買って帰ったって仕様ないよ」
「なるほど」
「社で過ごすのに困ることなんて暇ぐらいだから、別になにか物を欲しいってことはないな。オレは」
「オレは」
「言わずもがな遊羅は暇嫌いだし、逆にダンくんは暇が欲しいだろ」
「確かに」
頻繁にこの場に足を運んでいるって感じでもないけど勝手の知らない場所ではない印象は受けたので、朧自身はなにか目に付いたものはないのかと聞いたらどうやらあまり小物の類には興味がないらしい。
オレと同じように買って帰ってなにかあってもと思うのもあるんだろう。
物に困っているわけじゃないからと言ったのが、物欲は強くないんだと伝わってくるのすごいな。
まあ強調された【オレは】というのが引っ掛かったので突いたら、納得しかない答えが返ってきた。
確かにダンくんはいつも社の中のこと……家事全般をやっているし、遊羅くんは刺激を求めて時折うだうだ言っているのを聞く。
でも何気ない会話で、オレは朧についていいこと知れたかな?
「さて、買うものないなら帰るか」
「え? もう帰る?」
思案しつつ、お茶を飲んでほっこりしていると飽きたのか朧がもういいかと呟く声につい反射で返してしまったが思い切り配慮に欠けてた。
いや、その、としどろもどろになりつつ首を振るオレを朧が不思議な顔で見やる。
「なんかある?」
「不純で大変申し訳ないけど、もう少しいたいかな……。もちろん、朧が疲れたんだって言うなら最優先にするよ」
「疲れてるわけじゃないから、まだしゆが見たいものがあるなら付き合う」
疲れてるわけじゃないって言ってくれたのはありがたいけどハッキリ答えなかったオレが悪いが【まだ一緒にいたい】が伝わらなかった。
行きたいところがあるなら行くかと立ち上がろうとした朧の手首を掴むと、それに気付いて彼の頭がゆるりと傾いた。
「まだ朧と一緒に過ごしたい、んですよね」
「うん? 構わないけどオレこの辺詳しくないよ。あとわかってると思うけど危ないところは行きたくない」
伝わらなかったと思って意を決したつもりだったが、平然と返されると喜びが行き場を失う。
思わず胸元をぎゅ、と握るが朧には益々理解不能なアクションだっただろう。なにやってんのという冷たい視線が突き刺さる。
了承を得たとはいえ、朧が知らぬ地を歩くのもなぁと思案し勘定のついでに試しに店の人に市場を少しだけ離れて散歩する場所はあるかと聞いたら森へ通じる道と、池に通じる道を教えてもらった。
財布の中からお札を何枚か取り出してどれがいいかと問えば、千円札一枚と何故か有効期限の切れたポイントカードを指差されたので両方を渡して茶屋を後にする。
「なんであんなの欲しかったんだろ」
「人間が持ち込むものは比較的なんでも珍しいからな」
森は行って迷い込んでも困るので、近いと言われたし池に行くことにした。
道中でポイントカードを欲しがられた理由が理解できずその疑問をぽつりと零せば目新しいからだと言われ納得した。
闇市場自体が人の真似事で始まったって言ってたから、そういうのが面白いんだろう。
「やっぱりあんまり来ないんだ?」
「元人間ってのは珍しくないだろうが、人の子が来るってのは稀だろうな。そもそも人の子だけでは来られない場所だし、来るべきようなところでもない」
でもポイントカードを持ってる人なんて今や珍しくもないのだから他に誰かが持ち込んでてもと思ったが、生身の人間が珍しいと言われた。返す言葉もない。
そりゃあ人間が妖側に踏み入ってもらいたくないように、妖側も安全な場所に得体の知れない人間が入ってきたら嫌だろう。だから最初に通行証を見せたわけで。
「ははっ、面倒をかけます」
「いつも茶菓子持ってきてくれるし、今日も羊羹奢ってもらったしこれくらいなら気が向いたら付き合ってもいい」
そんな場所にオレのワガママで付き合ってもらっているのだと、軽く頭を下げ謝罪と感謝の意を伝えれば「気が向いたから」となんとも朧らしい答えをもらった。
暇潰し以上、義理堅い未満ってところだろうか。だからこそもっと差し入れをしたら付き合ってくれそうとかじゃないところが本当にいい。
そんな話をしつつ、市場から逸れるための細道に入る。
まだ明かりの灯らぬ提灯の元を少し歩くと突然道が開け、木々が多く立ち並ぶ先に大きな池が現れた。
なんとなく既視感があるなと思ったのだが、すぐにその答えは得た。傍に並ぶ数隻の木の小舟によって。
不忍池辺りで見たことがある。あれはスワンボートだったけれど。
「なんか水っ気があるところ久しぶりに来たな。でっかい水溜まりだ」
図らずしてデートスポットみたいなところに来たもんだ、と思案している横で昔よく見たアニメ映画に出てくる黒猫と同じことを朧がぽろっと零していて笑いそうになったのをなんとか必死に噛み殺す。
動物的観点から見ると海も湖も水溜まりと大して変わらないのだろうか。
「庭広いんだし、池でも作ったら?」
「庭に池って簡単に作れるもん?」
「ごめんものすごい適当なこと言った。それはわかんない」
「あはっ、ふははっ。なんだよそれ」
平静を装ってなんとか前者を拾って話を展開させようとしたが失敗した。
どうやって作るんだって聞かれたら困るからと朧の質問に首を振って謝ったら、なにが面白かったのかケラケラと笑い出してその笑顔の可愛さに胸の奥が痛む。
かわいい、なんて口を衝いてしまいそうになるのをぎゅ、と服の胸元を握り締めて堪えたら一瞬で冷静になった朧に「なにしてんの」と呆れられてしまった。
「庭にあったら水浴びにいいだろうけどな」
「じゃあ次逢う時までに調べておくよ。作れるかどうかは別だけど」
「あんまり期待しないで待ってる」
そしてオレに興味を失くしたように話を戻す朧が零した言葉とは裏腹に【期待をしていない】のはオレがそうだと言わずとも叶わないと知っているからなんだろうなとぼんやり思う。
水って綺麗なものってイメージが強いからもしかしたらあの社にはそういうもの向いてないのかも。これは完全にオレの憶測だから遊羅くんとかダンくんに確認しないとわからないけど。
なんてことを頭の片隅でぐるぐると思案しつつ、突っ立って話していても仕方ないので池の周りを散歩することにした。
「一周どれくらいかな。結構広く見える」
「或いは際限ないか」
「その可能性は考えてなかった。ボートでって言わなくてよかった」
凪いでいる水面を横目に眺めながら歩きつつ、時間がかかるだろうかと今更思い至って呟けばそれらしい答えが返ってきて目から鱗が零れ落ちる。
自分の常識ではなにひとつ測れない、本当に異界というやつだ。楽しさと不安と恐怖が同じ割合で混じり合う。
オレの一歩先を歩く朧が「ボート?」と首を傾げ、振り返って浮かぶ小舟を見て意味を理解したようだ。
「あれは一方通行かもなあ」
「あー、やっぱりよくないやつだったんだ。よかった本当に誘わなくて」
「わかるもの?」
「誘われてるけど、近付きたくないって思うのはよくないものなんだろうなってくらいは」
あまりよくないものに触れた時のような口振りにその意味を理解したのと同時に答えが合っているとわかり、ざわついていた胸中が安堵を滲ませる。
人の子のオレがよくわかったねと言いたげなので、そこに至る経緯があったから出逢ったんじゃないかと視線を向ければこんなことばっかりは口にせずとも伝わったのか「ああ」と言われて終わった。
「景色変わらなくて不安になってきたな。適当なところで引き返そうか朧」
そこから話題が変わるでもなく、続くわけでもなくただ二人で歩いていたのだが辺りを見回してもボートが遠くなるばかりで景色自体が変わらないことに不安を覚え朧に声をかけたが返事がない。
周囲をぐるりと見ても変わらぬ景色の中、朧だけがいない。
「朧ッ!」
しまった、ハッキリ不安を覚える前に声をかけた方がよかったのかもしれない。
オレの不安に朧が巻き込まれたのか、オレだけが姿を消したのか。現状としてはどちらも変わりはしないだろうが。
引き返していいものかと考えているこの時間すら不安に食われて、嫌な予感がする。
加えて、同じ場所にいるはずなのに胸の奥がざわつきはどんどん大きくなるから既にオレはさっきまでと違う場所にいるのかもしれない。
迷子になった時、普通だったらその場を動かない方がいいんだろうが。生憎とここは【普通の場所】じゃない。
「道を引き返すんじゃない、朧を探しに先に進むんだ」
起こす行動としては同じだろうが、この不安を食われてはいけない。だからこそ自分に言い聞かせるように声に出してからオレは池を背にするようにして踵を返し、駆け出した。