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2-13 愚者

翌日。

私は早速エマたちにも手伝ってもらって、問題のある貴族たちのリストアップを開始した。

始めてみると、貴族だけでなく、裕福な商家にもトラブルになりかねないお客様がいることが分かった。

私たちはそれらの人々を分かりやすくリストアップして、アルバート殿下へ提出できるよう体裁を整えた。

その日の夕方には完成したので、アルバート殿下の執務室へと届ける。

「もうできたのか?!」

殿下は少し驚いた様子だったが、すぐにリストを確認してくれた。

「やはりな・・・。オリバー、お前も確認してくれ。」

そう言って、殿下はリストをオリバーさんへと渡す。

オリバーさんもざっと目を通すと頷いた。

「王家に反感を持っているだろう貴族と、ほぼ同じですね。」

「ああ。この者たちが隣国の残党と繋がっている可能性が高い。」

「え・・・。」

ただのクレーマー対処だと思っていた私は、不穏な言葉に絶句する。

「商家の者も何名かいるようだが、この者が手引きしている可能性があるな。」

「ええ。貴族が直接動くとなると目立ちますからね。」

「急ぎ調べろ。」

「承知しました。」

厳しい声でオリバーさんに指示を出した殿下は、私の方へ顔を向けると、やわらかく微笑んだ。

「マリナ。実は、王太子妃に身分の高さが不可欠だと主張しているのは、主にこの貴族たちなんだ。他の貴族たちは、身分のことよりも、当人の資質の方に重きを置いている。そなたの妃教育が始まれば、妨害もあるかもしれんが、ともに頑張ってもらいたい。良いだろうか?」

殿下は、理不尽な人たちから、民をいかにして守ろうかと心を砕いているのだ。

そして、私にその隣に立ちサポートすることを望んでくれている。

それが分かってしまったから、私は殿下の目をまっすぐに見据えた。

「はい。私も頑張ります。殿下の隣で、殿下のお力になれるように。」

私の言葉を聞いた殿下は少し目を見開き、そして私を引き寄せて抱きしめた。

「ありがとう。」

耳元で響いた低い声が、私の中に浸透していく。

それが心地よくて、私も殿下の背中に手を伸ばそうとして・・・

「ゴホン!」

オリバーさんのわざとらしい咳払いに我に返って手を引っ込めた。

(まわりに人がいるの、忘れてた・・・!)

殿下は私を抱きしめたまま、顔だけをオリバーさんの方へ向ける。

「オリバー、邪魔をするな。」

「人から反感を受ける行動は慎むのではありませんでしたか?」

「う・・・。それは、そうだが・・・。」

「ほらほら、マリナさんが困っていますよ。手を放してください。」

「・・・。わかった・・・。」

殿下は渋々といった感じで私から手を放した。

「そうだ、マリナ。妃教育の件だが、講師が決まった。次の木曜にベルナールから引き継いで教育が始まるから、そのつもりでいてくれ。」

「はい、わかりました。」

宮廷マナーと妃教育では重なる部分も多いので、今後は妃教育のみになるらしい。

いったいどんな勉強が待っているのか、ワクワクと緊張とが入り混じるのだった。



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