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体験 ホラー小噺  作者: せろり
5/10

ほんとにあった……

過去にどっかで書いた記憶があったのですが、見つける根性が潰えたのでこちらに。


あれはまだわたくしが二十歳かそこらのバンギャやってた頃であります。

当時品川のとある廃墟のそばにある長屋に暮らしておりました。

品川大田あたりは、まだ長屋があちこちに残っており、そのノスタルジックな風情と激安すぎる家賃に惹かれ、そんな場所ばかりを渡り歩いていた頃です。


友人がやってる怪しげな飲み屋で、友人たちの対バンライブの帰り。ほろ酔いでふらりふらりと帰宅していた丑三つ時。

片手にワイン瓶を掲げ、時折飲んでは道端に寄ってはまた飲んで、とゴキゲンに歩いていた春の夜のことです。


長年わたくし、花粉症と蓄膿症で鼻が弱く、詰まると呼吸がしづらいのです。


その瞬間も鼻がムズムズとしだし、鼻の奥から何か固形物がひらひらと蠢き、くすぐったいやらむず痒いやら。

名誉のため、普段は柔祇などでこよりを作り取り除くのだと記させてくださいませ。

ただ、このときは悪魔の囁きとでもいいましょうか、刹那の快楽を望んでしまったのです。


ああどうせ深夜だ。誰も見てねぇ。ほら、指突っ込んでほじっちまえよ。。。と。



そうです。わたくしは乙女であるにも関わらず、公道のど真ん中で、深夜の住宅街で。

鼻に指を突っ込むという浅ましい快楽に身を委ねてしまったのです。


右よーし!

左。。。ん、ちょっと待って。なんで奥に。。。いっちゃうの?そこなの、もうちょっとなの!いいところに触れてるのに。。。!




そんな事を考えつつ、ホジホジ。



ふと、廃墟が目に止まりました。


崩れ落ちそうなブロック塀と、それを支えるがごとく寄り添う電信柱。

塗り直されることのない真っ黒な壁と、ボロボロと不気味に垂れ下がる木目板の扉。


不思議とその空間だけはどんよりと空気が淀んでいるように重くまとわりついてくるので、普段から好きではありません。

サッサと通り過ぎよう、と足早に歩きつつも、まだ取れずにいる鼻く●と指は忙しなく格闘を続けます。

そろそろ落ちろ!と指がぐっと奥に潜り込んだ瞬間でした。


ふと、視界に何かが映り込んで。


ふと、こちらをみつめる視線に気がついて。



『見られた?!ハナホジってるとこ見られた?!』と酔った頭でも羞恥を感じ、視線をそちらに泳がせると。



こけだらけのブロック壁と電柱で隙間のないはずのその隙間に。


女性と思わしき人が、これでもかと目を見開いてわたしを見ているではありませんか。。。!!



どこかはっきりとは認識できない風貌。

虚ろとしか言えない存在感。

此の世の方ではないとはっきりと認識しました。


『見てない!わたしは見てない!そのまま通り過ぎてしまえ!!!何気ないかんじで!』

と、わたしは歩を進め、一歩、二歩、三歩、と電信柱から通り過ぎ



通り過ぎようとした私と電信柱の間のその存在が重なる瞬間に。


『せっかく、やっと、見える人に会えたと思ったのに、鼻くそ掘ってんなよ』


と。



ゾワゾワーっと背筋を小虫が走るような悪寒に襲われ、わたしは走って逃げたのでした



嘘のようなホントの話

これにて一旦簡潔に簡単に本作は完了終了とさせていただきます。


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