2-19 金貨の2
翌朝。
朝食用のドレスをウキウキと選ぶお母様を、少しだけ疲れた笑顔で見つめていた。
「朝だからさわやかな色が良いわね。デザインは少し落ち着いた感じで・・・。」
と、ドレスの山の中から今朝の一枚を選んでいる。
そうして選ばれたドレスに身を包んで、お母様と共に朝食の席へと着いた。
先に来ていたお兄様とシャルに挨拶をする。
「おはようございます。お兄様、シャル。」
「おはよう、マリナちゃん。」
「おはよう、マリナ。」
私とお母様が椅子に座るとほぼ同時にお父様もやってきた。
「おはよう!良い朝だね!」
「おはよう、あなた。」
「おはようございます。父上。」
「おはようございます。お父様。」
みんなで挨拶を交わして、お父様も席に着くと、朝食が始まった。
「マリナ。昨夜はよく眠れたかい?」
「はい。お陰様で、ぐっすりでした。」
「そうか。それは良かった。」
「何か困ったことがあれば、いつでもこのお兄様に相談して良いからね?」
さわやかな笑顔でそう言われたので、昨夜からの疑問をぶつけてみる。
「では早速。お兄様には既にシャルという可愛い妹がいるのに、なぜ私まで妹にしたがるのですか?」
「妹という萌え的な存在は、何人いても良いものだよ!それに、シャルとマリナちゃんではタイプが違うから、なお良いね!」
「わかるぞ、息子よ!家の中に女の子が多いというのは、気分が華やぐ!」
なにやら男性同士で盛り上がり始めてしまった。
たしかここは、国で一番の公爵家ではなかっただろうか。
こんな調子で良いのか。
これまでは知識として、お父様は有能な宰相であり、お兄様は外国語が得意で次期外務大臣と噂されていると習っている。
それが、家族のこととなると頭のねじが外れたのかと思ってしまう壊れっぷりだ。
公私を使い分けているという事なのだろうか。
(仕事さえきちんとしているのなら、変に堅苦しくなくて良いかもしれない。)
私はそんな感想を抱いた。
朝食を終えると、仕事へ向かうお父様とお兄様をお見送りすることになった。
「今日は帰ってもマリナがいないのか・・・。仕事に行きたくない・・・。」
「あらあら、あなたったら。そんなことでお仕事を疎かにしてはいけませんわ。」
なにやら項垂れてブツブツ言っているお父様を、お母様がなだめている。
お兄様は何故か私の手を取って、
「養女になってもならなくても、僕をお兄様と慕って良いからね?」
とか言ってくるので、とりあえず愛想笑いを返しておいた。
そうして二人をお見送りした後は女性だけでお茶をすることになった。
公爵家自慢の庭を眺められるテラスに、メイドの皆さんがお茶を用意してくれる。
「それで、私たち家族はどうだったかしら?」
お母様が私に尋ねてくる。
「はい。赤の他人に過ぎない私を、本当の家族のように迎えてくださって、とても温かい場所だと感じました。ありがとうございました。」
「シャルは?何か思っていることがあるのではなくて?」
お母様は今度はシャルに話をふる。
「いえ、その・・・。マリナに聞かせる話ではないかと・・・。」
「え、何?そんなこと言われたら気になるよ。話して?」
シャルは迷うように少し沈黙してから、話し始めた。
「私はずるい女です。もしもマリナがロレーヌ家の養女になり、アルバート殿下と婚約してくれれば、私がサヴォイア男爵家に嫁ぐことも可能になるのではないかと考えてしまっています。」
「フェリクス・サヴォイア様・・・だったわね。シャルの思い人は。」
「はい、お母様。」
確かに、私がロレーヌ家の娘として王家と縁を結べれば、シャルはどこへ嫁いでも問題ないのかもしれない。
むしろ、思ってもいない男性の元へ嫁がされる方が苦痛だろう。
貴族の娘としては、普通ではないのかもしれないが。
今回の養女の件、デメリットが無いことが不安だったが、思い切って飛び込んでみても良いのかもしれない。
後から多少のデメリットが見つかったとしても問題ないくらい、メリットが大きいのだから。
王城へ帰る支度をしながら、念のためアルバート殿下とオリバーさんに相談してから了承の返事をしようと決めたのだった。
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