第1話 パサパサな青春
ハンバーガーをひと齧りすれば、パンと肉の味がする。
パサパサとしたパンにソースをじっとりと染み込ませた肉の味は、なんだか青春の味のように思えて、あたしは一人笑いをこぼしてしまった。
世の中にはどうしようもないことがある、なんていうことは人生二十年も生きていないあたしでも気付けてしまうどうしようもない現実で、そういうことを横目に見ながら大人になっていくということは、このハンバーガーのパンの端っこでパサパサのまま味気なく終わっていくのと同じことなんだろうなと、トレイに落ちたパサパサのパンのカスを眺めながらあたしは思うのだった。
文化祭がある。高校最後の文化祭だった。あたしのクラスではハンバーガーやピザにポテトチップス、コーラやカップ麺なんかの容器や包装に印刷ラベル、チラシやポスターなんかの広告写真なんかを集めて、ジャンクアートならぬジャンクフードアートを作るとかいう出し物案が採用された。
その準備活動に大半のクラスメイトが放課後も青春の汗を流しながら頑張っている間にあたしはひっそりと予備校に行き、その帰りの夕飯にせめてもの素材集めの協力にとファーストフード店でハンバーガーを食べながら、こんな一人思いに耽っているのがパサパサとしたあたしという人間の青春だった。
「あーあ」
あたしのため息は誰にも聞こえることなく、店内の喧騒に紛れた。窓の外は夜だ。街の灯りに星も見えない夜空が真っ暗に広がっている。あたしはハンバーガーを食べ終えると、セットのポテトを一本ずつつまんで食べる。
指についた油がテカテカと光った。