第四話 「俺とリゼとトラ」
龍神石を治した後、リゼにトランスペアレント・ドラゴンの事を紹介するために実体化させたが、トランスペアレント・ドラゴンは実際は女だった。そう、奴は女。可愛さのかけらが無いほどに図々しい、偉そうな女。逆らえば殺されるかもしれんから、とりあえずいう事は聞くことにした。
でも、だからと言って!
「なんで俺がこいつの背中を流さねばならんのだ!」
「ライアさん、どうかしました?」
「いや! なんでもない!」
俺は今、またリゼの家にお邪魔して、風呂でこのトランスペアレント・ロリ・ドラゴンの背中を流している。
「気持ち良く無いぞ。もって力を込めて」
「うっせ! このロリババアめ!」
「龍の年で数えるなら10歳だ」
「マジか」
別に静かにしてたら普通に可愛いのに、口がうるさいからな。そこをどうにかしてほしい。マジで。
「なあ、トランスペアレント・ドラゴン」
「なんだ」
「名前長いから呼び方変えていい?」
「よいぞ」
「ありがと」
トランスペアレント・ドラゴンを短く呼ぶにはやっぱり……
「トラってどうかな?」
「シンプルでいい名前だな」
おーい。感情がこもってない返事わどうもありがとう。自分の名前なんだからもっと興味持ったらどうなんだ? 本当、適当というか、人に興味が無いとというか。にしても綺麗な肌だよなー。
「本当綺麗だ」
その時、一瞬だけトラの体がビクッと反応したような気がした。
「綺麗だよなー」
「ひゃ!」
また一瞬動いた。しかもなんか変な声も一緒に……ほうほう、なるほどな。トラは綺麗って言葉に敏感に反応する。これは今までこういう事は言われてこなかったから、慣れてないんだな?
「トラ。綺麗だよ」
「ひゃん!」
「とっても可愛い」
「ななな! 何を言っているんだ!」
「本当のことだよ」
今までのお返しだ。くらえ!
「トラ。大す—」
「黙れー!」
俺が一言トラに言おうとした時、後ろを振り返ったトラが俺を突き飛ばした。
「おおお! お前は! さっきから綺麗だの可愛いだの! 遂にはだだだ、大好きまで!」
それはまだ言ってない。
「お前はどれだけ私を混乱させようとしているのだ! わわわ、私だって……」
は? 最後声が小さくてよくきこえない。
「すまん。なんだって?」
「私だって! 可愛いってもっと言ってもらいたかったもん!」
「……」
「っ! ライアのバカ!」
そのままタオルで体を隠しながら、トラはお風呂場を出て行った。
「なんだったんだ今の……」
その後俺は少し湯船に浸かってから上がることにした。
「リゼ。お風呂ありがと……」
俺がリゼを見ると、そこにはリゼの膝で気持ち良さそうに寝ていたトラがいた。
「本当にこれがトランスペアレント・ドラゴンさんなんですか?」
俺がリゼの隣に座ると、リゼがそんな事を聞いてきた。
「そうだよ。今はトラって呼んでる。リゼもそうしたら?」
「そうですね」
本当、こうしてると子供みたいで可愛いのにな。
「あの時、トラちゃんの事を話してくれてありがとうございました」
「祠の時か? あの時はトラが俺の体使ったりして妙な力使ってたからな。紹介しておいた方がいいとおもって」
「そうですか」
リゼのその時の顔は、どこか悲しそうで、でも優しさもあるそんな、綺麗な顔だった。
「この後、お2人はどうされるのですか?」
「俺とトラは嵐を止めるために他の4体の龍神石を治しに行く」
「それに私も、お2人と共に旅をしてもよろしいですか?」
その時のリゼの顔はさっきとは違い、これからの未来への不安と期待を持ったそんな顔だった。
「リゼがいれば美味しい料理も作ってもらえるな!」
「はい! もちろんです」
「じゃあ、リゼ。これからもよろしく」
「はい。よろしくお願いします」
こうして俺たち3人は共に旅をする事になる。
読んでいただきありがとうございました♪
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