第十六話 「また会える」
仮面で中はどうなっていたかは分からなかったが、師匠がリブラと呼んでいた男に向けられていたのは『殺意の塊』だった。
「私はあなたのような仮面の男に会った事はありませんよ。誰かと勘違いされているようですね」
「大丈夫。お前からすればそうなだけだ。おいライア、アイツに痛い目見せててやれ」
師匠は俺の肩にポンと手を置き耳元で囁いたが、「そんな簡単に言われてもな……」と思っていた。
「やれるだけやってみます」
刀を落とさないようにしっかりと握りしめ構えた。
「そんな男の子に私の相手をさせるなど、私も舐められたものだ!」
相手が勢いよくこちらに向かってくる。
「いいか、あの技は自分が危険だと判断した時以外使うなよ。まあ、そんな事無いと思うけどな」
「はい!」
リブラが横に斬りかかって来たのを少ししゃがんで避け、低い体制からリブラの足を蹴りこけさせる。
「がはっ!」
リブラは頭を強く打ちそのまま気を失った。
「すごい。前まではこんな事できなかったのに!」
「それは違う。ライアの身体能力は元々尋常ではなかった。その事にお前は気づいていない。普通の人なら龍に体を貸していた時点で死んでいる。もしくはその前に……」
「その前……嵐の日川に落ちたことか!」
「そのとうり!」
ん? 待てよ、師匠が嵐の日の事を知っているんだ?
その質問をするより早く師匠は続けた。
「お前が覚えた技も身体能力が高くないと身につけることすら無理だが、それをお前はほんの数分で覚えた。今のお前なら1人で呪魔教を壊滅できるだろうな」
あまり実感は湧かないが、俺にはそんなすごい力があったんだな。
「今はリゼを連れてトラとサンの元に行け。2人とももうすぐ着く頃だろう。早くこの国の門の前まで行ってこい」
「あの! 師匠は一緒にこないんですか!」
「……すまない。俺はお前と一緒に行く事はできない。だが、また近いうちに会える。安心しろ」
その言葉を聞き俺は少しホッとした。
「師匠ありがとうございました!」
「おう! またなライア!」
師匠は俺に背中を向け歩いて行ってしまった。
その背中を少し見送った後、俺はリゼを抱き抱えながら国の門へと向かった。
「んっ……ライアさん」
「リゼ! 大丈夫か!」
リゼがゆっくりと目を開け俺に笑顔を見せてくれた。
「一体何があったのでしょうか。それにここはいったい……」
俺は戸惑うリゼに今まであった事を全部話した。
「そんな事が、確かに私の父は偉大な魔法使いだったと母から聞いていました。ですが、父は私が物心つく前にはいなかったので、父の事は覚えていません」
「そう、だったのか……」
呪魔教のやつら、リゼのためや仲間の為にも、何がなんでも潰してやる!
「あの、ライアさん……」
「ん? どうした?」
「も、もう、1人で歩けますので……その、おろして頂いても構いませんよ」
リゼは少し頬赤らめていた。
「あ、その……すまん」
よく考えてみると、これはいわゆる、『お姫様抱っこ』というやつなのでは……少し恥ずかしくなって来た。
俺はゆっくりとリゼを下ろした。
「今日は助けていただき、本当にありがとうございました」
「いや、俺1人だったら何もできなかったよ」
「師匠さんですか?」
「ああ。また会えるといな」
「会えますよきっと」
根拠はない。だが、俺もいつかまた会える。そんな気がしていた。師匠もまた近いうちに会えると言っていたしな。
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