一緒にランチ
トイレを済ませ教室に戻ると窓際の俺の席にはすでに二葉が座っていた。机の上には二人分のお弁当が置かれている。他に誰か来るのかな?
「お待たせ、これ、誰か一緒に食べるのか?」
お弁当を指差して聞けば
「これは悠くんの分だよ、悠くんのも作ってきたよ!愛妻弁当だよ!愛妻弁当!」
マジか今日はコンビニのパンだけだったから正直助かる。俺は前の席の椅子を借り、クルッと回転させ向かい合わせに座る。ちなみにこの席は今日休みの親友の席だ。
「お、おう。いいのか?でもなんで?」
「今日は友達が休みでしょ、だから一緒に食べれるかなって思ったの。なら二つ作っちゃえって。」
「え?なんでアイツが休みなの知ってんだ?」
「それは協力して・・・じゃなかった、なんでだっけ、なんでだろ?ああ、誰かが言ってたんだよ。そうだよ!そう!」
急に慌てだしたんだが、それよりアイツが休むって俺も今朝メッセージアプリで聞いたんだが、昨日から知ってたのか?
「まあ、そんな事より早く食べるか。」
「うん、ほとんど冷凍のおかずを詰めただけなんだけどね。でも卵焼きだけは私が作ったよ。口に合えばいいんだけど。」
料理なんてまったくやらない俺からすれば、冷凍だろうがなんだろうがお弁当が作れるってだけで尊敬するんだよな。
「「いただきます!」」
「じゃ、まずは卵焼きから・・・もぐもぐ、んっ美味しいよ。俺、甘い卵焼き好きなんだよね。もしかして覚えていてくれたの?」
「もちろん!昔から好きだったよね甘いの。私も好きになろうと頑張ったんだけどさ、甘いおかずって無理だったよ。だから私のこれは甘く無いやつね。」
「それも食べてみたいな。」
「えっ、いいよ。じゃあ、はい、あーんてして!」
そう言って箸で卵焼きをこちらに差し出して来る。
「あーん。あむ、もぐもぐ、これも美味しいな。」
「そっ、そんな躊躇なく来るのね。もっと恥ずかしがるとかそういうのやるんじゃないの?」
小声で何か言ってるけど、昔からこうやって食べてたよね?
「それなら甘いのも食べてみるか?」
「え?え?」
「ほら、あーん!」
「ほぇぇ、あっ、あーーややや、やっぱ無理無理!!」
一瞬口を開けた二葉だが、手を顔の前でイヤイヤと振り、拒否を示す。
「そうか嫌いなの無理やり食べさそうとしてゴメンな。甘いのも美味しいんだよ。」
「悠くん、違うんだよ、甘いんだよ。」
「うん。だからゴメン。」
「甘いんだよ、あまあまだよ。私、もうシロップ漬けになっちゃいそうだよ。」
急に赤い顔して何かブツブツ呟いている二葉を見ながら俺は弁当を食べ進める。
「「ごちそうさまでした!」」
何とか落ち着いた二葉も食べ終わって、まだまだお昼休みの時間は残っている。ならば、俺にはやらないといけない事がある。
そう五年前のあの時の事を謝らなくてはならないのだ。