第八話 「怒りの土撃」
「男ならさっさと向かってこいよ」
本当はサンは女だが、俺の体だからもちろん相手からは男にしか見えない。
「挑発ですか? 私が怖いならそう言えばいいじゃないですか」
「ちっ。つれねーな。ならこっちから行ってやるよ」
男が大剣を肩に乗せのそのそと歩いてくる。
『ライアさま、一撃で仕留めてもよろしいでしょうか?』
殺さない程度にならいいぞ。
『では、半殺しということで』
は? おいそれはいくらなんでも—
サンは俺の言葉は最後まで聞かずそのまま走り出した。
「死ねー!」
そう言いながら男は大剣を横に大きく振った。
え!? 片手であの大剣を!?
「ですがこれで終わりです」
その隙をついたサンは相手の腕目掛け刀を振った。だが—
「刀が通らない!」
「ガハハハ! どうだ! 俺の体は!」
サン! 危ない!
男が刀を持っていない左手でサンを捕まえようと手を出した。だが、俺の注意を聞いた瞬間その事に気づいたサンが後ろに下がった。
『ありがとうございます。ライア様』
お前が無事でよかったよ。
『ですが厄介ですね』
ああ。やっぱりお前でも倒すのは無理か?
『いえ、そんな事はありません。ですが少し長くなるだけです』
わかった。
サンは今度は敵の後ろに周りこもうと走り出した。
「後ろ狙いか。だがあまいな!」
にひっと悪魔的な笑みを見せると、男は腰に手を回した。
「ぐっ!」
サン腕から血が!
「ガハハハ! あまかったな! 俺がこの大剣一本だけかと思ったか? ガハハハ!」
「貴様、ライア様のお体に傷をつけたな」
「あ?」
おいサン! 落ち着け! 俺なら大丈夫だから!
そんな俺の言葉は聞こえておらずサンは刀を上に突き出した。
「大地よ、我が呼び声に応えよ。そしてこの刀に大いなる一撃を放つ力を!」
刀の周りに光が集まり大きな光の刀になっていく。それを見ていていてもたってもいられず何度もサンに呼びかけたが一度も返事をしない。
おいサン! やめるんだ!
「おいおい嘘だろ……」
相手も流石に腰を抜かし後ろに倒れる。
「ライア様の体に傷をつけた事をあの世で後悔しろ! 土撃!」
サンが刀を振りかざそうとしたその時—
「やめろー!」
トラが横からサンに飛びつきそのまま2人は倒れた。
「トランスペアレント・ドラゴンなぜここに。私はいったい」
「とにかく今は逃げるぞ!
俺はトラに手を引かれそのまま会場を出た。
その後、俺とトラ達はすぐに馬車に乗り土の国ソイルを後にした。
「大丈夫かサン?」
「はい。先程は私が暴走してしまい申し訳ありませんでした」
「ライアさん、いったい何があったんですか?」
俺は今回のサンとのことをリゼに話した。
「なるほど。そんなことが」
「ところでリゼ、お前も大丈夫だったか?」
「ヤバかったです今も相当ヤバいです」
早いな。しかも現在進行形かよ。
「馬車はまあまあ広いから横になれよ」
「はい。では失礼します」
そう言ってリゼは俺の膝に頭を乗せてきた。
「おい! 何してる!」
「では私も」
頬を少し赤くさせたサンも俺の膝の上に頭を乗せた。
「おい! 2人とも! 馬車は今私が運転しているんだ! ライアの膝を勝手に使うのなら2人ともここで下すぞ!」
「まあトラ、また背中流してやるから」
「なら私がライア様の背中を流します」
「いいえ私がライアさんの背中を流します!」
サンはともかく、トラとリゼまで、全くこの先どうなるんだ? 今の俺はただそれだけが心配だった。
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