アレアレ詐欺
トイレに行く悠くんを見送った私はクラスメイトにお礼を伝えようとすると
「「「「はぁ~」」」」
と、なぜか皆が溜め息を吐いている。
委員長にいたっては頭痛を抑えるかのようにこめかみに手を当てて下を向いていた。彼女にはお世話になったから体調が悪いなら心配だよ。
あっ、それよりまずお礼しないとね。
足早に教室の前まで進み出る。
「あのっ、みなさんのおかげで上手くいきました。協力ありがとうございました。」
そうお礼を伝えると、待ったと言わんばかりに委員長が
「八条さん、あなたが告白の返事するって言うから皆で協力したっていうのに、さっきの何よ。」
なんか怒ってらっしゃる?
「えっと何って・・プロポーズ?」
「「「「はぁぁ?」」」」
今度は皆の頭の上に???が浮かんでいる。
「は、八条さん、ちょっと待ってくれる?告白の返事どころか、あなたお昼を誘っただけよね?」
「いや、最初は『もし一人なら、一緒にお昼食べよ』って言ったんだけど、先週誕生日が来て十六才になったし、どうせなら結婚したいなって思って・・・」
なんか改めて言うとなると恥ずかしくなってくるけど言わないとダメな空気よね。
「それで『もし結婚してくれるなら、一緒にお昼食べよう』そう言ったの。」
「いや言ってないでしょうが!」
「でね、悠くんもオッケーしてくれてね。うふふ、ふつつかものですが・・・だって!」
「・・八条さん、あなた何言ってるの?私にはアレがアレでって何これ。アレアレ詐欺じゃないの!」
「やっぱり式は早い方がいいよね。」
「ちょっま、待って、話聞いて八条さん落ち着いて、一回落ち着いて。」
あっ、一人で突っ走ってしまったみたい。ごめんごめん。でも委員長も落ち着いた方がいいと思う。
「はい、なんでしょうか?」
「色々ツッコミたい所だけど、たぶん田林君、ボッチな俺をかわいそうだと思ってお昼誘ってくれた。ぐらいにしか思ってないと思うわ。」
「なんでよ。テンプレみたいな返事もらったし!」
「それはそうなんだけど、すれ違いというか何というか・・・もう一度聞いてみたら・・・どう?」
委員長が自信なさそうに提案してくるが、もう一度なんて無理だ。これでも結構勇気を出したんだよ。
でもそこまで言われたら聞いた方がいいのかな?
「もう一度なんて無理だけど、遠回しにならやってみるよ。呼び方とかそういうのでラブラブなの見ててよ!」
「わかったわ、見させてもらうわ。それより一番大事な事を言わなくてはならないのよ。」
「ん?」
「結婚って男子は十八にならないと出来ないのよ」
は?
え?
「ええ~なによそれ!あと二年どうしろっていうのよ~~!」
「それから、女子も法律が変わるみたいで十八にならないと出来ないのよ。」
「そ、そ、そん、う、う、うにゃ~~!」