3-7 杖のクイーン
ある日。
ロレーヌ家のお父様から手紙が届いた。
内容は、ロレーヌ家主催の夜会を開くから、私もアル様と共に出席しないか、というもの。
アル様にも同じ内容の手紙がお父様から届いていたようで、あっさりと承諾してくれた。
ロレーヌ家の家族にもしばらく会えていないので、楽しみだ。
「エリィ様。明日はロレーヌ家の夜会がありますので、夜は出かけますね。」
夜会前日の夜、私はエリィ様にも予定を伝えた。
「そう。明日はマリナがいないの・・・。」
少し寂しそうにするエリィ様が可愛い。
「代わりに、私たちがお側についておりますので、ご安心ください!」
エリィ様付の侍女さんたちが気合の入った笑顔で言う。
「うん。一人になるわけじゃないもんね。分かった。」
無事にエリィ様の了承も得られてホッとする。
寂しい思いをさせてしまうのは申し訳ないが、社交もお仕事だ。
しかもお世話になっているロレーヌ家からの誘いとなれば、断るわけにもいかない。
そうして夜会当日。
しばらくぶりの夜会だったので、私も、もちろんアニエスさんを始めとする侍女さんも、気合を入れて支度に入った。
今回のドレスも、アル様が仕立ててくれたものだ。
濃紺を基調としながらも、タンザナイトのブルーのコサージュが要所要所にあしらわれていて、落ち着いていながらも華やかさもあるドレスになっている。
相変わらずのプロの技術で美しく飾り立ててもらった私は、エスコートのために迎えに来てくれたアル様の前に立った。
「マリナが俺の色のドレスを着ているのは、何度見ても嬉しくなるな。」
そっと私の髪を撫でながら、優しい笑顔でそう言ってくれる。
「ありがとう。アル様も、今日は私の色だね?」
そう、アル様の衣装も私の髪色である焦げ茶色だったのだ。
「ああ。同じ色になるように仕立て屋に頼んだんだ。」
ちょっとドヤ顔をするアル様が可愛く思えてしまう。
「嬉しい。」
そっとアル様の肩に手をあてて、そう呟く。
自然と笑顔になる私を見て、アル様は嬉しそうに抱きしめてくれた。
「マリナが喜んでくれて良かった。」
そうして少しだけ抱きしめあった後、互いに手を放した。
アル様が片手を私に差し出してくれる。
「さあ、そろそろ行くか。」
「はい。」
アル様の手を取って、私は自分の部屋を後にしたのだった。
ロレーヌ家に着くと、家族総出で出迎えてくれた。
「マリナ!久しぶりだな。会えるのを楽しみにしていたよ。」
「お父様、お久しぶりです。中々お会いできなくて、申し訳ありません。」
「お妃教育で忙しくしていると聞いてるわ。大丈夫?」
「お母様、ありがとうございます。大丈夫です。」
「アルバート殿下も、ご足労いただき、ありがとうございます。」
お父様がアル様にも挨拶をする。
「いや。あなた方はいずれ俺とも家族となる方たちだ。よろしく頼む。」
アル様もにこやかに挨拶を返した。
そうしてみんなで夜会会場へと入ると、既に招待されていた貴族たちは集まっていて、ダンスをしたり話しをしたりしていた。
アル様はさすがの王太子オーラで、入場するとすぐに令嬢たちが色めきだった。
すぐ隣にいる私には、一部の令嬢たちのきつい視線が突き刺さった。
口元を扇子で隠しつつ、ヒソヒソと陰口を言い始めたのが分かった。
「平民の出の分際で、アルバート殿下にエスコートしていただくなんて、ずうずうしいこと。」
「あんなたいして美しくもない人を養女にするなんて、ロレーヌ公爵様も目が曇ってしまわれたのかしら。」
「公爵様だけじゃありませんわ。オースティン様もシャルロット様と同様に可愛がっているそうですもの。どうかしたとしか思えません。」
「敗戦国の王女も、あの人が世話しているのでしょう?王女なんて身分でも、たかが知れていますわね。」
「そうですわ。王女でありながら、平民上がりのあの人に懐いていると噂ですもの。きっと大したことないに違いありませんわ。」
ささやかれた陰口に、私の頭の中で何かがプツンと切れる音がした。
私に対するものだけなら、別に良い。
でも、ロレーヌ家のみんなやエリィ様まで貶めるなんて、許せるものじゃない。
(絶対に、一言言ってやらないと気が済まない・・・!)
私は、怒りを隠したニッコリ笑顔で隣のアル様に話しかけた。
「殿下。私、あちらのご令嬢方と少しお話してまいりますわ。」
私の笑顔に察するものがあったのか、アル様は頷いてくれた。
「ああ。助けが必要そうなら俺も後から行く。」
「ありがとうございます。」
そうして私は一人で、先ほどの陰口を言っていたご令嬢方の方へと歩いて行ったのだった。
ありがとうございました。
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