2-17 力
無事にロレーヌ家から了承をもらえた私は、早速お泊りの準備を始めた。
表向きは、仲良しの女の子の家にお泊り会をしに行く、という感じだ。
「いらっしゃい、マリナ。私、今日を楽しみにしてましたのよ。」
「ありがとう。私も楽しみにしてたよ!」
私とシャルが挨拶を交わすのを見て、
「姉妹・・・やっぱり良い・・・。」
と公爵様はつぶやく。
「ロレーヌ公爵様、今夜はお世話になります。」
淑女の礼で挨拶をすると、
「そんなに堅苦しくしないでくれ。ここにいる間は、シャルと同じように娘として振舞ってくれてかまわないよ。」
と返されてしまった。
「もう、お父様ったら!突然そんなことを言われても、マリナが困ってしまうでしょう?」
「私もシャルのようにマリナさんと仲良くしたいだけだよ。」
シャルが諫めてくれたが、公爵様はそんなことを言っている。
「そうそう。マリナ、紹介しますわね。こちらが私のお母様のソフィアで、こちらがお兄様のオースティンですわ。」
「初めまして。マリナと申します。よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、よろしくね。仲良くなれたら嬉しいわ。」
「少し気は早いけど、『お兄様』と呼んでくれても良いよ?」
あ・・・あれ?
この二人は要注意人物な気がするのは何故?
シャルや公爵様とよく似た笑顔なのに、私の第六感が警戒している。
ともあれ、まずはお茶にしましょうということで、サロンに案内された。
席に着くと、公爵家のメイドさんたちが紅茶を用意してくれる。
「マリナさんのドレスは、自分で選んでらっしゃるの?」
ソフィア様からそう聞かれて、正直に答える。
「いいえ。私についてくれてる侍女の方が、TPOに合わせて選んでくれるんです。」
「そうなのね。うちにもマリナさんに似合いそうなドレスがあるの。良かったら後で着てみてくれないかしら?」
「私で良いのなら、喜んで。」
そう答えると、シャルの表情が曇った。
「嬉しいわ。シャルは中々付き合ってくれないんだもの。」
「それは、着せ替え人形のようにあれもこれもと着せられるからですわ。」
え・・・?
私、着せ替え人形になるの決定ってこと?
「私が生まれるまでは、お兄様にドレスを着せていたと聞いてますわ。」
「だって、娘を着飾るのが私の夢だったんですもの。」
「おかげで、僕は自分は女の子だって勘違いしていた時期もあったよ。」
ふぇ?!
和やかな笑顔で、とんでもないこと言ってませんか、お兄様!
ぎょっとしてオースティンさんを見ると、ニッコリ微笑んで
「どうしたんだい?このお兄様に何でも相談して良いんだよ?」
と言われた。
お母様もお兄様も、悪い人じゃない。
悪い人じゃないんだけど・・・クセがある人たちだ・・・。
その後、ソフィア様の言葉通り、着せ替えごっこが始まった。
用意された色とりどりのドレスたち。
どれも凝ったデザインで、とても綺麗だ。
しかし、それを何着も着ては脱ぎ、着ては脱ぎを繰り返していると、だんだん疲れてくる。
「あの、ソフィア様、もう・・・。」
「『お母様』って呼んでくれるまでやるわよ。次はこのドレスね!」
ウキウキと楽しそうにドレスを差し出される。
「・・・お母様。疲れました。休憩させてください。」
私がそう言うと心底残念そうな顔で、
「仕方ないわね。じゃあ、このドレスを着た後は休憩にしましょう。」
と言ってくれた。
着替えの場はさすがに遠慮してくれたが、休憩となったら公爵様とオースティンさんも参加してきた。
その中で、
「お母様、このクッキー絶品ですね!」
と私が言うと、
「ソフィアばかりずるい!私のことも『お父様』と呼んでくれ!」
「僕だって『お兄様』と呼ばれたい!」
と二人が騒ぎ出し、何故かまだ養女になる事も決まっていないのに、家族のように呼ぶ羽目になってしまった。
「うちの家族はみんな、マリナの事が気に入ったようですわね。」
そうシャルには言われたが、私としてはやけっぱちで呼んでいるだけなのであった。
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