第十八話 「再び」
「なあトラ」
「なんだ」
並んで歩いていた俺と目を合わせないように前を向いて答えた。たぶん泣いて腫れた目を見られないようにしたいんだろう。
「今までなら、そろそろいい頃なんじゃないか?」
「ああ。なぜだが一切反応がない」
そう、ここ炎の国クリムゾンに来て数時間以上経つのに全く炎のドラゴンが反応しない。
「フレイムバーン・ドラゴンは戦いを好む。お前が戦う姿を見せたらいつかは現れてくれるんじゃないか?」
って言ってもな、クリムゾンに来て少し戦ったんだが、あれじゃ物足りないのかな?
「ライア様、今は一度祠に行ってみましょう。何か反応があるかもしれません」
「そうするしかないよな」
「ででででも! クリムゾンの祠って……」
今俺がなぜ祠に行く事を言わなかったか、そしてなぜリゼが祠に行くだけなのにこんなに動揺しているか、その理由はただ一つ。
「この国の山、標高5,000メートルのクリムゾンマウンテンの頂上に祠は存在する……か」
「しかもこの山には多数の魔物が生息している。気をつけろ」
「承知しています」
「わわわわ! 怖いです!」
俺はリゼの手を引きながら全員で頂上に向かった。
途中俺たちの目の前に4体のオークが現れた。
サンが打撃を放とうと構えるが、俺がそれを止める。
「俺にやらせてくれ」
師匠に教えてもらった技を放つため俺は刀を抜き構える。
オーク達が動かない俺を見て一斉に遅いかかってくる。が、それがオーク達の敗因だった。
「黒龍桜!」
ファっと黒い桜が宙を舞い、オークは消えた。
「すごい。ライアいつの間に……」
「かっこいいです。ライア様」
「すごいですライアさん!」
3人が俺を目を丸くしていた。
「まあな!」
それだけ言うと俺はまた頂上目指し歩き出した。
「ライアいつの間にあんな技を!」っとさっきから質問攻めしてくるトラに向かって「可愛い。結婚しよう」って言ったら頬赤らめてすぐに大人しくなった。トラにはこれが一番効くな。
「この技はある人から教えてもらったんだよ」
「ある人ってもしかして師匠った読んでるやつのことか?」
「そうだよ」
「でもさっきは技の説明なんて—」
「言ったら面白くないだろ?」
意地悪な言い方で言ったら頬膨らましプイッとそっぽ向いた。可愛いなこいつ。
「でもほんとすごいですね!」
「本当です」
なんか、そこまで褒められると照れるな。
「ぐっ! 来たか!」
「ライアさん!」
「リゼ! 今はライアに触れるな」
ぐっ! 心臓が! 苦しい!
「ぐはっ! がはっ!」
「ライア様の様子がおかしいしです」
「なぜだ、今まではこれほど苦しんではいなかった。大丈夫かライア!」
「ライアさん!」
俺は3人の声がだんだんと聞こえなくなるのを感じ、そのまま意識を失った。
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