林間学校といえば
うちの末っ子ボンが林間学校へ行くので、思い出した『林間学校の怪』をばちらちらと書いていこうかと思います。
何度か書いてるかとは思いますが、わたくし北海道出身でして。
中卒までは北海道におりました。
野山を駆け巡り毒草採取に励む星の子ならぬアホの子でありましたが、まぁそれなりに野生児でございました。
大体の当時の子供らは毒草採取はしてなくとも、野山駆け回り遊んではおりましたのよ?
「この草食えるやつ!」とか「こごみあったから夕飯にしてもらう!」とか言いながら友達と摘んで帰った記憶もありつつ、川で釣りしたり、小さく堰き止めて魚捕まえたり、捕まえたらそりゃ焼くよね!と焚き火してみたりとそこそこ悪さもしておりました。紫陽花の木で串にしちゃいかんと教えてくれたのも悪たれ仲間の学年上のお兄ちゃん(名前なんぞ知らん。いつも行く空き地に居たので大体気がつくと遊んでもらってた)でした。
そんな我らも学校主導のキャンプや林間学校は楽しみだったりしまして。
林間学校へ行く事前準備として校庭にテント立ててキャンプさせてもらったり(学年行事)、今考えると校庭で焚き火したりキャンプファイヤーしたり花火したりって凄いことやってたのね、なんて思いますが、時代的にゆるーい時代だったんでしょう。
飯盒炊爨も余裕な悪たれな我ら。林間学校へ行く楽しみとして一番だったのは『百物語』。
そう、ろうそく立てて怪談話して一人づつ消していくアレですよ。
5年生で初林間学校なのですが
我々がお借りするのはみんな大好き某心霊現象で有名な◯◯炭鉱跡のあった集落の近くの空き家郡になってる住宅団地の一角。
どうやら市の保養施設としてまだ使える空き家はそうやって使おうとしてた時代だったようです(軽く黒歴史なのでしょうか?資料としては公的な残ってませんでしたが、林間学校のしおりには場所名バッチリ残ってるという)。
場所としてもさもありなんなのですが、そりゃ心霊現象期待するよね!だって子供だもの!と林間学校前になると図書室の貸出件数が5年生は怪談系本で埋まるという(笑)
なので誰がどの話を披露するかはなんとなく想像が付くわけです。でも言わぬが花。だって楽しみなんだもの!
ワクワクとドキドキとほんの少しの家を離れてクラスメートとのお泊りっていう非日常への不安感を抱えていざ行かん林間学校!
バスに揺られて到着して早々にくっそ長い校長の話やら、なんか偉そうな先生の何もしてないうちからお説教を聞き流し、林間学校といえばカレーだよな!とカレーを作らされ、オリエンテーションと称され山歩きをさせられ(疲れさせて寝かせられる作戦と思われる)、ワクワクの消灯時間となりました。
団体行動イコールみんな一緒という、雑な「班」ですらないみっちみちと敷き詰められた布団の上にそれぞれが座り、ろうそくは流石にマズいだろうと懐中電灯をこっそりと全員が持ちより、いざ百物語のスタートです。
ひとりふたり…と話だし、ろうそくのように消すときには懐中電灯に息を吹きかけながら消す行為に、徐々に緊張感が高まっていくのを多分全員が感じていました。
級友のいつもと違うひそめた声で話すストーリーはどれもどこかで聞いたことのあるような、どこかで見たことのあるような話が多く、「それ日本昔話でみたやつ!」「あ、それ知ってる」とか茶々を入れつつ、それでも1つ終わるごとに闇が深まり、緊張のボルテージは上がっていくのです。
あー、あと2人で私の番だな、と思っていたときでした。
大親友のミナちゃんが話し始めました。
「扉の話でね、ほんと、注意っていうかこの話を聞いたら二十歳まで忘れたらだめなんだけど、夜寝る前に押し入れとか、部屋のドアとか、絶対に締めなくちゃだめなの。じゃないと丑三つ時に必ず目が覚めて、ほんの少し開いた扉の向こうから『おいで、おいで…』って腕がひらひらしながら喚ぶんだよ。」
そうやってミナちゃんが話し始めた怪異は、聞いたこともない話でした。
ミナちゃんのお母様とお祖母様はちょっと感の鋭いお人で、そういう異界の話を聞かせてくれるお人でもあり、ドキドキとぞわぞわが入り混じるとても聴きごたえのあるお話でした。ミナちゃん本人も将来はアナウンサーになりたいと放送委員として頑張って発声練習とかしてる子なので小さな声で語る怪談ですらとても聞き取りやすいんです。
これは怖いっと聴き入っているうちに、彼女の話は終わりました。
次の子が語り、もう一人の幼馴染のシーちゃんの話が始まりました。
シーちゃんはアイヌの血を継いでる娘さんで、たまに舞を見せてくれたり、自然は敬わなきゃならんけど、自然と共存するためには自分を卑下したらだめだと教えてくれる心強い野草仲間でした。
「本当はね、他の話をしようと思ってたんだけど、さっきからさ、ザワザワって感じててなんだろーって思ってるんだけど、なんか一人多くない?」けろりと言われる言葉に
は?
全部消えたら多いんだべさ?と全員が思いましたよね。
まだ何人か披露が残ってるんですが…?
そこでカオルちゃんが指差し確認の様に数えだしまして。
女子23人。合ってる。
いや、うちら22人じゃなかったか?男子20人合わせて42人じゃなかったっけ?
なんとなく靄が掛かったかのように曖昧になる記憶に、泣きそうになりながら「合ってる…?合ってるよね?」と何人かがゴニョゴニョもごもごと話だし、「んー……じゃあいいか。わたしの話は終わり!」とシーちゃんは懐中電灯を消してしまいまして、え、このあとわたし話すの?え、無理ゲーじゃね?この空気感の中話すの?と思いつつ、わたし、若干霊感少女だったりしたもので体験談を話しました。
「うちのママ、運転下手なんだけどすぐ遠出したがるのね。この前摩周湖行くって突然言い出して…(この話はまた後日)」と披露致しました。
きちんと脅かしとオチを入れて絶叫ののち笑いを取るといういつもの方法で締めたのです。
カチリ…と懐中電灯を消し、ぐるりと周りを見渡しました。面白かったでしょ?と内心ドヤ顔です。
「最っ悪…! 怖かったんだけど!ねぇ!怖いと思ってしまった瞬間を返せ」と何人かに怒られつつ、まぁこれで恐怖心からは逃げられるでしょ、と思っていました。山近くというかほぼ山の中。悪しきモノを寄せるには最適な百物語という呪法。ちょっとした遊び心と恐怖心という最上のエッセンスにその手のモノって結構寄ってくるんですよね。
シーちゃん居るしね、と、逃げを打っておきたいところでした。
わたしの次の子に、お前のあとに話すのほんと嫌だな?!と怒られつつ、ラストは怪談漫画オタクの後藤さん。
怖い漫画の話しだよ、と某りぼ◯の夏特集で読んだことがあるんだけどね、と話し出して、懐中電灯を消しました。
そして後藤さんの隣には最後の一人。
あれ…?
最後は後藤さん。後藤さんでラストなのです。
「え…だれ」誰かがそう言ったのはしっかり覚えています。
「わたしだよ?最後はわたし。」
ほんのりと笑いながらなのに、なんとなく顔の印象がないんです。
「後藤さん、消しちゃったね…。ねぇ。百物語の終わらせ方って知ってる?」
くくくくく…と肩を震わせ笑い声を上げて、「最後は消したらダメなんだよ。最後だけは朝まで付けておくの。じゃないとね
……ほら。来た」
すー……、とその子の指先が窓を指しました。
バンッ!!!!窓が揺れぺたり、と手のあとが闇に浮かぶんです。
ぺたり、ぺたり、と増えていく手の跡。
泣き叫ぶ誰かの声に、懐中電灯つけて!部屋の電気つけて!と叫ぶ誰かの声。
記憶にあるのはここまでです。
朝起きたら全員が布団に入らず雑魚寝状態でボーっとしてました。
「…ねぇ。人数数える?」あさこちゃんがそう提案してきたのを、全員で拒否しました。
その後、この話は何故か全員が噂程度も一切しなかったので、今にして思えば山の精の悪戯だったのかなぁ…と不思議に思っています。
夜中に思い出しながら書いてて、自分でも怖かったの思い出しちゃったじゃないですか…怪異ですからね、怖く無いわけないんですよね。不思議なことや計り知れない事は怖くて当然なんですよ。だって事象に対して対策が取れない恐怖っていうのは本能から来るものですから。