2-22 杯の2
そうしてやってきたアルバート殿下の私室は、さすがは王太子の部屋だけあって、扉からして豪華絢爛だった。
その扉を慣れた手つきで開いた殿下は、私を中へと促してくれた。
私はかなりドキドキしながら、そうっと部屋の中へと足を踏み入れた。
部屋の中は、最低限の家具が置いてあるだけで、スッキリとしている。
でも、その家具はどれも最上級品だろう。
部屋には入ったものの、どうしたら良いのか分からず立ち尽くしていると、殿下が声をかけてきた。
「マリナ?どうした?」
「いえ、あの・・・。男の人の部屋には初めて入ったもので、どうしていいのかわからくて・・・。」
恥ずかしさに顔を赤くしてそう言うと、殿下に抱きしめられた。
「で、殿下?!」
「可愛いことを言ったマリナが悪い。それに、正式に婚約したのだから、もう我慢しないぞ。」
そう言って私の顎をすくって上を向かせた殿下は、そっと私に口づけた。
一瞬唇が重なっただけの軽いものだったが・・・。
(私のファーストキスですよ、これ!!!)
そう自覚すると同時に、私はパニックになる。
アワアワと変な動きになってしまう私を見て、殿下が眉を下げる。
「嫌だったか?」
「違います!」
そこは急いで否定した。
「た、ただ、初めての事づくしで、頭の処理が追い付かなくて!ああもう、こんな時はどうするのが正解なの?!」
遂には両手で顔を覆って俯いてしまった私の頭を、殿下がクスクスと笑いながら優しく撫でた。
「そうだな。とりあえずソファに座って落ち着くか。」
「は、はい・・・。」
そう言われて、二人でソファへ座る。・・・って、あれ?
「殿下?何故となりに?」
いつもは対面に腰かけていた殿下が、何故か私の横に寄り添うように座っている。
「いつもは触りたいのを我慢していたからな。正式に婚約したのだから、構わないだろう?」
そう言って、私の手を握った。
(落ち着けない!これじゃ全然落ち着けないよ!)
私の心の叫びとはうらはらに、殿下はご機嫌でニコニコとしている。
「マリナは男に慣れていないんだな。これからゆっくり俺と触れ合っていこう。」
少し独占欲が混じった言葉に、嬉しいと思ってしまうのだから私も重症だ。
殿下の手は、剣も扱うからかゴツゴツとしていて皮膚が硬く、頼もしい感じがした。
(温かい・・・。)
私の手よりも大きなそれに包まれて、ドキドキが安心に変わっていく。
「なあ、マリナ。頼みがあるんだ。」
「何ですか?」
「公式の場では仕方ないが、こうして二人きりの時は俺の事を『アル』と呼んでくれ。敬語もいらない。」
そう言われ、私は目をパチパチさせながら少し考えて口にする。
「・・・アル様?」
私がそう呼んだのがよほど嬉しかったのか、満面の笑みで抱きしめられた。
「嬉しい。ありがとう。」
私はほわほわと夢見心地になりながら呟いた。
「アル様。大好き。」
それを聞いたアル様はさらに強く私を抱きしめて、
「ああ。俺もマリナの事が大好きだ。」
と答えてくれたのだった。
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