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3-12 金貨のナイト

それから、二、三日過ぎた頃だろうか。

エミリー先生と結婚式の来賓として来てくれる周辺諸国の要人について確認していると、アル様がやってきた。

「忙しいところすまない。エミリー、少しマリナと話をしても良いだろうか?」

「かしこまりました。殿下の仰せとあれば。」

そう言ってエミリー先生が下がる。

アル様はいたずらを思いついた子供のような笑顔だ。

どうしたというのだろう?

「マリナ、結婚指輪の宝石の事で良いことを思いついたんだ。魔法石にして、互いの居場所がわかる魔法を込めた石を付けないか?」

「互いの居場所が分かる魔法石、ですか?」

それって、元いた世界のGPSみたいなものだろうか?

「ああ。そうすれば、この間のようなすれ違いも無くなるだろう?」

なるほど、良いかもしれない。

そう思ってしまう私は、どれだけアル様に捕らえられているのだろうか。

でも、アル様との間なら、GPSの装着も嫌ではない。

この間のすれ違いも無くなるというのなら、安心すらする。

「良いですね!そうしましょう。」

笑顔で了承すると、アル様も嬉しそうな笑顔になった。

「よし!なら、早速手配しよう。」

そう言って、アル様は部屋を後にした。

その後はエミリー先生が戻ってきて、来賓の確認の続きを行ったのだが、頬が緩んでしまっていたことは、きっと先生も気づいていた事だろう。


後日。

指輪が出来上がったと連絡が入り、アル様と二人で確認することになった。

指輪の職人と思われる男性と、石に魔法を込めたと思われる魔術師さんが床に控えている。

アル様と私が並んで座ると、職人さんが恭しく専用の入れ物に入った指輪を差し出した。

プラチナの台座に私たちの瞳の色の石をあしらったペアリング。

結婚後は常に身に着けるため、他のジュエリーと喧嘩しないようにシンプルめにはしているが、だからこそ職人さんの技術が光る一品となっていた。

「良い出来だな。」

「お褒めにあずかり、光栄にございます。」

アル様が見た目を確認して、職人さんに声をかける。

「まだ式の前だが、性能を確認しておきたい。良いか?マリナ。」

「はい。もちろんです、殿下。」

「式の練習もかねて、俺が付けてやろう。マリナ、手を出してくれ。」

そう言われて、少し恥ずかしく思いながらもそっと左手を差し出した。

アル様が指輪を手に取って、左手薬指にはめてくれる。

「では、殿下には私が・・・。」

「ああ。頼む。」

アル様が左手を出してくれたので、私も指輪を手に取り、左手薬指へとはめた。

練習とは言ったが、職人さんや魔術師さんの前で失敗するわけにもいかないので無駄に緊張したが、何とかスムーズにできてホッとする。

そこで、魔術師さんが口を開いた。

「『サーチ』という呪文で石が起動し、もう一つの指輪の位置が分かるようになっております。」

それを聞いて、早速アル様が呪文を唱える。

「サーチ。・・・ふむ。なるほどな。マリナ、お前もやってみると良い。」

「はい、殿下。」

私は自分の指にはまった指輪を見つめながら呪文を唱えた。

「サーチ。」

すると、アル様のいる方角と距離が、感覚的に感じ取れるようになった。

GPSのように地図上に表示されるわけではないが、方角と距離がわかれば、だいたいどこにいるのか分かるだろう。

「問題なさそうです、殿下。」

「そうか。持続時間はどのくらいだ?」

「一、二分程度かと。時間の経過とともに場所を感じ取れなくなります。」

アル様の質問に魔術師さんが答える。

「ですが、使用回数には制限を設けておりませんので、もう一度呪文を唱えていただければ、再度感じ取れるようになります。」

「わかった。ご苦労だったな。ありがとう。」

「もったいないお言葉でございます。」

こうして指輪の確認が終わり、職人さんと魔術師さんが退室した。

指輪は、結婚式当日まで大事にしまっておくことになった。

その日はもう、目前まで迫って来ていた。




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