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2-18 剣の9

呼び方を変え、すっかりこの家の娘のようになってしまった私を囲んで、和やかなディナーが始まった。

お父様もお母様もお兄様も満足そうだ。

うん、良いんだ、良いんだよ・・・。

みんな喜んでいるのだから、これで良いんだ・・・。

少し遠い目をしながら私は自分に言い聞かせていた。

「いやぁ、女の子が増えると場が華やぐなぁ!そのドレスもマリナにとても似合っているよ。さすがはソフィアが選んだドレスだね!」

いつのまにか私を呼び捨てにし始めたお父様が嬉しそうに言う。

ちなみに、ディナーの直前にさらに別のドレスに着替えさせられている。

「お父様、ありがとうございます。お母様のセンスはさすがですね。」

「私に付き合ってくれてありがとう。今日は本当に楽しかったわ!」

お母様もニコニコだ。

「マリナちゃんは平民の出だって聞いてたけど、食事マナーが綺麗だね。誰かに習ったの?」

やはりいつの間にか私をちゃん付けで呼んでいるお兄様に尋ねられた。

「王城での生活に必要でしたので、ベルナール先生という方にお願いして教えていただきました。」

「ベルナール先生?!僕もあの先生から習ったんだよ!良い先生だよね!」

「お兄様もベルナール先生に?公爵家のご嫡男と同じ先生に習えるなんて、私は幸運だったんですね。」

同じ先生だと聞いてびっくりする。

「人気の先生でお忙しくされているけど、王城からの依頼だから融通してくれたのかもしれないね。」

「そんな・・・。今度会ったらお礼を言わないと。」

にわかに慌てだす私。

「そうだね。僕からも会ったら伝えておくよ。」

そんな私をなだめるようにお兄様は微笑んでくれた。

「そういえば、お妃教育はその後いかがですの?」

「順調・・・だと思いたいかな。まずはシュトライゼン王国の国内の事から勉強してるんだけど、シャルが貴族から覚えるように言ってくれたから、わかりやすいよ。」

「お役に立てて何よりですわ。」

シャルと二人で微笑みあう。

こうして会話を楽しみながらのディナーが終わった。


寝室はシャルの部屋に簡易ベッドが用意されていて、私はそこで眠ることになった。

本当は別室を用意してくれようとしていたのだけど、シャルさえ良ければ同じ部屋で眠りたいとお願いしたのだ。

女の子同士のお泊り会だ。

パジャマパーティーがしたかったのだ。

そんなわけで、眠る前のひと時は女子トークで盛り上がることに。

「それで?シャルの方はどうなの?」

いきなりの私の質問にシャルはきょとんとする。

「どう、とは?」

「もちろん、恋の話だよ!」

そう言うと、とたんにシャルの頬がほんのり染まった。

可愛い。

「特に、進展はありませんわ。夜会でお会いできれば、ダンスをしたりお話しする程度で・・・。」

「手紙やプレゼントのやり取りは?」

「・・・あり、ます・・・。お父様には内緒ですわよ?」

「もちろん、内緒にするよ!ねぇねぇ、もっと詳しく教えて!」

私がぐいぐい行くので、シャルが少し戸惑っているのが分かる。

「わ、私の事より、マリナはどうなんですの?」

「え、私?反対派の人に反感持たれないように距離をおくようにしてるよ。」

「そうなんですの?」

「あーでも、私がロレーヌ家の養女になったら、もっと一緒にいられるのかな・・・?」

独り言のようにつぶやく私を、シャルは静かに見つめる。

「マリナは、アルバート殿下のおそばにいたいのでしょう?」

「うん、そうだね。反対派の人たちを納得させて、堂々と隣に立ちたいな。」

私にそんなことができるのか不安に思いながらも本心を話す。

「ただ、今は離れて暮らしてるけど、私にも実の両親がいるから・・・。養女に、ていう話は迷ってしまうんだよね。育ててくれた恩を裏切ることにならないかな・・・。」

「そんなことありませんわ。きっと、マリナのご両親も、マリナが幸せになる事を願ってくれるはずです。」

もう一度会う事さえ叶わないかもしれない両親の事を思い出しながら言うと、シャルが元気づけてくれる。

「そうだよね。私は、私が幸せになる道を選んでいいんだよね。」

「ええ、そうですわ!」

「ありがとう。シャル。」

泣きそうになってしまったのをごまかすように、シャルに抱きついた。

シャルはそんな私をそっと抱きしめ返してくれたのだった。




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