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未来商会奇譚

サジタリウス未来商会と「予測不能の客」

佐久間という男がいた。

年齢は30代半ば。ベンチャー企業を経営しており、破天荒で大胆な行動力で知られていた。


「成功するのは、予測できない賭けを制するやつだけだ」


そう豪語していた佐久間だが、その生き方の裏には綱渡りのような危うさがあった。

最近では、いくつかの無理な事業拡大が重なり、資金繰りが厳しくなっていた。


「なんとかこのピンチを乗り切れる手段があれば……」


そう考えながら街を歩いていた彼は、ある夜、奇妙な屋台を見つけた。


路地裏の奥にひっそりと灯る明かり。

その下には古びた木製の屋台があり、手書きの看板にはこう書かれている。


「サジタリウス未来商会」


佐久間はその看板に目を留め、興味を引かれた。


「未来商会……?なんだか怪しいが、面白そうだな」


屋台の奥には白髪混じりの髪と長い顎ひげを持つ痩せた初老の男が座っていた。

その男は、佐久間を見てにやりと微笑んだ。


「いらっしゃいませ。今日はどんな未来をお求めですか?」


「未来?どんな商売だか知らないが、俺の悩みを解決してくれるなら話くらい聞こう」


サジタリウスはその言葉に満足そうにうなずいた。


「では、こちらの商品をご覧ください」


そう言って彼が取り出したのは、一見すると普通のクリスタル球だった。


「これは『未来予測球』です」


「未来予測球?」


「ええ。この球を使えば、どんな事業や計画の未来も正確に予測することができます。投資の成功率やビジネスのリスク、さらにはあなたの選択がどのような結果をもたらすかまで、一目で分かる優れものです」


佐久間は目を輝かせた。


「そんなものがあるなら、是非試してみたいな!」


「ただし、使い方には注意が必要です。未来が分かることで、あなたの直感や冒険心が鈍る可能性があります。それでもよろしいですか?」


「直感だって?そんなもの、未来が確実に分かるならいらないさ!」


佐久間は勢いよく未来予測球を手に取った。


早速試してみると、予測球は驚くべき精度を見せた。


「次のプロジェクトはどうだ?」と尋ねると、球が青く光り、成功の確率が「85%」と表示された。

その結果、佐久間は自信を持ってプロジェクトを推進し、大きな利益を上げた。


さらに、別の事業に関して球が「リスク大」と赤く警告を出したため、計画を即座に中止したところ、大きな損失を避けることができた。


「これはすごい!もう俺に失敗はない!」


未来予測球を使うたびに佐久間の事業は順調に進み、会社の業績も急上昇していった。


だが、ある日、奇妙なことが起きた。


新しいプロジェクトについて予測球に尋ねると、球が白く光り、こう表示された。


「予測不能」


「どういうことだ?」


サジタリウスの説明によれば、予測不能とは「未来に多くの不確定要素が重なり、どの結果も決定づけられない状態」を意味しているという。


「つまり、このプロジェクトは進めない方がいいということか?」


「そう解釈するのが無難ですが、あくまで選択はあなた次第です」


だが、佐久間は迷わずプロジェクトを進めることを決めた。


「俺はこの賭けに勝つ。未来が分からないからこそ、やりがいがあるんだ」


その結果、プロジェクトは大成功を収め、会社は一気に業界のトップクラスに躍り出た。


「ほら見ろ、やっぱり未来なんて自分で作るものだ!」


佐久間は予測球に頼ることをやめ、自分の直感と判断を信じるようになった。


しかし、それから数週間後、予測球が突然異常な反応を示し始めた。


佐久間が再び試しに未来を尋ねると、球が激しく揺れ、真っ赤に輝いたのだ。


「危険:即時停止を推奨」


その文字を見た佐久間は顔をしかめた。


「なんだこれは?これまでの予測と違うじゃないか!」


さらに尋ねると、球はどんどん荒れ狂い、まるで壊れたかのように赤と青の光を交互に放つようになった。


困り果てた佐久間は再びサジタリウスの屋台を訪れた。


「おい、この球、どうなってるんだ!?危険だの停止だの、何を警告しているのか分からない!」


サジタリウスはその光景を見て、一瞬だけ冷や汗を浮かべた。


「これは……想定外の事態ですね」


「想定外だって?お前の道具じゃないのか!」


「もちろん私が作ったものですが、これほど未来を読み切れない状態は初めてです」


サジタリウスは慌てて予測球を調べ始めた。


「おそらく、あなたの選択が予測を超えた影響を与え、未来そのものが混乱しているのでしょう」


しばらくして、サジタリウスは予測球を停止させることに成功した。


「これで落ち着きました。しかし、もうこの球を使うことはお勧めしません。あなたの直感と判断が、未来を大きく変えすぎているのです」


佐久間はしばらく無言だったが、やがて吹き出した。


「ははは、面白いじゃないか。結局、俺の未来なんて誰にも読めないんだろう?」


サジタリウスは苦笑しながら答えた。


「その通りです。予測不能な未来を切り開くのが、あなたの本当の才能なのでしょうね」


その後、佐久間は予測球を手放し、これまで通り自分の直感で事業を進めていった。


リスクを恐れず大胆に行動する彼の姿は、部下たちの尊敬を集め、会社はさらに成長を続けた。


「未来が分からないからこそ、人生は面白い」


佐久間はその言葉を胸に、自らの道を突き進むのだった。


【完】

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