2-21 杖の4
ロレーヌ公爵令嬢となる手続きをすべて終えた私は、続けてアルバート殿下の婚約者となる手続きを始めた。
狡猾な貴族たちは反対派から賛成派に回り、私にもごまをするようになった。
ロレーヌ公爵家の名前は、そうとうな威力があるらしい。
しかし王太子妃を目指していた令嬢たちは納得いかないらしく、
「元は平民のくせに、ずうずうしいこと。」
と、ちょうど私にだけ聞こえる声量で陰口を言ってくるようになった。
私はと言えば、急に変わった身分や待遇に対応するのに精いっぱいで、そんな陰口は気にしている余裕もなかった。
正式な手続きがすべて終わり、いよいよ婚約式という行事がやってきた。
これは、王家の伝統行事の一つで、王太子が婚約をした際にそれを国民に示す式だ。
この婚約式が終われば、私がアルバート殿下の隣にいても、誰も文句は言えなくなるはずだ。
住んでいる部屋も、今の客室から、王太子妃用の部屋へと引っ越すことになる。
まだ婚約するだけなのに、こんなに色々あると、もう嫁に行くような心地になってしまう。
婚約式には、国内のほとんどの貴族たちが参加しており、王城の大広間に集まっている。
私は、父であるロレーヌ公爵と共に大広間の中央を進み、玉座の手前で最上級の礼を取った。
玉座にはもちろん国王陛下がいらっしゃり、その隣には王妃様が、一段下がったところにアルバート殿下が控えていた。
公式行事なので、もちろん全員正装なのだが・・・。
(殿下がかっこよすぎる!)
これまでもメロメロにされていて、やっとあのイケメン笑顔に耐えられるようになってきたというのに、正装した殿下はキラキラと輝くようで、本当にかっこよかった。
鼻血を噴かなかった自分を褒めてあげたい。
トキメキでくらくらしているうちに国王陛下とロレーヌ公爵とのやり取りが終わり、アルバート殿下が私の前にやってきて跪いた。
「アルバート・デ・ロス・シュトライゼンはマリナ・ロレーヌを生涯の伴侶とするべく、ここに約束する。」
「私、マリナ・ロレーヌはアルバート・デ・ロス・シュトライゼン様に全てをお捧げいたします。」
殿下が私の手を取り、甲に口づける。
とたんに大広間に盛大な拍手が響き渡った。
やばかった。
正装の殿下にときめきすぎて、自分のセリフが吹っ飛ぶところだった・・・。
表面上は平静を装いながら、内心は冷や汗がダラダラだった。
「これにて、婚約式を終了とする。」
国王陛下の宣言でその場の全員が最上級の礼をとる。
その中、国王陛下、王妃様、そして殿下と私が控えの間へと退室する。
「マリナ、お疲れ。」
殿下からそう声をかけられて、肩の力が抜ける。
「私、大丈夫でしたか?」
「ああ。完ぺきだったぞ。」
そう労われて心底ホッとする。
「今宵は祝いの宴だが、まだ少し時間がある。二人とも休んでくるが良い。」
「ありがとうございます、父上。」
国王陛下の勧めで、私たちは殿下の私室へと向かった。
実は私、殿下の私室は初めてだ。
ていうか、男性の部屋自体が初めてだ。
ドキドキと高鳴る心臓をどう沈めたら良いのかも分からず、ただ殿下のエスコートに従って付いていくのだった。
やっとここまで書けました!
コレも皆様のおかげです。
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