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3-9 金貨のキング

先日のロレーヌ家での夜会以来、貴族たちの間での私の評判が一変したらしい。

ダンスの様子や立ち居振る舞い、また令嬢達との話の内容から、教養のある優れた女性であると噂されているそうだ。

これもお妃教育のおかげだろう。

エミリー先生には改めて感謝している。

また、心配していたラジヴィウ侯爵家から献上された羊毛は、バッチリの品質だったらしい。

どうやったのかは知らないが、侯爵が必死になっていたと風の噂で聞いた。

努力して成果を出すことは良いことだと思う。


ところで、最近の私には悩みがあった。

それは、ヒーラーを育てる仕事についてだ。

需要が高かったこともあって、リフレクソロジーができる人材はある程度の人数を確保することができた。

しかし、占いについても需要があるようなのだ。

ただ、その為の道具は、私が持っているタロットが1デッキあるだけだ。

自分で店に探しに行くとなると、今の身分ではお忍びショッピングに出かけることになる。

お許しが出るかどうかが問題である。

(平民だったうちに探しておけば良かった・・・。)

少々後悔しながら、アル様の執務室を訪ねる。

ちなみに、正式に婚約してからは、いつ執務室を訪ねても良いと言われているので問題ない。

ノックをして執務室に入り、早速相談してみた。

すると、オリバーさんから思いがけない言葉が飛び出してきた。

「専門の職人がいるはずですから、呼んで作らせたら良いんじゃないですか?」

作らせる?!

『買う』という発想しかなかった私は、とても驚いた。

それと同時に、面白そうだと思ってしまった。

「良いアイディアだと思います。費用は結構かかりますか?」

「未来の王太子妃が作ったカードなら、きっと売れるでしょう。経済を回すのも、王太子妃の務めですよ。」

そうか、売り上げが見込めるのか。

それなら良いかもしれない。

「オリバーさん、職人さんに心当たりはありますか?」

「はい、もちろん。マリナさんのもとへ来るよう連絡しておきましょう。」

「ぜひお願いします!」

こうして私は、初めての占いグッズ作りをすることになった。

なんだろう。

すごくワクワクしてきてしまった。


数日後、オリバーさんに紹介された職人さんが尋ねてきた。

この国にも占いは以前からあり、その為のあらゆる道具を作ってきた人らしい。

初老のちょっと不思議なオーラを持った男性だ。

「メイソンと申します。よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。早速ですが、こちらを見ていただけますか?」

そう言って、自分のタロットカードを見せる。

「こういうカードを作りたいのですが、可能ですか?」

「ふむ・・・とても質の良い紙が使われていますな。値段が少々上がりますが、可能でございます。」

「そうね、紙の質はあまり落とさないようにお願いします。あと、78枚それぞれに意味があって、絵柄のポイントもあるので、そこは押さえたうえで、細かい絵については職人さんの直感にお任せします。」

「かしこまりました。」

その後、私はタロットカードの絵柄のポイントを、カードの意味と絡めてメイソンさんに伝えた。

メイソンさんは私の話を、メモを取りながら真剣に聞いてくれて、ひとまず試作品づくりに入ってもらうことになった。


それからしばらくたって、出来上がってきた試作品は、見事の一言に尽きる物だった。

タロットとしてのポイントは押さえていながら、幻想的で優美な絵柄。

紙の厚みや硬さもちょうどよく、シャッフルしやすい。

質を良くした分、販売価格も上がってしまったが、貴族であれば、絵画を買うような感覚で欲しくなってしまうだろう出来映えだった。

「メイソンさん・・・。最っ高です!さすがです!素晴らしいです!」

「お気に召していただけたようで、光栄でございます。」

その後、そのタロットを数個作ってもらい、数人に使い方を教えたのだが、全員タロットを手にした瞬間から目が輝いていた。

また、実際にそれで占いを始めると案の定、貴族たちから買いたいとの要望が出たので、王立病院のヒーラー達の手で売ってもらった。

原材料費と手間賃をメイソンさんに、残りをヒーラー達の報酬に上乗せする形だ。


そうこうしているうちに時は過ぎ、アル様と私の結婚式の日が近づきつつあるのだった。




ありがとうございました。

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