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「あの子のときは隠れているしかないから気になります、その点、向谷さんのときは出ていけるからいいですけどね」
「私は和平君といたいからここに来ているわけだけれど、その行動であなたのためにもなれているのなら嬉しいわ」
「……正直、和平の側には私だけがいればいいけど……」
小声でぼそっと吐くスタイルが好きなようだ、あとは対抗するかのように疲れるのに変身しているミキに苦笑する。
無理するなよと言っているのに、猫として近くにいてくれればそれでいいのに分かってもらえない。
「ただ、少し気になることがあるので外に行きますね」
「ちゃんと帰ってこいよ」
「当たり前ですよ」
「私も疲れたから寝てくる」
「おう」
おいおい、これって空気を読まれているわけではないよな? いや、寧がいてもこれまでもいたわけだからたまたまが重なっただけか。
「今日はお祭りだから夕方になったら行きましょう、ミキちゃんも連れてね」
「不思議君は?」
「いるなら連れて行きましょう」
帰ってきたらでいいか、あとはミキがちゃんと猫の姿で休んでくれていればだが。
猫を抱えつつ歩くというのも人間の多さ的にあまりよくはないから願っておくしかない。
「でも、それまでは彼氏君とゆっくりするわ、何故か彼女でもない女の子の頭を撫でたみたいだけど」
「いや、こうして置いただけな、俺と仁菜はべたべた触れ合ったりしていたわけではないから」
「ふーん」
あら、明らかに「そうなのね」と終わらせるつもりはない顔だ。
でも、ここで抱きしめたりとかしても自分が気持ちが悪くなるだけだから大人しく横に座るしかない。
「けれどあなたは約束を守ってくれる人間だものね、疑ったりはしないわ」
「そうか」
「だから今日は思い切り甘えさせてちょうだい」
あくまで健全にやっているだけだから雰囲気が甘々になって我慢しきれなくなってということはない。
彼女はこちらに寄りかかっているだけだ、だから扉が開けられてミキに見られているとしても堂々としていられた。
『和平には私がいればいい』
『確かにありがたいが我慢してくれ』
もう口パクで会話をしたよ。
「もう、すぐにミキちゃんに意識を向けて」
「悪い、呼んでもいいか?」
「いいけれど二人だけの世界を構築するのはやめてちょうだいね」
「しないよ、ミキ」
「私も大人だから大丈夫」
そうだな、俺らよりよっぽど大人の対応というやつができている。
彼女は複雑そうな顔をしていたものの、ミキの頭を撫でつつ「そうね、大人ね」とこちらもまた大人の対応をしていたのだった。




