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体験 ホラー小噺  作者: せろり
2/9

小さな旅



わたしが幼少期から悪ガキ期を過ごしたのは、釧路という当時道東最大の人口を誇るそれなりに栄えた?都市だった。(人口二十万人はいたんだ。今は16万人を切りそうですが(泣))

ただ、当時から炭鉱は先細り、漁業はかつてのニシン御殿は夢の果て。街が依存してたであろう製紙工場は撤退の意を見せだしていて、子供心に不安ではあった。この街どうなるんだろう?と。バブル期だったはずなのに地方はそんなに恩恵受けてないっていう良い例だ。


そんな愛すべき我が懐かしき街。

ここにサイクリングロードができた。昭和53年開設とあるので、子供時代の記憶としても合ってる。

良かった。

最近のボケ出してきた記憶が間違えてないと調べて一安心。

昭和橋だったか。仁々志別川の橋のあたりからスタートする。

ただひたすら真っ直ぐにと直線道が伸びる。

舗装された自転車専用道路は子供心にキラキラ光って見えた。


そんな自転車爆走確実な道が、20キロほど行くと山花(地名)の動物園があると聞いたら居ても立っても居られない。

いつもは大人に車出してもらわないと連れて行ってもらえない動物園に子供だけで行けるんじゃないか?!と悪ガキ仲間でワクワクしたもんだ。

当時小学一年生である。

当然補助輪外れたばかりのヤンチャキッズな頃で、本人の体力の底なんて考えも及ばない頃だ。

絶対象を見るんだ!回転空中ブランコに乗るんだ!と謎の使命感に駆られ、いつもつるんでた悪ガキッズ仲間と計画を立てるのだった。

(武家屋敷のくだりでもお気づきかもしれないが、相当悪ガキッズだったわたしは、常に遊んでるのは男児ばかりだった。一昔前なら紅一点とか、今ならヲタサーの姫

とか言うかもしれないが、そんなことはまったくない。

多分私のことは男だと思われていたと思う。毎日ジャージ上下だったし、お気に入りは広島カープの帽子だったし。毎回巨人ファンな奴らと野球中継のあとはどっちがよりかっこいい球団かバトルしたもんです。(なお、今はヤクルトスワローズ推しですが。)


まぁ、そんなわけで、子供なりにバツグンに素晴らしい計画をたてつつも、当時公園にたまにくる紙芝居屋のおっちゃんからどうすればメガネ飴を上手いことゲット出来るかとか、紙芝居屋のおっちゃんのメンコや釘刺し、ベーゴマに勝つにはどうしたらいいのかに頭を悩ませながら、冒険決行の日はやってくるのです。(50円払って勝負して勝つとメガネ飴という割り箸の持ち手が立派なベッコウ飴がもらえて、負けると紐付き飴だった。50円欲しさに空き瓶拾ったりして酒屋に売りに行って、あとから親にバレて怒られたりしてたので金額に間違いはないと思う。)


確か飛び石ゴールデンウイークだったと思う。当時はまだ暦通りというか、欧米なみの大型連休にという意識が日本にはまだ浸透してなくて、ごく普通に平日と祝日は暦通り。間に平日あって、可愛そうだねぇでもしょうがないねぇって時代。

そんな休みは大人は旅行とか動物園とかは連れてってくれない。たいていどこの父親も、ばん馬競馬か、日活映画いっちゃう(当時はなぜかブルーフィルムって言ってたけど、意味はわからない)

休みの日に公園に遊びに行くときは、遊びに夢中でどうせ帰ってこないか、誰かの家(しかも公園で遊んで意気投合しただけの知らない子の家)に上がり込んでごはんをご馳走になるという、今にして思えば親泣かせな所業を繰り返していたせいだろうか?

水筒に麦茶を満タンに、リュックなんてカッコいいものは無くナップサック(でかい巾着袋みたいなの。わかるかな?)におにぎりを入れてもらって朝から出かけるのがわたしたち悪ガキ仲間では当然だった。


たしか、花の子ルンルンだったか、キャンディキャンディだったか。興味がなかったので記憶も薄いが、そんなイラストの書いてある唯一わたしがおなごだと主張してる子供用自転車に意気揚々と乗り、渡ったらだめだと言われてる橋を渡り、いざサイクリングロード。


軽快に走りながら、鶴野の休憩所をめざす。当時は第一休憩所と呼んでいた気がする。

ここで全員でほぼ麦茶飲み切る。あほである。

それから『俺のチャリはデコトラだから強い!』とか『パラリラパラリラ〜♪』等と叫びながら、多分蛇行運転もしながら、元気に次の休憩所である北斗を目指していく。

このあたりまでは平常運行だ。

幼馴染2人、幼稚園からの友達、そして小学校で意気投合した奴らの確か10人近い1年生軍団である。(しかもすでに入学1ヶ月程度で学校を抜け出し駄菓子屋にいって腹ごしらえをしてくるなどの鬼の所業もやらかしている根っからの悪ガキ連中である。)

競争だの、蛇行だのとアホな運転しまくりだ。



当時、まだまっさらというか新しいスポットであるサイクリングロード。

それなりに人は居たはずなのに、記憶の中に大人の影はない。

抜けるような青空の下、真っすぐに伸びた道には、我々ガキンチョ軍団の独占かのように私達しか居なかった。

自分たちよりも背の高い雑草が道の両端に生い茂り。

どこまでも自転車を漕げば自由で、仲間たちがいれば怖いものなしな無敵感。

ぐんぐんと自転車のペダルを漕ぎ。

流行りのアニメの歌を歌い、なぜか校歌も歌った気がする。開放感とか高揚に無駄に元気な1年生である。

休憩所についた。水筒をひっくり返しても何も出てこない。

そのうち、『ここにカエルの卵があるって兄貴から聞いた』と言い出すのがいて、じゃあ水があるはずだからそれを汲もう!とか言い出すのがいる。

アホである。何度もいうがアホである。

休憩所から少し離れたところに謎の崩れた壁があって、その裏手に水があるんだ!とか、花壇みたいなレンガがあってそこもカエルがいるっていうから、そこに行けばいいんじゃないか?とか言い出すのでワクワクと探す。

気分は勇気あるアマゾンのジャングルを行く探検隊である。


さて。ここで1つ。

これはこの記憶を留めるのに調べて知ったので、つい昨日知ったのだが、この道はみんな大好き雄別炭鉱の石炭を運ぶための鉄道線路跡に造られたものなのだそう。

当時は知らなかった。むしろ数十年の時を超えて昨日知った。

あの謎の花壇が実は駅のあとだったとか、何気にブルってる。


そう。

カエルだ水だと探してたら何処からともなく【ガタンゴトンガタンゴトン。。。ボーーーー。。。ボーーーー。。。。】と汽笛の音と列車が線路を走る音がどこか遠くで聞こえるのだ。


崩れた壁の近くでわちゃわちゃとカエルだバッタだと大騒ぎしていた。

とてもいい天気の5月の昼下りだ。

濃霧で有名な釧路だが、5月はあまり濃霧は発生しない。

みんな、どっかで汽車が走ってるなぁとしか思ってなかったし、実際汽笛のマネをしてそのまま動物園を目指したので覚えている。


結局水場は見つからず、(たしか水道があったが、子供の力で蛇口が開かなかった)サクマドロップスを持ってきていた子から『白は嫌だ!チョコがいい!』などと色付き飴を強奪し、再び動物園を目指した。

そろそろかなぁ?まだかなぁ?と真っすぐな道にも飽きてきた頃。

どこかの酪農家の家が脇道に見えて、誰かが『水もらおう!』とか言い出した。

ちびっちゃい子どもたちが10人近く。突然『お水分けてくださーい!』と飛び込んできたのだからきっと驚いただろう。


それでも、分けてくれたのだったか、勝手に持ってけと言われたのかは忘れたが、手押しポンプの水道にワクワクしたので、貰えたのだろう。

その時に『こどもだけか?大人はどうした』とか言われた気がする。

適当にあとからくる!とか答えたんだろうか。

お弁当あるならここで食ってけとなったんだか、腹が減って食べだしたんだったか。

牛ふん臭いからやだなぁと思った。

老人だったか、おばさんだったのかは定かではないが『この道は幽霊列車が出るから大人を待て』と言われたんだ。


再放送の白黒でゲゲゲの鬼太郎を見たばかりで、幽霊列車という言葉がものすごく怖かった。(ちなみに今でもトラウマアニメのひとつである。サイボーグ009の最終回だったか映画だったかもトラウマアニメだし、妖怪人間ベムのオープニングも、ギャン泣きしたくらいのトラウマアニメだ。)

なんとなく薄ら寒くなり、自分たちは大丈夫!と再び動物園を目指した。




結論としては、動物園でおまわりさんが待ち構えていて、結局全員親が迎えに来てゲンコツ張られたんだ。





その後、というか、高学年になっても何度かサイクリングロードで遊んだし中学の頃はマラソン大会といえばここを走らされたが、結構な割合で汽笛の音は何度も聞いていた。

気にもしたこと無かった。


※そしてここは大事なことなのに書き忘れてたんだけど。

『サイクリングロード近くに使用されてる鉄道線路はない』のだ。


今にして思えば、怪異ってのはその土地の記憶なのかもしれない。

土地の記憶のレコードが再生されているのかもしれないというお話です。


信じるか信じないかはアナタ次第です(言いたいだけだろうって?バレたか)

ひっそりと土地には記憶が刻まれているのかもしれない。

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