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最終話? 転生したトラック運転手、復讐を果たした




 で、まぁ、なんやかんやあって、俺は魔王側についたってわけだ。


 あのクソ野郎が魔王を倒そうとしてるってんだから、じゃあ俺は魔王側に付くっていう算段よ。

 敵の敵は味方っていう理論あるだろ。あれだよあれ。

 そうすればいずれノコノコ魔王城にやってくるんだから、別に焦る必要はない。

 準備に準備を重ねて俺はそのクソ野郎を魔王城で待っていた。


 俺とクソ野郎の転生した世界での年齢差は、6歳から7歳くらいだ。俺が裁判中、刑務所行ったとき、出所後の生きてる時間を足した分の時間差があった。いくら転生者が前世の記憶を受け継いでるからって6歳か7歳で魔王城まで来る訳がないと思ったし。


 何故かって?


 転生前のあのクソ野郎は35歳の無職ニートだったんだとよ。

 35歳でずっと親のすねかじりしてたニートが、生まれ変わった途端にやる気出して外に出る訳ないと思った。

 これは元警察官としての経験則だ。2年だけだったけど、色んなろくでなしを見てきたからな。

 それにあのクソ野郎は、あの時たまたま家から最寄りのコンビニに煙草を買いに出ただけで、親の証言ではずっとひきこもってたらしいし。そんなもんを轢き殺しちまった俺も本当に運がないと思ったわ。

 何より、この世界での制度は「20歳になったら働きに出なければならない」っていうもんで、逆に言うなら20歳までは働かなくてもいいっていうんだからいい気なもんだ。元々ニートのあのクソ野郎が、働かなくてもいい20歳前にわざわざ働くと思うか?


 答えは「NO」だ。


 天性の怠け癖ってのはそう簡単に変わらないもんさ。記憶を引き継いでるんだから当然そうなるだろうな。甘やかされて育ったダメ人間が、文字通り生まれ変わったからって、シャキッとする訳ないんだよ。

 そんなクソ野郎が急にアウトドアに目覚めて、居心地のいい家からわざわざ出て魔王城に攻め込むとは考えづらいわな。

 だから俺は念入りに準備をして待ってた。


 そして俺の予想通り、あのクソ野郎は20歳まで働きに出なかった。

 働くとかなんとかいうと聞こえはいいけど「魔王退治」なんて仕事でも何でもない。やたらに周りを騒がせて、生まれ変わっても迷惑な奴だ。


 で、ついにその時がきた。


 ついに魔王と勇者パーティの一騎打ち! 正々堂々と勝負!


 ……とは、ならないんだよな。


 あのクソ野郎は俺が入念に準備した罠にどっぷりハマって簡単に一捻りさ。

 魔王の圧勝。

 というよりも、俺の圧勝だった。

 思う存分絶望のどん底に叩き落してやった。


 俺はとても気分がいい! 最高だ! 悪人ってのは思ってたよりずっと気分が良いな! 完膚なきまでにあのクソ野郎に屈辱を与えてやったのさ! 努力が報われるってのは気分が良いぜ!


 変に元警察官魂みたいなプライドなんて持ってても、何の役にも立たなかった。

 気づくのが遅すぎたぜ。

 もっと早く気づいていれば、俺の前の人生ももっと違った方向に行っていたかもしれない。


 まぁ、とどのつまり、この世の正義が勝つことはなかったって訳。

 俺の暗躍でな。

 でも俺はあのクソ野郎が正義だったとは微塵も思わない。俺の話を全部聞けば、どれほど奴がクソ野郎かってことが分かるだろうが、もう終わったことだ。終わったことを蒸し返しても仕方ないだろ?


 …………何? 復讐劇のそのドロドロしたなんやかんやの過程の部分が聞きたいって?


 結末が分かってる話の何が面白いってんだよ。

 ネタバレされた作品を見てても面白くないだろ。

 俺だって小学校の時に、友達に「主人公が最後に死ぬ」なんて最悪のネタバレされて超絶萎えたもんだ。


 どうしても聞きたいって言うなら俺はここで一度舞台を降りる。


 普通、物語っていうのは何がどうなっているか分からない方向から、徐々に分かっていく方が面白いもんだろ?


 でも結局、俺が言った通り結末は同じだけどな。


 だから……と言ってあのクソ野郎の視点で話を語らせたら大変な事になりそうだ。

 なにせ、放送事故の塊みたいな男だからな。俺が「クソ野郎」って言ってるのは別に揶揄やゆして言ってる訳じゃない。正真正銘のクソ野郎さ。それ以外の言葉が見つからないくらいだ。


 ここは語り部を1人用意しようじゃないか。


 魔王が語り部では面白味に欠けるし、クソ野郎では下品な話ばかりになってしまう。ここは最終的に一番まともだった奴に語り部を任せようと思う。俺もそいつのことは一枚買ってるんだ。

 俺とあのクソ野郎の物語を語らせるに不足はない。


 途中からあのクソ野郎と一緒に魔王城を目指した僧侶の男を、俺は語り部に指名する。

 あのクソ野郎の側面も知っているし、何より大事なのは俺の事を良く知らないところが良いところだ。

 もし俺のことを詳しく知っていたら、きっとこの物語は全く面白くなくなってしまう。


 悪役っていうのは優秀な程、表には出ずに暗躍しているものだ。それがクライマックスになったとき、一気に明るみになるのが一番面白いところなんだから、俺の仕込みを全部分かっていたら、タネの分かってる手品のように面白味がなくなってしまうだろ?


 それに、悪役が徹頭徹尾悪役で何の改心もせずに、ただただ泥臭い復讐をしているだけの話なんて見れたものじゃない。俺の視点の物語もただの放送事故だ。だから親切に省略してやった。ありがたいだろ?


 でも、語り部は違う奴に任せても、この話は最初から最後まで俺の復讐の話さ。

 何も分からない無知な語り部の、愚かな解釈がなければこの話は成立しない。


 まぁ、物語の結末をネタバレした俺に対して文句があるなら聞いてやる。

 どんなに文句を言っても結末は変わらないけどな。


 勝つのは俺。

 負けるのはクソ野郎。


 これは泥臭い復讐劇の話さ。




主人公視点は一度ここで幕引きになります。

次話から第三者視点の話となります。


ブックマークと評価いただけたら大変嬉しいです!

どんなに人気がなくても、絶対失踪せず、投げやりにならずに最後まで書ききります!

よろしくお願いいたします!

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