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1-6 杖の2

ブクマ、評価、ありがとうございます!

ここで分かったことは二つ。

一つは、ここが私にとって異世界だということ。

スマホはずっと圏外のままだし、外国風の建物や人々なのに日本語が通じる。

このことから、薄々感じてはいた。

そして、元の世界に帰る方法は分からないし、きっと難しいのだろう。

もう一つは、この世界にはヒーラーという職業があり、この国では貴重な存在だということ。

国としては、私のことを手放したくないと思っている感じがする。

「あの、正直に言えば行く当てもないので、保護していただけるというならありがたいお話です。できたら、ヒーラーというものについて、もう少し詳しく教えていただけませんか?」

ただで保護してもらうわけにはいかない。

対価として仕事をしようにも、詳しく知らないのではどうしようもないと思い、尋ねてみる。

「ヒーラーと一口に言っても、得意とする手法は人それぞれですね。共通するのは、疲労を取ってくれるという部分です。また、悩みごとの相談にも応じていましたね。会話によって心労を取る、という感じでしょうか。」

オリバーさんの答えを聞いて、安心した。

私がこれまでやってきたことを活かして行けそうだ。

「では、私はこの国の方々の疲労をとるお手伝いをすれば良いのでしょうか?」

「医者を保護している王立病院がある。そこにそなた用の部屋を設けよう。訪れた者たちの疲労回復をお願いしたい。」

アルバート殿下が真剣な顔で言う。

「私一人ではできる人数に限りがありますが、よろしいでしょうか?」

「構わない。無理をさせるつもりはない。」

「承知しました。では、よろしくお願いいたします。」

私が了承の意を示すと、アルバート殿下もオリバーさんも、ホッとした笑顔を見せてくれた。

私はそれを見て、思わず目をそらしてしまう。

・・・だから、むやみに微笑まないで。直視できないから。


そんなこんなで、王城で生活し、王立病院で仕事をすることが決まった。

これまで通り、リフレクソロジーを主に行うつもりなので、必要なものをオリバーさんに用意してもらうようお願いした。

心労を訴える人もいるかもしれないので、念のためバッグに入っていたタロットカードも用意しておく。

オリバーさんはとても優秀な人らしく、翌日には準備ができたと連絡が届いた。

私は、以前いたヒーラーの人たちが着ていたという服と同じものを用意してもらい、それに袖を通す。

うん、袖は七分丈だし、長めの白っぽいチュニックに黒いズボンという感じだから、ドレスよりも遥かに動きやすい。

これなら施術も問題なさそうだ。

自分一人でも着替えられる楽な服を手に入れて私は安堵したが、アニエスさんは私を着飾りたかったらしく、少々残念そうにしていた。

また、保護するという言葉通り、私専属の護衛も用意されていた。

エリクさんとディオンさんというらしい。

芸能人並みに整った顔立ちのアルバート殿下やオリバーさんには劣るが、クラスメートだったらモテ男一位になるくらいにはイケメンなので、恐縮する。

もとは近衛騎士団の所属らしく、鍛えられた体が眩しい。

「エリクさん、ディオンさん。王立病院へ行きたいのですが、お願いできますか?」

「承知いたしました。すぐに馬車を手配します。」

自室の前で警護をしてくれていた二人に声をかけると、すぐに動いてくれた。

私は用意された馬車に乗り込み、王立病院へと向かった。

人生初の馬車にドキドキしたのもつかの間、少しだけ酔ってしまったのはご愛敬だ。

程なくして王立病院に着くと、そこにはオリバーさんと初老の男性が待っていた。

「マリナさん、こちらはここの病院長のコンスタン・ヘレフォードさんです。」

「コンスタンです。よろしく。」

オリバーさんが初老の男性を紹介してくれる。

「マリナ・ナカノです。こちらこそ、よろしくお願いいたします。」

「では、早速部屋へご案内しましょう。」

そう言って、コンスタン先生が先導して部屋へと連れて行ってくれた。

案内された部屋を見て、私はワクワクが止まらなかった。

病院らしい白い壁紙に薄いベージュの絨毯がひかれた十畳ほどの部屋。

そこにはシンプルな簡易ベッドと、小さな椅子に小さな棚。

手前の端には一人掛けのソファと小さめのテーブル。

衝立の奥には簡易キッチンも用意されていて、そこにはアニエスさんに聞いたハーブティーが数種類置かれている。

(独立開業して、自分のサロンを持ったみたい!)

私がキラキラした目で部屋を見て回るのを確認して、オリバーさんも安心したようだ。

「不足しているものはありませんか?」

念のためとオリバーさんが確認してくる。

「そうですね・・・。これだけ揃っていれば、仕事には支障ありません。ただ、さらに良くするために、少しずつ変えていっても良いでしょうか?」

「もちろんです。必要なものがあれば、いつでも言ってください。」

「ありがとうございます!」

私は小躍りしたいくらいの気持ちでお礼を言った。

「患者さんは、どのようにこの部屋へ通しましょうか?」

コンスタン先生が聞いてくる。

「現在はどのようにしているのですか?」

「今は、まず玄関の受付に来てもらって、基本的には先着順で診ています。急患があればそちらを優先しますが。」

「では、私の方も受付をお願いできますか?まずは一人につき一時間とっていきたいです。」

「それでは、先着順で受け付けた人から名前をそちらにお知らせしましょう。」

「はい、お願いします。病院は何時から何時まで開いているのでしょう?」

「朝の9時から夕方6時までが基本ですな。」

「昼食をとらないと力が出ないので、一日に8人が限界ですね。」

「わかりました。」

コンスタン先生とオリバーさんが了承してくれる。

実際、日本のサロンでは一時間越えのコースもあったので、一日に多くても七人くらいしか施術できなかった。そういったコースのバリエーションは、追々考えていこう。

また、病院は木曜日と日曜日がお休みらしいので、私もその日は休むことになった。

エリクさんとディオンさんは、最初は部屋の中で警備を、と言っていたが、部屋の外にしてもらった。

他人にじっと見られていては、お客様がリラックスできないからだ。

諸々の打ち合わせを終え、早速明日から始めようということが決まった。




お読みいただき、ありがとうございました。

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