3-1 正義
夜会から数日。
私はお妃教育や新しいヒーラーの育成など、忙しい毎日を過ごしていた。
そんな折、アル様から執務室へ来るよう呼び出しがあった。
話の内容は予想できた。
貴族が多く住むあたりで、大捕物があったと聞いていたからだ。
アル様の執務室の扉をノックして、中に入れてもらう。
「マリナ。忙しいのにすまないな。」
「忙しいのはお互い様です。大事なお話なのでしょう?」
互いに執務室内のソファに対面して座って話しをする。
オリバーさんが紅茶を淹れてくれた。
「反乱を企てていた貴族を捕縛した。」
「はい。伺っています。」
「様々な調査を進めていく中で、隣国の王族。といってもまだ四歳の子供だが、それを担ぎ出して反乱を起こそうとしていたらしい。隣国の一部貴族と我が国の一部の貴族が繋がっていた。その証拠をつかんで、逮捕状をとり、今回捕縛に成功した。」
アル様が詳しい内容を説明してくれる。
「担ぎ出された隣国の王族はこちらで保護することになった。事実上の人質状態だな。これで反乱は事前に食い止められたから、マリナも安心して過ごしてくれ。」
「その隣国の王族の方とは会わせていただけますか?」
まだ四歳の子供だというその子のことが気にかかった。
「ああ。王女だということだし、できればマリナに世話を頼みたいと思っていた。良いだろうか?」
「はい、もちろんです!」
私は即答した。
それを聞いて、早速アル様は私をその王女様の元へと連れて行ってくれた。
事実上の人質。
そうアル様は言っていたけれど、できるなら笑って過ごしてもらいたい。
仲良くなれるだろうかとドキドキしながら向かった。
アル様が扉の前で警備していた騎士に目配せすると、心得たように騎士たちが扉を開いた。
中は、私が最初に借りていた客室よりも豪華で、貴賓室なのだと分かる。
人質とはいえ王族だから、という配慮だろうか。
中には数人の侍女と、幼い少女がいた。
彼女がその王女だろう。
大人の汚い部分に多く触れたからだろうか、その顔に表情は無い。
ウェーブのかかった金髪にエメラルドの瞳の美しい顔立ちをしていて、まるで人形のように椅子に腰かけている。
アル様がそんな彼女に声をかける。
「エリザベス王女。彼女が俺の婚約者のマリナです。何かあれば、彼女に相談してください。」
私は彼女に最上級の礼をとる。
「マリナ・ロレーヌと申します。仲良くしていただけたら嬉しいです。」
そう言って微笑みかけてみるが、反応は返ってこない。
それだけ心が傷ついているのだろう。
「エリザベス王女様。私、今夜はここに泊まらせていただいてもよろしいでしょうか?夜にお一人では不安でしょう?」
そう提案してみると、わずかに瞳が揺れたのが分かった。
拒否はされていないように見受けられたので、勝手に了承されたと判断する。
「アル殿下。私、今夜はこの部屋に泊まります。許可いただけますか?」
「ああ、構わないが・・・大丈夫か?」
「お任せくださいませ。」
そう言って、胸を張る。
「わかった。よろしく頼む。」
こうしてアル殿下が執務室に戻った後、私はまず部屋にいた侍女たちにエリザベス王女様の様子をリサーチする。
彼女たちはもともとシュトライゼン王国の城の侍女であるらしく、エリザベス王女様がここに来てから世話をしていたらしい。
「お好みのお菓子とかドレスとか、何かわかっていることがあれば教えてほしいわ。」
そうお願いするも、皆にもよく分からないらしい。
それならばと、お茶とお菓子を適当に用意してもらうよう頼んだ。
時間的にもちょうどおやつの時間だ。
「エリザベス王女様、私とお茶を飲みませんか?お菓子も用意しますから。」
そう声をかけると、無表情のままだが、ソファに移動して、紅茶に口をつけてくれた。
私は少しホッとしながら、自分も紅茶を口にして、彼女を注意深く観察することにしたのだった。
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