序章
完結したので、ネタばれ込みで主な人物等の紹介です。(ちょっと追加)
ジョニー:
本名は二条、本作の主人公
暫定統治局特殊テロ対策部第七斑という組織に所属している。
職務中にドラキュラによって転移させられる。
明確な目的が無い為、周りに流されて動くが、元の世界を救う方法が見えた時、それに向かって突き進む。
Z1:
Self-supporting photon hypostatize weapon(自立型光子偽装兵器)と言うらしいが内蔵AIの型番であるZ1を呼称としている。
主人公をサポートする為のメカで、うさぎくらいのサイズで浮遊できる。
エネルギー供給が可能な範囲で光造形により理屈上はあらゆる物を現出できる。
アルゴリズム設計図が必要だが、いろいろライブラリ化されているため即座に現出可能だ。別途新規開発も可能。
巨大なものの現出には衛星からのエネルギー供給を受けることで対応する。
兵器として使用する場合、腕時計型のベースに合体し主人の命令に順ずる。
異世界転移直後は、すぐに周辺調査のため別行動をとる。
本編登場はなんと第17部?!
フィニ:
エルフ王が言うのを信じれば、神が二条への供物の為に造ったエルフ姿の人間。十六歳?。
そのため二条の理想の容姿でもあるし、そういう風に造られて居るため本人も出会った時点で相思相愛である。(これも魔法の仕掛けが……)
エルフ族長の護衛の一人だったが二条の監視役にされる。
第六王妃:
幼少期に、成人した姉が不老の魔法を受ける際に巻き込まれてしまう。
体形が変わらない為エルフの様だと虐げられており引き籠っていたが、男子を望む王が、少年の様だという理由で王妃にした。
王妃となり人前に出る必要があり胸を大きく見せる工夫をしている。
翻訳指輪の応用によって二条の真実を知り、良き協力者となる。
けっこうたいへんな目に合う。
エルフ族長:
二千歳のエルフ
すごい人物らしい
二条が最初に出会う人物で、翻訳指輪を使ったので、二条の正体をすぐに把握したはず。
バンパイア王:
本名アルグダミアス。 ドラキュラと時の巫女の娘。
十六歳の時に目的の時まで寝て待っていた。
二条は王様と呼ぶ。
この世界では最強らしい。
魔法剣士:
バンパイアを狩る者。 神殿騎士団の一員。
鎧で姿を隠していたがエルフ族長の娘と判明。
二条に翻訳妖精を与えた。
もう一人、剣術に秀でた人間魔法剣士が存在する。
エルフ王:
五人居るらしい。
友人であるドラキュラに思想の違いから殺されたはずだったが、こっそり蘇っていた。
今は、復讐の為に策を弄している。
ドラキュラ:
暫定統治局局長
次元を超える能力を持つ
二条を転移させた
エルフ王によると、地球侵略が目的らしい。
時の巫女:
街で占い師をしている
未来が見えるため、エルフ王が自分の邪魔をされない様に命を狙っている
七姫:
第六王妃の双子の娘の妹の方
二条に闘技会参加を依頼した。
第一王妃:
王の遺言に従って次期女王を決める闘技会を主催。
翻訳指輪で二条と会話した事がある。正体を知っている?
第一王妃の付き人:
エルフ王の息子
かなりの強者らしいがエルフ王には及ばない
第一王妃を守る為、エルフ王とは敵対
魔法使いの少女:
闘技会準々決勝で二条と対戦
魔法少女の様な姿で魔法使いのくくりでは最強らしい
お供に西のパラディンと呼ばれる騎士を連れている
エルフ王に殺されるところをバンパイア王によって助けられる
バンパイア:
ある期間で出現していたが、最近なぜか多くの出現が見られるようになった。
凶悪なモンスターで各地で被害が出ている。魔法剣士のみが狩れるという。
強さや能力は様々で闘技会に出たやつは上位の強さらしい。
実は、エルフ王がデーモンという種族をバンパイアとして広めた。
純粋なバンパイアはドラキュラのみで、バンパイア王は時の巫女とのハーフだ。
ダラクシャーナ:
バンパイア王の守護者
バンパイア王が寝ている間の警護等をしていた。
ドラキュラの眷属であり、エルフ王と互角の戦いをした。
チーサムニア:
Z3のパイロットで、ドラキュラの眷属の一人
崖の上に立つ四つの人影、
向かう大海には、とてつもなく巨大な丸いものが浮いている。
丸いと思えるのは、それが夕日を背に陰となる部分でそう見えるのだ。だからその先の形は解らない。それほどに巨大なのだ。
(ようやく来たか、”人”よ、
お前たちにはこの世界について教えてやろう)
おそらく巨大な丸い影が発した言葉だ、音声では無いのかもしれない。
「お初にお目にかかる、あなたへの礼儀様式もそれが必要かも不明なため、あえて無礼を失礼する。
こちらの質問に答えてくれないか?」
先頭に立つ男が問う。
(知りたくないのか?)
「わかった、教えていただこう」
(ふむ、まぁいいだろう
聞け、この星の生命の始めは我が造り、我の滅びと共に消え去る
我が死ねば星の環境が崩壊し全ての命は生存不可能となる。
もちろん、バンパイア王、エルフ王、たとえ破壊神であってもだ)
「私達を知っている……か」
(何度も繰り返して来た、
そのたびに進化を試してきた、
そして、この世代となり七十万年、我の寿命が尽きるのもそう遠くなさそうだ)
「あんたの尺度で言う”そう遠くない”とは、我々にとってはどのくらいだ?」
(数百年ほどだ)
「なるほどな、合点が言った」
(そうだったな、そういう力を与えておったか)
「確認ついでに力を借りに来たのだが、先ほどの話では無駄足の様だ」
(試してみるなら我は助力をしても構わないぞ、
そのつもりだろうに、食えぬ者よ)
「ほう、ならばそれを示してもらおうか」
(お前に次元を超える力を与える。
どう使うかは、そこの者が知って居るのだろう?)
「ああ、だが、従うかどうか、抗えるかどうかさえ俺にはわからん」
(時間を有効に使え)
「時間感覚の無さそうなあんたが言うのは皮肉か?」
「わたしには、この力を使う事が正しいかどうかが分かりません」
割ってはいる様にとなりの女性が応えた。
「俺が決める。 お前は迷い悩む必要は無い」
(残念ながら、結果を見届けられないのも分かっておる。
我の命が先に尽きるのは必定。
その影響は徐々に広がり死の星になるまで数日であろうが、我も次に意思が戻るまでの事はわからない)
「ああ。
最善を尽くす、それだけだ。
……いや、もう一つ聞きたい」
(好きなだけ聞けばよい)
「次元を超えるとは、他の世界があり、そこの者がここに来るかもしれない。
そいつはあんたの脅威とならないのか?」
(興味はある)
「そうか、俺としてはあんたが少しわかったよ。
では、”ありがとう”、これは有効だろうか」
(時世でもそういう言葉を返される様に努力しよう)
そう答えると、巨大な丸い影はゆっくりと海に沈んで行った。
心なしか海面が上昇した様だったが、既に四人は背を向けて歩いていた。
――数百年後
空に太陽は二つ、月らしい星も三つ見える。
ここは、闘技場。 屋根は無いが、太陽の大きな方が頭上にあり雲もほとんど無いというのに日差しはさほど強く無い。
闘技場の中央付近で向かい合う男が二人、今まさに戦いを始めた。大勢の観客が一斉に歓声をあげる。
特に全景の良く見える高い位置には豪華な椅子が並ぶ観覧席があり、そこに十代後半から二十代前半と思われるブロンド髪の女性十二人が掛けている。さらにそれぞれの傍らには従者だろう男達が数名ずつ立ち並ぶ。
女性達は、着飾る豪華なドレスや装飾品に負けずに皆美しく、さらに二人を除き大きく胸元が開いているのは、その大きな胸を誇示するためだろうか。その姿を見るのも、見物に来ている男たちの目的の一つだ。
「あの男……自信を持っていたな」
中央に座る女性が微かに眉をひそめてつぶやいた。
近くの男が顔を寄せてから小さく優しい声で答える。
「やはりお気になりますか? 確かに強いですね。
それでも、あの程度であれば問題無いでしょう……あ、終わりましたね」
終わったと言うのは、もちろん闘技場の中で行われていた試合、いや、決闘という方が近いだろう。
「二回戦は西の魔法使いだったな」
女性がその決闘の結果を見てから聞き返す。横に並ぶ女性たちは口々に驚きの声をあげている。
「はい。 魔法にどう挑むかですかね。 それでも、この試合程度の相手では計れない……と言ったところですから」
「ふむ」
勝者である『あの男』は、身長は高いが筋肉質の割に線はあまり太く無く、闘技場よりも競技場の方が似合う様相だ。 容姿は、日本人とわかる黒髪で年齢は二十代後半くらいか。
その装いは、上半身は重装備というほどでも無いが鎧を付けており、装飾だろう宝石類がきらきらと目立つ。
武器は腰の後ろに短剣が見えるが、先ほどの戦いで使っていなかった事からも格闘系が得意なのかもしれない。
ただ、左腕にはめられた大き目の腕時計が、この場では異常なほどに浮いて見えた。
そして、女性が気にした理由は、やはり『あの男』の足元に倒れている者、『あの男』の三倍はありそうな体格であり、人というよりもゴリラを巨大にし防具を付けたような、どう見ても人の力でどうこうできるとは思えない化け物、そいつとの戦いぶりだったのだろう。
ふと、闘技場の中央に立つ『あの男』が、観覧席の方を振り向き、拳を向けて何か言葉を発した。
「王妃王女の皆様方。 俺は第七王女の戦士だ」
そう、観覧席の女性達は、皆この国の王妃王女なのだ。
『あの男』は、言い終えると踵を返して退場口へと向かった。
すると、退場口から、王妃達にも劣らない着飾りの若い娘が駆け寄って行く。お姫様な雰囲気は、第七王女ということだろう。
女性は、涙を流しながら抱き……付こうとしたが、避けられて勢いあまって転ぶ。
『あの男』は、何事も無かった様に転がった娘を小脇に抱えると入退場口を出て行った。
「おつかれさん」
入退場口を出ると、出迎えたエルフの娘が『あの男』に労いの声を掛ける。
「ああ、まぁ一回戦だし、こんなもんだろう。
とりあえず、何もしないのも何だから王妃さん達にアピールしてみたけど、意味あったかなぁ」
「どうだかの。 何を言ったかは知らんが、わしは良い場だとおもったぞ」
「そか」
『あの男』は余裕の表情でひょうひょうと答えると、もがく娘を抱えたままエルフ娘を引き連れて、闘技場から出て行った。
六人の王妃たちは、この闘技会の主催者ではあるが本来の目的は別にある。
この闘技会に、それぞれの娘、王女が後見する戦士を一人出場させ、優勝した者を後見した王女が次期女王となる取り決めをしたのだ。
一般枠として部外者も出場しているが、無論、その者達に後れを取るような弱者を後見する者はいない。
なぜ女王を決めねばならないのか? 今、この国に王はいない、先日死去したからだ。
そして、六人の王妃を持ってなお男子に恵まれなかったことから、血を残すために、王は女王の選別を遺言としていたのだ。
その選別方法こそ、この闘技会だ。
第一から第五王妃にはそれぞれ娘が一人、第六王妃には双子が居る。
ゆえに、第七王女まで存在するが、公平を規す為として権利は双子の一人第六王女のみに与えられた。
だが、先ほど第七王女が後見する戦士が勝利した。第七王女は、女王になる権利が無いにも関わらず、独自に後見し一般枠で参加したのだ。
一カ月前、王の葬儀が終わったその日の夜。
城の大会議室に五人の王妃が集まっていた。
付き人も護衛も伴なっていない、極秘の話し合いをするためだからだ。
五人の乙女が集まって数分、室内は空気が重く固まったかの様に静まり帰っていた。
そしてゆっくりと入口の扉が開くと、もう一人の乙女が入室した。
席に着くと、すぐに言葉を発した。
まとめ役だろうこの乙女は第一王妃だ。序列的には当然だろうか。
「さて、皆、察しの通り、王の遺言についてです。
遺言書については、既に公知されております。 従って、闘技会にて女王を決めることといたします」
「公知されてしまいましたし、催さない訳にはいかないでしょうしね。 そして……」
応じた第二王妃は、何か言葉を続けようとしていたが、第一王妃が言葉を遮る様に話を再開した。
「皆に集まっていただいたのは、実施を前提として、気持ちを表明いただくためです」
「降りてもいいって事じゃないよな?」
第三王妃が強い口調で返した。
「それは、ご自由に。 ですが、判断は提案を聞いてからお願いします。
できればわたくしは争うようなやり方はしたく無いのです。
わたくしは、あなた方も同様に思っているのではと危惧しております。
でも、あの方の遺言である以上皆さまも無下にはできないことでしょう」
皆、同意なのだろう、返される言葉は無い。
「第二王妃が言う様に、公知された以上、結果として決めなければ国民が納得しないでしょう。
よって、本戦に出ない者は、王妃の資格を剥奪いたします。
それから、さらに二点ほど提案です。 異議があれば遠慮なく。
まず、出られる以上は本気で望んでいただきます。
そのために相続財産を六等分し、負けた者の分の権利を勝者が得ることとします。
一回戦は一般参加者相手ですから、二回戦から優勝までで最大四人分を得る事になります。
一勝でもすれば、一人分は確定です。
失った者には最低限の保証はします」
「一回戦で負けるなら良いってこと……か?」
第三王妃が独り言の様につぶやくが、当然皆に聞こえている。
「ここまでの条件を付けても、自ら負けを望むのであれば、止めません。ただし、王妃、王女として恥ずかしく無い行いを心してください。
とはいえ、元より、皆さんご参加いただけますよね?」
言葉の後に第三王妃に視線を向けた。
「ああ、言ってみただけだ」
「第一王妃様がよろしいのであれば従いますが、順当に第一王女様が女王でも皆異存は無いと思います」
第四王妃が、少し遠慮気味に言葉を返した。
「わたくしも、娘をひいき目に見るわけではありませんが、それでもよいと思います。
ですが、逆に、どの王女が成ってもよいとも思っています」
第一王妃の本心だろう。
「問題は公知されてしまったことですね」
第二王妃は、冷静に補足する。
「はい。
それでは、二つ目ですが……」
これ以上の意見も無いと見たのか、第一王妃は話を進めた。
「二つ目は、第七王女はこの権利を有しません」
「承諾いたします」
議論が始まるよりも先に第六王妃は即答で応じた。
当事者が応じた事で他者の意見は無い。
「では、皆さん、今この時より約一カ月の間、敵となりましょう。 各々のご武運を祈ります。
会議を解散します」
会議後、第三王妃と第五王妃は城の中庭に居た。
広々とした花壇を眺めながら、
「大げさな出来レースのはじまりだな……いや、余興か」
第三王妃は楽し気だ。
「しかたのないことです……が、あなたとわたくしだけは、そうならないようにしましょう」
第五王妃は、静かに答える。
「もちろん、そのつもりだ。 で、建前にされた遺言は本物だと思うか?」
「まさか」
「だよな。 先に公知されたってのがそもそもおかしい」
「ですが、全員に好都合では?」
「ああ、良くも悪くも、うまく運んでる。 言ってることは間違ってないしな、皆、第一王女でも文句ねぇ。 はてさて、糸はどこに繋がってるのか」
「あのひとは、本心でしょうし……ただ、七姫を外した真意が気になりますが」
「それにも同意だ。 次世代の継承権は残るからなぁ。 あまり疑うと王の死因にまで遡っちまう。 だからこそ、どうしたものか」
「今は、流れに任せましょう。 全ては、第一王女を女王にしてからでも遅くないです」
「ああ、じゃぁ、せいぜいお互いがんばろう」
「はい、それでは失礼いたします」
第五王妃は庭の離れた位置に立つ男に手をあげて合図すると、一緒に庭を後にした。
「面白くなって来たが、たぶん俺の出る幕じゃないよなぁ」
見送る第三王妃は、残念そうにつぶやきながら、第五王妃と同じように手をあげた。
近づいてきた男は、第三王妃に近づき肩を抱くと、顎を持ち上げて口づけをした。
第三王妃は背伸びした体を元に戻し、男の手をとって胸に誘導してから言う。
「ああ、タキアン。 始まるわ…………ふん、王よ、わたしが女で悪かったな」
後半の台詞は確かに男の様に低く熱い言い様であった。
豪華な鎧に身を固める大柄な体躯には見合わない甘い顔立ちのタキアンと呼ばれた男は、あらためて第三王妃を抱きしめて答える様に決意を口にする。
「わたくしは、姫君と可愛いあなた様のために戦いましょう」
二人はしばらく抱き合った後、少し離れて歩きながら出口へと向かった。
少し離れた建物、中庭の見える高所に、そんな二人を見つめる瞳があった。
「わたくしも、ぜひお手伝い差し上げると致しましょう」
そう青年の声で呟くとニヤリと笑みを浮かべた。