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ドラキュラの陰謀  作者: 安田座


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59/59

ドラキュラの侵略(前編)

ep58で完結の後ですが、あまり触れて無かったドラキュラのエピソードを追加です。

今のところ前後編の予定です。

 


 数百年前、地球 。


 こちらの世界に来て二十余年、この星のほとんどの土地を回って来た……。

 まず驚いたのは、神が実在しないことだった。

 神という概念はある。しかも様々な形でその数も不明なくらいだ。 だが、どれも明らかに想像上のものでしかない。

 それでも偶像として確かに神という扱いは存在する。だがそれは、わたしが倒すべき相手では無かった。


 この星の住人は、人間という一種族のみで、個体に大きな違いは無いが人種という分類では多くに分かれていた。

 その人口の多さとともに争いはたびたび見られたが、種族間にある軋轢では無く、ほとんどが国家や宗教などの集合体というくくりで起こっていた。

 とはいえ、一般人は想像していたものとは違い、我が世界と不思議なほど同じに感じた。


 環境については、

 これは良いことなのかも知れないが、日差しがとても強い。しかもそれは一つの太陽からだ。

 そして、明確な夜の闇があるのだ。わたしはこの闇がとても心地よく気に入った。

 そうそう良い部分がまだあった。 多少の例外はあるが、河川がとても安全だ。 

 そして、海も誰しもが利用可能なくらいなのだ。

 それらはただ美しく何度も感動を覚えた。 もっとも天変地異による災害には驚愕したが。


 だからこそ世界が広がった理由がよくわかった。逆に我が神がそれを望まなかったことも理解できた。

 理解はできたが……正しかったのかは……。


 ーーーーーーーーーー


 ヨーロッパのとある町。

 昨日、わたしは家を買った。しばらくこの町に定住してみることにしたのだ。

 金はいくらでも稼ぐ方法があるため定住する場合は基本的に家を買う。

 正体を隠すためにはいろいろと細工が必要なのだ。もし何か不都合があれば自分としては遠くに転居すればいいだけだが、ご近所へは余計な心配をかけたくないと思っている。


 夜になると、情報収集のため日課の様に酒場へと赴く。 今夜は、通り魔の噂が聞こえてきた。

 すぐに、わたしは関わらない様に気を付けようと決めていた。

 襲われた場合の対処に困るからだ。適当にあしらって去ってくれればいいが、そうでなければ逃げるよりは始末した方が早いかもしれない。

 そんなことを頭に置いていたにも関わらず、夜に出歩いた際にかすかな血臭と嫌な気配を感じてそちらへ様子を伺いに足を向けてしまった。

 路地裏に入ると血臭の元、横たわる少女を見つけた。血だまりの大きさから、死んでいるか、それに近い状態と想像するだろう、一般人なら。だが、わたしには分かる、それは生きていて、まだ助けられると。

 体の大きさから年齢は十代そこそこだろうか。

 その時、少女はなんとか一瞬だけ目を開いて視線をわたしに向けた。その瞳が助けて欲しいと訴えているのが理解できた。

 助けると決めて駆け寄ろうとしたとき、背後に気配を感じた。逃げておけばいいものを……。

 次の瞬間、気配の者は声をあげる間もなく首の骨を折られ、さらに次の瞬間姿は塵として抹消された。

 あらためて少女に駆け寄りその小さな顔に顔を近づけて問いかける。

「君は、生きることができるが、代わりに死ぬことができなくなるが構わないかい?

 そしてわたしと一緒に来てもらう。

 これは助けるという意味ではないから聞いている」

 この言葉には魔力を込めた、意識に直接伝わったはずだ。

 今しがたの人外の行動を見ることはできなかっただろうが、藁にも縋る者は言葉の意味をどの様に解釈するだろうか。

 少女はなんとか開けた片目の視線だけを向けるとすぐに瞼を閉じてから答えた。

「……死にたく……無い……」

「わかった」

 今はその希望を叶えよう。条件を破棄するのは彼女の自由であるから。

 わたしは、そろそろ眷属を作ろうと思っていた。 選択されるべき資質を持ち成人である者を探していた。

 この少女に資質をわずかに感じたのもある、それ以上に生かせる者を目の前で死なせることをためらった。

 そして我が娘の顔が重なったのもそうだと、幾つかの言い訳を思考していた。

 眷属になればその力はベースになる者の能力にはほとんど依存しない。千一か千十かの違い程度だろうか。

 もっとも、体のサイズや性別による優位性は場合によってはそれぞれにあるのは否定しない。


 少女の頭を持ち上げて、露になった首に顔を近づけて、その喉へと牙を立てる。

 そして一秒ほどして牙を抜いて顔を離す。

 少女は静かに目を開けた。

「痛いところは無いと思うが、起きられるかい?」

「はい」

 少女は立ち上がりながら答える。少し元気の加わった声だ。

「では、君の御家はどこかな?」

「……無い……です」

「では、御家族は?」

「……無い……です」

「ふむ、君の名前は?」

「……チー」

「…………わかった。 今はそれだけでよい、いや、好きに名乗ればいい。

 わたしが君をどう呼べば良いかだけだからね。

 では、そのままお寝むりなさい。

 我が家、いや君の家へ一緒に帰りましょう」

「……チーのいえ?」

「ああ、君はわたしの眷属だからね」

 わたしは答えてからチーさんを魔力で眠らせた。


 その時、

「おい、お前」

 路地の入口の方から男の声が聞こえた。

 他にも数人の男が一緒で「居たぞ」「手間かけやがって」などの言葉を口にしながら近づいてくる。

 男たちの手にはそれぞれ刃物が握られているのが見える。

「お前、動くなっ」

 少し大柄な男の恫喝だ。

 通り魔としては先ほどの者が正解だろうが、自分への殺意はこの者たちの方が強いと感じる。

「きさま、その娘に何をした? あぁ?」

 小走りで先頭に出てきた男が言う。こいつが集団のリーダーかもしれない。

 まぁ、地面の血だまりもあるが、血だらけのドレスはそういう質問になるのだろう。

 そして、わたしが何をしたかは話せない。

 彼女の衣装は家の無い娘にしては上等で、その整った髪もそうだが、さらに美貌を覆う薄化粧は、現状を想像するのに十分だった。

 娼館から逃げて来たのだ。

 つまり、この者たちはわたしにとっては消しておくべき存在ということが決定した。

 そして実行する。瞬殺という芸当も、たとえ能力半減のこの世界でも人間相手なら容易だった。


 また、少女を眷属としてしまった。

 アルグの守護をさせる者には妥当な選択肢ではあったが、今回は……人間が人外になるという大きな事変、そして地球人であることが、この娘の運命でもあるのだろうと納得することにした。

 そんな自分の甘さに苦笑しながらつぶやいた「侵略に来たわたしを笑っているのだろうなエルフ王よ」と。

 それでもわたしには守護者が必要だ。

 長い年月を生きることができる者が。



 あっさりと我が家に着く。人目に付かないように移動するなど造作もないのだ。

 チーさんをベッドへ運び寝かせてから一時間ほど経過した。 様子を見てみる。

「目が覚めたかい。

 何が起こったか覚えているかな?」

 目が開いたのを見て言葉をかけた。体の傷はとっくに治っているはずだ。

「はい、助けていただきありがとうございました。

 わたしの様な者に……対しての……おここ……うっうっ……」

 チーさんは泣き始めた。

「もうそのことは気にしなくていい、君を生かしたのはわたしの都合となったからね。

 だから、しばらくは体に慣れることから始めなさい、私たちには時間などいくらでもあるのだから。

 まずは、人並みの所作をする演技を覚えるんだ」

 起き上がろうとした動作を手で押さえながら話を進める。

「は……い」

「説明が足らなかったね。

 能力についてはおいおい教えるけど……

 君は今後成長することは無いし、怪我はあっという間に治る。

 そして人間の大人でも敵わないほどの身体能力を得る。

 他者から見れば化け物になるのだろう。

 もし嫌なら遠慮なくそう言って欲しい。

 その場合は、命を失うしかないのが申し訳ないのだが……」

「わかりました。

 それから……嫌では無いです。

 化け物でもなんでもなります」

 一瞬、瞳に狂気が見えた気がした。人への憎悪が含まれているのだろうか。

「承知した」

「……あの……主様は……なんとお呼びすれば……よいのでしょうか?」

 どうやら理解力も高いようだ。それと、やはり嫌な経験をしてきたことがよくわかる。

「名乗るのが遅れたが、わたしの名はドラキュラ。

 わたしのことは、しばらくはお父さんとでも呼んでくれたまえ。

 世間ではこの方が目立たないはずだ。

 それからチーさん、君はもう泣かなくても良い生き方をしよう。

 制約はあるがそれができる状況に今は居るのだから」

「わかりました。

 お……おとう……さん」

 言い慣れない言葉なのだろうか、私自身は主呼びでも構わなかったが、この子にはそこから変えて欲しいと思った。

「それでいい。

 では、しばらくは好きにしているといい。

 時が来れば、以降君にはわたしの護衛を三百年ほど務めてもらうのだから。

 もしその時気が変わっていたらそう言ってくれ。

 だが、わたしは君にともに来てほしいと願う。

 我が故郷の未来を造るのを手伝って欲しいのだ」

「わかりました」

「ええと、そうだな、お父さんに対して言う感じで……いや、やっぱり君の好きにしなさい」

「あの、わかりました」

 言葉はほぼ同じだが、表情に小さな笑みがプラスされていた。

 わたしも、チーさんの緊張をほぐせるような努力が必要だと感じた。

「とはいえ、さしあたって、明日にでも引っ越しを考えている。

 君の追っ手を消滅させたのでね。騒ぎになると面倒だ。

 だが、次の町では、親子ということで始められるからちょうどいい。暮らすなら最初から一緒の方がいいですからね。

 この町に何か心残りはあるかい?」

「ありません。 あ、ない……よ」

「そうか、では、明日とは言わず今から行こうか、どこかへ。

 やはり私たちには夜がいい」

「うん、おとう……さん」

「ははは、悪くないよ。 チーさん」

 持っていく荷物はほとんど無い、そもそもチーさんの回復が確認できたから問題は何もなくなった。




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