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体験 ホラー小噺  作者: せろり


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13/14

本当に怖いのは【思念】

学生時代の話です。

バイトに精を出してはギターだのアンプだのに力を注いでおりましたわたくし。

実入りのいいバイトが欲しい!!とよく友人たちに愚痴っては紹介して貰っておりました。

当時、時間拘束も少なめで割と時給のいいのは引っ越しスタッフでしたし、時給はいいし拘束時間は短いけどグロ耐性が無いとえらいことになるのは事故現場の清掃でした(昭和世代の謎バイトですね。) あとは正月時期限定の訪問系餅売りのバイトも売れば売るほど美味しかったです(これは販元がブラック寄りのグレー)

ちなみに割のいいと言われる治験バイトはやったことないです。

そんな感じでバイトとバンドとバイトに全力投球しまくってましたので成績と、卒業できたかについては…ノーコメント。若気の至りってやつですね。

そんな私が体験したちょっと身震いした経験をひとつ。


ある日、友人Aの彼氏の叔父(この時点でかなり遠い人間関係ですね)が所有する賃貸マンションの空き家清掃という単発バイトを持ちかけられたんです。

業者を入れるのが憚られるのか、単にお安くあげたかったのかは不明ですが、二萬やるから掃除して終わったらカメラで部屋の中写真撮ってきてって頼まれまして。昼ご飯もご馳走するから!と誘われ喜び勇んでバイトを引き受けました。

某赤い電車の線路の近くのマンションで、7階建てだったかな?結構高いのにエレベーターが無いっていうマンションは階段で上がるのダル!って思いながら6階の空き部屋へと、バイトに誘った友人彼氏の先輩と、友人Bとわたしという3人の学生と、友人彼氏の叔父の自称弟さん(ただし血縁ではない)というメンバーで訪れたのです。

弟さんが鍵を開け「驚かない、叫ばないを約束してね?」と言いながら重い鉄?のドアを開けて薄暗闇の部屋へと入りました。

退去してからまだそんなに時間がたってないと聞いていたその部屋は、謎の御香の香りとどこか泥のような変な匂いがしてました。

ムァ…っと濁った空気というか、どこか澱んだ空気がドアを開けた瞬間からこちらを包み込む様で、なんだこの部屋…と思いながら、足を踏み入れました。

玄関から細い廊下と、多分手洗い場のドア、その横にお風呂場のガラス戸、奥にリビングと和室という作りだったと思います。

普通に白い壁が廊下を挟んで、奥のドアがリビングと廊下の境界でした。

まずそこで写真を撮って、先に弟さんと先輩とが奥の部屋へと進んで行きます。

先に入った先輩からドア越しに「お前ら入ってくるな!」と慌てた怒号が浴びせられました。

え?と思った瞬間には後の祭り。

狭い廊下でたたらを踏んだ友人の背中を押す形で、リビングへと入ってしまいました。

リビングは本来なら白い壁が真っ黒に塗り込められ、真っ黒な床にどす黒い白い線で魔法陣がど真ん中に描かれ、蝋燭が溶け燃えた跡と、真ん中には何かが焦げた皿?が置かれてました。

窓ガラスも真っ黒な板か何かで目張りされていて、細い隙間から入り込む光源が埃をひらひらと光らせていて、幻想的でありながら、背中がゾワッとしたんです。

「なんすかこれぇ」

友人がうへぇ…と眉をひそめる先にはグチャドロとしたプラスチックの透明なはずの虫かごが何個も密閉されていて、なんか見てはいけない何かが骸になってる…。

どうもムカデやねずっちやら虫やらが入ってたっぽいけど、どーみても「腐ってやがる…」思わず有名なアニメ映画の某セリフを口走るくらい、わたしも挙動不審になってしまいました。

見た瞬間には(あー、蠱毒かぁ)って思ってましたが、一応バンドやってる尖ったつもりの隠れヲタク。アニメ知識に思われるセリフは口走りません。

「叫ばないでって言った意味わかった?」

と弟さんがうんざりとした声で教えてくれました。

実は一度、契約してる清掃会社を入れたそうです。

その時にはユニットバスの方がもっと酷い有り様だったようで、清掃会社からの苦情で現状復帰は請け負えないと断られたそうで。

とりあえず蠱毒モドキを無言でゴミ袋へと先輩がぶち込んで、窓枠に打ち付けられたベニア板を剥がし、空気の入れ方を…と動き出しました。

外の光がありがたい…太陽って素晴らしい…!と友人と感動してしまうほど、太陽の明かりに癒されるほど、光りに照らされたリビングは恐ろしいものでした。

壁一面真っ黒だと思ったものは、延々と細かい細かい細かい文字で書き込まれた呪詛でした。

どうやら彼氏?か?不倫相手?なのかそれっぽい男性へと向けられた恨みつらみがびっしりと書き込まれていて、時折赤黒い線で『指先で直に書き込まれた名前』や、狂ったような愛の言葉とそこに重ねられた終焉を望む言葉。

読みたくないけど怖いもの見たさで読んじゃうよね。読んだ途端後悔するのに、また見つけると読んでました。

全体の写真を撮る、そしたら寄っていって細かい写真を撮る…を繰り返し、洗剤やらなんやらでとりあえず掃除してみて、消せそうかを確認。

リビングそのものは復旧不可能と判断し、次はキッチンへ。

普通の備え付けなキッチンは水を流してみるけど、流れない。

なんでだろ~?と友人とシンク下の備え付け扉を開けて確認。

普通に灰色の蛇腹なビニル管?がU字にくっついてる。

特にここは何も書いてないし、変なものも置いてないとホッとしつつ、試しに流した水だけでも流しきらねば、とシンクの排水溝の蓋を友人が取り外した瞬間、叫びました。

「いやぁぁ!!なにこれぇ!!」友人が尻もちついて、ガチ目に嫌がってて、覗き見たわたしもめちゃくちゃ後悔しました。

小さなぬいぐるみのキーチェーンがついている鍵?が長い女性の髪の毛っぽいモノでぐるぐる巻きにされて押し込まれてました…。

え…触りたくない…とゴム手袋した状態でも拒否感が喉の奥から沸き上がるんですよ。

「叫ばないでって言ったじゃん!下、●●一家の事務所あるんだから!怖いお兄さん達来ちゃうでしょ?!」って弟さんが言い出したセリフも恐怖でしたね。

そういう後出しは本当にやめてほしい…。

そう言いながらも弟さんに指さして中を見て!と言うと「うわ…」と叫びかけてましたが。

その後先輩が割り箸を駆使し、取り出してゴミ袋へとinしてくれて、お水は無事流れました…。

もちろん半分泣きながらシンクの写真は撮ったあとです。

取り出したぬいぐるみは腹を裂かれて、中から髪の毛っぽい何かがみっしりしてました…。

それでもキッチンはまだ使えると弟さんが判断して、次に奥の部屋、多分寝室へと襖を開け、開けた途端に4人で諦めて1回閉じました。

「怖すぎるだろあれ…。」

「バッチリ見ちゃいました。うなされる自信しかない。」

「あれはやばい。触れるな危険だよ絶対」

「諦めて帰ろう。一部屋くらい負債物件だと思って諦めるように伝えるよ。」

先輩、友人、わたし、弟さんで震えつつも、写真はいるよね、ともう一度襖を開け放ちます。

木箱か段ボールかは忘れましたがどっからどう見ても祭壇がドドンッと鎮座しておりまして。

着物の腰ひもわかります?

その着物の着付けの時に使う紐で、男性マネキンの首が天井から多分10個以上ぶら下がり、それがまたびっしりと呪詛が書いてあったり目のところをマジック?か何かで塗りつくされてたり、お化け屋敷より怖い加工がされてるんですよ。

祭壇っぽい何かの上にはエロい目的で使う人形わかるかな? その人形がインリン・オブ・ジョイトイで有名になったポーズで縛られた状態で斬り刻まれてる。顔に写真が貼られてて、それが多分女の人の写真だとは判別出来るけど、顔はわからん、なくらいにグサグサされてる…。

なんかもう無性に泣きたくなってきて、とりあえずお人形はそこから降ろしてあげてから、持ってきてたビニールシートで包んで、祭壇とマネキンだけ写真に納めて4人で項垂れながら、帰ろうか…と弟さんに言われて部屋を出ました。

階段をなんとなく無言で清掃用に持ってきた道具を抱えて降りて行くと、マンションの入り口で怖い系お兄さんたちが待っておりました…。

一難去ってまた一難か?!と身構えると、濃紺スーツ(ただし銀っぽい縦縞)に尖ったピッカピカな革靴の色サングラスという【あからさまにパンピーじゃない】空気感のお兄さんが

「キチ女の部屋の関係者かぃ?」と。

「●●不動産の何々で、状態確認と清掃に…」ウンタラカンタラと弟さんが応えておりまして、我々学生は道具を車に持っていっていいものか?このまま立ってるべきか?…と視線を交わしつつ、内心ブルって動けないっていう(笑)

弟さんと、やばい系兄さんが何やら話してて弟さんから「ワゴン車に道具しまって待ってて!バイト代払わなきゃだしね。」と兄さんたちとまた階段を上がっていきまして。

そそくさと道具を抱えて駐車場のワゴン車へ移動しつつ、「やばいですよねうちら帰れるの?(友人)」とか「バイト代いらんから逃げよう!(わたし)」とか「あの人がもし戻れなかったら女の子2人で交番に駆け込んで!(先輩が一番マトモ…)」とかこそこそ話し合い、どーする?どーする?と3人寄れば文殊の知恵とばかりに頭を寄せてましたら、やばい系お兄さんのお仲間さんっぽいイカツぃお兄さんたちが2人、「あー、いたいた!ほら、飲め」と缶コーヒーを奢ってくれました。いらないぃぃぃ!!!と思いつつ、ヘラっと笑って「いただきまーす!わぁ喉乾いてましたぁ!」と受け取るよね?!断る選択肢ないよね?!

そのまま近くの夏のお祭りの話とか聞かされつつ、弟さん早く帰ってきてぇぇぇ!!と内心絶叫しておりました。

コーヒーも飲み終わり、居た堪れない…タバコ吸いてぇ…とか思いつつ待っていると弟さんと、ヤバい系お兄さんが笑い合いながらやってきまして、

弟さんからはバイト代と、お兄さんからは何やら迷惑料との名目で白い紙に包まれた数枚の萬札を頂戴してその場解散を言い渡されまして。  

友人と先輩と、こそこそっと退散いたしました。

そのまま駅近くのファミレスで3人でブルって、しばらく時間を潰し(もしかして追跡されてたら、とか色々悩んで)先輩が泊まっていくか?と言うので友人とお邪魔しまして。その後友人と先輩がお付き合いしたとか後から聞かされつつ、後日談。




どうやら退去した女性は、●●一家の方のお身内とお付き合いがあったとか。 何度も事務所前で泣き叫んだりなんだりがあったり、すったもんだがあったりで、あまりにも常軌を逸して居るので病院へ入ったっぽいとか何とか。その後、件の部屋は事務所の方がお借りして待機部屋にしてるとか黒い壁をさらに普通に塗り塗りしてビデオの編集に使ってる、とか。

退去した女性のお身内にどうにかして連絡して部屋の復旧費用は回収できたとかなんとか聞かされつつ、見たことは忘れろと。

即座にサー!イエッサー!と敬礼したものです。


尚、祭壇っぽい何かから下ろしてあげたお人形。

わざわざ腹にぬいぐるみと魚肉ソーセージを詰め込まれていたそうです。

そんな詳細いらん!と友人彼氏くんを睨んだのはいいとして。


私たち3人にしばらく無言電話と無言の奥でスー…スー…と呼吸音だけの電話が深夜続いたのは、無関係だと思いたいです。

そんな懐かしい思い出話でしたが、いかがでしょうか?













怖いかと言えばそんなに怖くはないかもしれない…。

ただ

そこまで思いを込めるほど愛憎ってのは表裏一体なのかもしれませんね。

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