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転生予定者を轢き殺したトラック運転手、同じ世界に転生して復讐を計画する  作者: 毒の徒華
第二章 旅立ち

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おうさまへ




 アーサーがまだ滞在すると言うので、私はバレストの町の宿の自室でスラムの子供が書いたという手紙を読んでみた。

 ボロボロの安い紙に、ガタガタとした文字で書いてある。


 きょうも パンひとつ だけ

 おなかすいたなあ

 おかあさん きょうも かえってこない

 でも ともだちの ベルギドくんが あそんでくれた

 ときどき たべものをくれる ベルギドくんも おなかすいてるはずなのに

 ぼくらは ひんみん っていうらしい

 へいみん とか きぞく とかは ぼくらより たくさんごはんがたべられるって ベルギドくんがいってた

 いいなあ ぼくも おなかいっぱいたべたい

 そうしたら ベルギドくんにも こんどはぼくが たべものをあげたい

 いつか ぼくらも たくさんたべものを たべられるひがくるといいなあ

 おうさま おねがいします ぼくらにも たべものをたくさんください

 そうしたら おかあさんも きっとかえってくる

 おうさま おねがいします ぼくは いいこにします 

 おとなになったら たくさん くにのために はたらきます

 おねがいします ぼくらを たすけてください

 クリスより


 そこで、手紙は終わっていた。


 それを読んで私は涙が込み上げてきて、堪え切れなかった。ここに誰もいないのが救いだ。良い歳の大人がみっともなく泣いている姿を見られたくはない。

 私が実際に見たスラムの実態と全く同じだ。それだけは間違いない。

 しかし、この手紙は国王までは届かなかったのだろう。配達された痕跡がない。理由は分からないが、この手紙はトムが持っていた。


 仮にこの手紙を国王が読んでいたとしても、この世界情勢は何も変わっていない。

 貧民に対して王都から物資が届いたという話は、聞いたことがないからだ。


 ――ベルギド……どこかで聞いたことがあるような……


 この手紙を書いた子供の名前は知らないが、ベルギドという名前は聞いたことがある。スラムの子供がこの手紙を書いているのだから、当然ベルギドもスラムの住人なんだろうが、思い出せない。「ベルギドくん」と書かれているところをみると、同じく子供なんだろうが……


 ――……あ! あの子か!


 ――過去――――――――――――


「ベルギド、コイツ殺しちまおうぜ」

「……殺すな」

「でも、コイツのモツを売っちまった方が金になるぜ」

「馬鹿が。目先の欲に飛びつくな。おい、いつまでも這いつくばってんじゃねぇ。命だけは助けてやるからさっさと失せろ」


 ――現在――――――――――――


 あの時、私の命を助けてくれた子供だ。

 印象に残っていたのは、あの鋭い目つき。スラムの住民は皆、死んだような目をしているが、あの子供は死んだ目ではなかった。

 スラムの住民すべてが死んだ目をしている訳ではないが、そういう者は少ない。


 ――あの子も、今どうしているだろうか……


 あんな乱暴な子でも、この手紙を書いたクリスに食べ物を分け与える優しさがあることを思うと、私は更に胸が苦しくなって涙が出てくる。


 ――この旅が終わったら、必ずこの手紙を国王に届ける


 顔も知らないクリスに、私はそう約束した。




 ***




 私は焦っていたとマチルダに気づかされた。

 しかし、クリスの手紙を見て焦っていた私が間違っていたとは思わない。

 早くこの旅を終わらせ、目的を果たし、このクリスの手紙を国王に届けてスラムの状況を改善してもらおう。


 そう思った私は、ゆっくりと休んでいるアーサーやマチルダ、バリズにクリスの手紙を見せた。


「早く魔王を倒して、国王にこの手紙を届けたい。私たちがこうしている間にも苦しんでいる子供たちが沢山いる。国名を果たした後であれば、きっと国王は私たちの話を聞いてくれると思う」


 私は必死にアーサーたちに訴えた。

 元よりスラムの問題に私は心を傷めていた。それが、この手紙を見てより一層強まった。

 だから私は1日でも早くこの状況を変えたい。階級制度の撤廃。平等な教育。食料の安定供給……問題が山積みだ。


「そうか。ユフェルの主張は分かったよ」

「じゃあ、今すぐ出発――――」

「そう慌てるな。急いては事を仕損じるというだろう。焦らずに堅実にいくべきだ」


 私の熱意は伝わらず、アーサーは急ぐつもりはないらしい。


「そうよ。大丈夫」

「まぁ、スラムのガキってのは結構しぶといもんな。慌てるなよ」


 マチルダもバリズも私の気持ちは伝わらなかった。


「また慌て過ぎよ、ユフェル。そんなに急いでも失敗するだけよ」

「…………」


 やはり、私の感覚がおかしいのだろうか。

 焦り過ぎなのだろうか。

 私が焦っていて冷静さを欠いているだけなのだろうか。


「すまない。焦ってしまっていた……少し頭を冷やしてくる」


 クリスの手紙を回収して、私は商店街にいるであろうトムを捜しに出た。

 この手紙を書いたクリスのことが聞きたかった。それから、手紙に出てくるベルギドのことも知っていたら教えて欲しい。


 ――トムはスラムでも商売をしているのだろうか


 そんなことを考えながら、私は商店街を練り歩いてトムを捜した。

 いつもどおり、トムはすぐに見つかった。やはり商談をしており、トムは元気に働いている様子。


「トムがこの前卸してくれた魚、凄く美味しかったよ。また卸してくれないか」

「はい。数年前養殖に成功したものです。安く売れますよ」


 いつも通りのトムの様子を見て、複雑な気持ちになる。

 私だけがこんなに気持ちが焦っているのだと、周りを見ると思い知らされる。


「こんにちは、ユフェル様。何かご入用ですか?」

「トムさん、今夜、あの……昨日仕入れた手紙のことで、仕事が終わったら少しお話しできませんか?」

「結構ですよ。それでは夕食でもしながらでどうでしょうか」

「はい。ありがとうございました」


 私はトムと約束を取り付け、宿の自分の部屋に戻ってベッドに身体を投げ出して天井を仰いだ。




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